何度か触れたとおり、ジョー・バイデン大統領(78歳)は、中国とは対峙するだけではない関係を望んでいるようだが、かと言って領有権争いや人権問題等で軟化する意向はないとみられる。そこで、まず駐米中国大使が先陣を切って、前政権が標榜した“中国敵視”や内政干渉は止めて、協働の道を選択するよう公式見解を出した。しかし、ほぼ同じタイミングで新国務長官が、領有権で対峙するフィリピン外相に対して、東南アジア諸国の側に立って中国の横暴に立ち向かっていくと宣言している。
1月28日付
『ロイター通信』:「駐米中国大使、中国を“戦略的ライバル”と敵視しないよう注文」
駐米中国大使の崔天凱氏(68歳、ツイ・ティアンカイ)は1月28日、中国を“戦略的ライバル”として敵視することは、事態を悪化させる大変間違った政策だと訴えた。
トランプ政権は2018年、中国を“戦略的ライバル”と見做し、貿易問題から新型コロナウィルス(COVID-19)対応に至るまで、ことごとく対立し衝突してきたが、バイデン新政権も、中国に対する強硬姿勢は変わらないとみられている。...
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1月28日付
『ロイター通信』:「駐米中国大使、中国を“戦略的ライバル”と敵視しないよう注文」
駐米中国大使の崔天凱氏(68歳、ツイ・ティアンカイ)は1月28日、中国を“戦略的ライバル”として敵視することは、事態を悪化させる大変間違った政策だと訴えた。
トランプ政権は2018年、中国を“戦略的ライバル”と見做し、貿易問題から新型コロナウィルス(COVID-19)対応に至るまで、ことごとく対立し衝突してきたが、バイデン新政権も、中国に対する強硬姿勢は変わらないとみられている。
そこで、先制攻撃の意味か、バイデン政権が誕生して初めて、中国高官が正式に、米国と長い間協働してきたとする基本方針を再度訴えるだけでなく、一方で、越えてはならない一線を越えないようにと釘を刺した。
同大使は、中国は米国と対立するのではなく協力関係を求めているとして、お互いの相違点は対話で乗り越えていくべきだと強調した。
但し、同大使は、“米国は中国の核心的利益を尊重し、一線を越えて中国と徹底的に対立するような行動は慎むべきだ”と訴えた。
トランプ政権下では、香港反民主化、新疆ウィグル自治区の人権問題、南シナ海領有権争い、そして台湾独立問題と、あらゆる面で対立してきたが、同大使は、かかる問題は全て中国の内政事項であり、妥協する意向は全くない、とも付言した。
同大使は、バイデン政権が前政権と違って、中国に対してもっと多面的なアプローチをしてくると期待されるところから、もし米同盟国を焚きつけて中国包囲網を作り上げようとするなら、“新たな不均衡問題”を生み出すことになる、と牽制した。
なお、同大使は最後に、バイデン政権がパリ協定(気候変動対策)及び世界保健機関(WHO)に復帰するとした決定を歓迎するとし、COVID-19対策に共同して当たっていくことや、世界的経済、金融危機に対しても共通の政策で以て対応していくことを望む、と結んだ。
同日付『Foxニュース』:「ブリンケン新国務長官、フィリピン外相との会談で、中国の南シナ海における暴挙を看過しないと表明」
『ロイター通信』報道によると、アントニー・ブリンケン新国務長官(58歳)は1月28日、フィリピンのテオドロ・ロクシン外相(72歳)と電話会談した際、中国が南シナ海やその他東アジアにおいて一方的に主張している領有権は認めず、あくまで国際法に準拠した対応を支持していくと表明したという。
中国は直近でも、バイデン新政権の出方を牽制するかのように、台湾に対する圧力を強化しており、1月24日には、中国軍戦闘機15機を台湾領空である台湾海峡及び東沙諸島(プラタス、南シナ海北端、台湾が実効支配)上空を飛行させている。
台湾国防部(省に相当)の発表では、1月23日にも中国軍爆撃機8機及び戦闘機4機が領空侵犯をしているという。
なお、ブリンケン氏は長官指名承認の上院公聴会で、“トランプ政権が行った対中国強硬政策はある意味で正しかった”としながらも、“闇雲に対立するのではなく、違った方法で中国に対応していく”と証言している。
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