米中両大国は、貿易、人権、軍縮等、様々な面で対立を深めているが、力は拮抗している。しかし、こと新型コロナウィルス(COVID-19)感染防止対応及びそれに伴う経済立て直し政策では、米国は完全に中国に負けていると、米メディアが論評している。
10月31日付
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「米国がCOVID-19を制御できないと言えば、中国はそれは間違いと主張」
現在、米国でCOVID-19感染が日々深刻化している一方、同感染症が最初に蔓延した中国では違った様相を呈している。
すなわち、トランプ政権は、感染症流行を押さえつけることは諦めて、経済復興を最優先した。
これに対して、中国はまず感染症抑え込みに全精力を注ぎ込み、経済は二の次とした。...
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10月31日付
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「米国がCOVID-19を制御できないと言えば、中国はそれは間違いと主張」
現在、米国でCOVID-19感染が日々深刻化している一方、同感染症が最初に蔓延した中国では違った様相を呈している。
すなわち、トランプ政権は、感染症流行を押さえつけることは諦めて、経済復興を最優先した。
これに対して、中国はまず感染症抑え込みに全精力を注ぎ込み、経済は二の次とした。
その結果、中国では経済が再活性化され、人々の生活も元に戻りつつあるが、一方米国では、感染流行第3波が起こっていて、再び行動制限措置導入が余儀なくされようとしている。
具体的には、中国の直近四半期(7~9月期)の経済成長率は+4.9%まで達し、民間消費も徐々に戻りつつあり、人々はショッピングモール、バー、コンサートホールや美容院にこれまでどおり出掛けていて、学校、地下鉄、事務所も人があふれる状況になっている。
中国はまず初めに、発生地を封鎖して感染拡大を防ぐことに賭けた。そして、感染が拡大すると更に広範囲の封鎖を行い、地域内での感染拡大を防ぐために数百万人の検査を実施した。
中国は独裁政権だから対応できたことで、民主主義国では採用不可能とされるが、結果をみれば明らかなように、中国は、いち早く経済復活させるためにまず大衆の感染防止、健康維持を優先したことが奏功している。
ホワイトハウスのマーク・メドウズ大統領首席補佐官(61歳)は、“米国は感染を抑えるのではなくワクチンや治療薬の開発に注力している”と表明したが、現在の米中間の結果の違いがどちらの方が有効だったかを物語っている。
10月初めの中国の国慶節の長期休暇の間、数億人の人たちが観光地等に一斉に繰り出し、また都市部の繁華街も大勢の人で混雑したが、マスク着用者は僅かであり、COVID-19感染は終焉したことが覗える。
ただ、ある就労者はインタビューで、“感染症前と後で生活様式は変わった”とし、“以前は業務や旅行等で頻繁に出歩いたが、今は顧客とインターネットで交信する等、行動が慎重になっている”と明かしている。
中国政府は今年初め、昨年末にCOVID-19発症が確認された際、武漢(ウーハン)における情報統制をしたり、公表しようとした関係者を処罰したりと、国内外から猛批判を受けた。
しかし、何が何でも感染を抑え込むと宣言するや否や、人口1,100万人の武漢を76日間も完全封鎖する等、人権侵害との非難にもめげずに大胆な政策に打って出た。
ある市民は、“都市封鎖政策断行の当初は窮屈に感じ、我慢を強いられたものの、結果的にはCOVID-19を収束に持って行けたので、中央政府からのトップダウンの政策を評価している”と述べている。
一方、そのときの米国はと言えば、ドナルド・トランプ大統領(74歳)が選挙キャンペーンの一環で対中強硬政策をぶち上げ、“中国ウィルス”と声高に叫んで中国共産党政府を一方的に非難するだけであった。
中国外交部(省に相当)は、感染症流行問題で米国民主主義の“化けの皮が剥がされた”と評し、また、国営メディア『環球時報』は社説で、米国の現在の状態こそ“人権侵害の悲劇”だと、よく米国政治家が中国を評して使う言葉を引用して論評している。
英国の東洋・アフリカ研究専門校(1916年設立)中国研究部の曾鋭生主任(スティーブ・ツァン、61歳、政治・歴史学者)は、“今回の事態を総括すれば、COVID-19発症間もない頃は国際社会から非難された中国共産党も習近平(シー・チンピン)国家主席(67歳)も、今や困難を乗り越え、深刻な問題を解決に導いたと大きく評価を挙げた、ということ”だと分析した。
ただ、曾主任は、“これで習国家主席の権力掌握は益々強化されよう”としながらも、“中国経済が大きく傷ついたことは事実で、また、COVID-19用ワクチン開発等、克服しなければならない問題があるので、中国の全面勝利だとは評価しえない”と付言している。
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