世界を震撼させている新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題であるが、その中でも逆境にめげず、危機をチャンスとばかりに躍進している日用雑貨・家電製造販売会社、アイリスオーヤマ(1971年設立の非上場企業)について、欧米メディアが特集している。
10月22日付
『ロイター通信』:「型破りの日本の日用品製造販売会社、COVID-19下でもめげずに躍進」
日本のどの家庭にもある日用品を製造・販売しているアイリスオーヤマは、COVID-19問題や米中貿易紛争の逆境にあっても、テレワーク方式増加に伴う需要や、生産拠点を中国から日本に戻す等、同社がこれまで行ってきたように他社と違う方策で躍進している。
仙台市に本社を構える同社は、お米から炊飯器まで何でも素早く便利化した商品を製造・販売しているが、今回同社は、いの一番に生産拠点を中国から本国に戻すことで、政府から多くの補助金を獲得した企業である。
COVID-19問題下で顕在化した、必需品の多くをCOVID-19蔓延の中国に依存していたという反省から、政府主導で“日本製”にシフトする政策が取られ、同社は早速、マスクから事務用什器品やエアコンに至るまで国内産に変更した。
その結果、今年の売上高は昨年の5,000億円(48億ドル)から大幅アップの7,000億円(67億ドル)になる勢いである。
同社の大山晃弘社長は『ロイター通信』のインタビューに答えて、COVID-19問題下の今年は確かに日本での売り上げを伸ばすことになるが、今後は目下30%程度のシェアである海外事業の売り上げがもっと伸びるとみているとコメントした。
具体的には、先行して製造工程自動化やネット販売の拡充に努めた上で、家電からマスクに至るまで“米国産”の商品を米国で生産・販売する事業方針に取り掛かっているとする。
この移転方針は、米中貿易紛争が今後も継続しても十分防衛手段となる。何故なら、中国に生産拠点を持つ日本企業の多くが、今回のCOVID-19問題で中国からの供給停止に遭っていたからである。
同社は、例えばプラスチック製日用品やLED照明の日本生産は伸ばすが、洗濯機や冷蔵庫等は海外製となるという。
大山社長によれば、“残念ながらこれら家電製品の多くの部品が、国内では調達できないから”だという。
一方、今回のCOVID-19問題に伴ってマスクの国産化のため、同社は新たにマスク製造ラインを導入したが、その費用の4分の3は、今回政府が決定した約60社を対象とする総額600億円(5億7千万ドル)の支援策の中で賄われたという。
そして、同社は、菅義偉新首相の下でも企業支援政策が継続されることから、更にその支援を得て業容拡大に繋げたいとする。
同社によれば、今後とも中国は生産拠点と同様市場としても重要な場所として位置付けており、天津(ティエンチン)に新工場を建設中であるという。
しかし、経済アナリストらは、電子機器分野への参入障壁が低いということは、アイリスオーヤマにとって新たな競争に晒されることを意味するとする。
エース経済研究所(2009年設立、エース証券子会社)アナリストの安田英樹氏によれば、“アイリスオーヤマは依然大手メーカーではなく、また低価格で勝負している以上、同様の競争製品に市場を食われる可能性がある”という。
ただ、同社は2009年に大規模の電子機器分野に打って出るに当たって、中国や韓国の競争にさらされて撤退や規模縮小を余儀なくされた、パナソニックやシャープ等の大手メーカーの技術者を大量に採用した上で、彼らがそれまで拠点としていた大阪にリサーチ・開発本部を移転させている。
そして、同社では毎週月曜日に新製品開発会議を開催し、新商品の採用・不採用を即時に決定しており、毎年1,000点余りの新商品を販売していて、これが総売上高の半分以上を占める。
業界関係者は、このようにこれまでの経験則と勘に頼った戦略ができるのは、同社が非上場で株主等外部からの圧力を受けることないからだ、と分析している。
更に、同社が基本としているシンプルデザインと価格競争力を最優先する方針は、同じく勝ち組と言われる家具メーカーのニトリや衣料品メーカーのユニクロ(親会社ファーストリテイリング)に共通するものである。
この勢いを駆って、現在1万3千人の従業員を抱える同社は来年、更に640人を新規採用する計画である。
なお、同社は将来ビジョンとして、2022年までに売上高1兆円を目指しており、これを達成することによって、真に大手企業の仲間入りをすることを狙っている。
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