中国中部の武漢市(ウーハン)は丁度1年前、新型コロナウィルス(COVID-19)感染症発生源となり、1,100万人の住人に対して完全な都市封鎖措置が講じられた。あれから1年経った今、世界各国で依然COVID-19が猛威を振るう中、同市住民には平穏な日常生活が戻っている。中国共産党政府も、初期対応のまずさを隠蔽するかのように、COVID-19との戦争に打ち勝った都市として諸手を挙げて称賛している。
1月23日付
『AP通信』:「武漢市、依然感染症問題で喘ぐ世界を尻目に日常生活が復活」
2020年1月23日午前2時、当局から武漢市民のスマートフォンに、全市を都市封鎖するとの緊急通告があった。
その日以降、COVID-19感染が沈静化するまでの76日間(4月8日まで)、鉄道駅や空港が閉鎖され、1,100万人の市民は市外・省外への往来を禁じられ、また、市内のバス・地下鉄も運航停止となり、身動きができない状態に追い込まれた。...
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1月23日付
『AP通信』:「武漢市、依然感染症問題で喘ぐ世界を尻目に日常生活が復活」
2020年1月23日午前2時、当局から武漢市民のスマートフォンに、全市を都市封鎖するとの緊急通告があった。
その日以降、COVID-19感染が沈静化するまでの76日間(4月8日まで)、鉄道駅や空港が閉鎖され、1,100万人の市民は市外・省外への往来を禁じられ、また、市内のバス・地下鉄も運航停止となり、身動きができない状態に追い込まれた。
武漢市のCOVID-19感染者は5万人超(全国の約6割)、死者も3,869人に上り、全土の約8割を占める程深刻な事態となった。
あれから1年が経ち、同市内は様変わりとなっている。
すなわち、市民生活は以前のように活気づき、公共交通機関や自家用車等の往来が戻り、また、春節(2月12日~)を控え、鉄道駅や空港は旅行者等で賑わっている。
また、武漢市に対する称賛の声はにぎにぎしく、テレビのドキュメンタリー番組や出版物、ひいては中国共産党トップの習近平国家主席(シー・チンピン、67歳)までもが、“スターリングラード攻防戦(注後記)”の勝利のようにCOVID-19との戦争に打ち勝ったと、派手に礼賛している。
ただ、習指導部は同時に、1年前の初期対応の遅延という批判を封じ込めるかのように、世界に対して科学的な精査結果を知らしめるために時間が必要だったとか、また、ウィルスそのものは外部から、例えば米国のウィルス研究所などから同市に持ち込まれた可能性があるとの話を実しやかに言い出したりしている。
一方、1月23日には中国東部で新たに107人の感染が報告されており、北京や上海では、患者が発生した病院や市民宅を封鎖する措置を講じている。
また、香港においても、直近2ヵ月で4,300人余りの新規感染者が出ており、香港全体の約4割を占める程になっていることから、当局は1月23日、油尖旺区(ヤウチムウォンキョイ、九龍半島西の中心街)内の労働者階級居住区の16棟の住人に対して、陰性が確認されるまで外出禁止措置を講じる旨発表している。
(注)スターリングラード攻防戦:第二次世界大戦中、1942年11月から翌年1月にかけてソ連軍が、ドイツ軍に突入された南部スターリングラード(現ボルゴグラード)を包囲奪回した戦いを言い、大戦の決定的な転換点の一つとされている。以後、ソ連軍の士気はあがり全面的な反攻に転じたのに対し、ドイツ軍は衝撃を受け守勢に立たされた。連合軍でも、スターリングラードは反撃の合いことばとなった。
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