菅義偉新首相(71歳)は、今年韓国で開催される予定となっている日中韓サミットについて、元徴用工賠償請求問題で韓国政府が責任ある対応を取らない限り、同サミットへの参加を見合わせると強硬である。これについてアジア国際問題研究所(IPCS、1996年設立のインドのシンクタンク)が、日韓問題がこじれることで、米国との連携が乱れることに繋がるとして、米対立が深刻化している中国が漁夫の利を得ることになる、と分析している。
10月29日付
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース:「分析レポート:日中韓サミットキャンセルで中国に利」
(IPCS分析レポート)
菅義偉首相は、元徴用工問題で韓国政府が“適切な対応”を取らない限り、年内に開催が予定されている日中韓サミットに出席することは“難しい”と表明していると報じられている。
2018年に韓国大法院(最高裁に相当)が、第二次大戦中に日本企業2社に不当労働を強いられたとして元徴用工が訴えた損害賠償請求を認める判決を出している。...
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10月29日付
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース:「分析レポート:日中韓サミットキャンセルで中国に利」
(IPCS分析レポート)
菅義偉首相は、元徴用工問題で韓国政府が“適切な対応”を取らない限り、年内に開催が予定されている日中韓サミットに出席することは“難しい”と表明していると報じられている。
2018年に韓国大法院(最高裁に相当)が、第二次大戦中に日本企業2社に不当労働を強いられたとして元徴用工が訴えた損害賠償請求を認める判決を出している。
これによって、両国間の関係は一層悪化している。
これに先立つ2017年、韓国保守党政権の時代に日韓間で2015年末に成立した“最終かつ不可逆的な”慰安婦問題日韓合意を現革新政権が反故にしたことから、両国間の軋轢は強まり、それぞれが相手を攻撃する関係に陥っていた。
2008年に始まった日中韓サミットについては、2012年まで毎年持ち回り(日本→中国→韓国)で開催されてきた。
途中、当時の関係国間軋轢から、2013・2014年及び2016・2017年開催が見送られたが、2018・2019年と復活開催されている。
このサミットの開催意義は、アジアの雄である3ヵ国が、経済やその他対立しない事項についての相互協力を確認、強化していくことにある。
しかし、現在の日韓を取り巻く環境下、年内での3ヵ国サミット開催は難しくなったとみられる。
両国間の対立は相互貿易関係にも現れていて、2019年の韓国の対日輸出額は6.9%、また対日輸入額は12.9%、それぞれ前年比大幅減少となっている。
一方、仮に3ヵ国サミットが開催されずとも、中国にとっては有利にはたらく。
何故なら、日韓両国とも中国が対立を激化している米国の同盟国であるが、日韓間の対立によってそれぞれの対米関係に影響を及ぼすとみられるだけでなく、そもそも中国は日本、韓国と個別に経済及び政治的関係強化を図ってきていることから、米国関与の余地を減じるという意味で、むしろ中国にとって漁夫の利となるとみられるからである。
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