3週間近く前の前回報告時より、世界の感染者及び死者とも更に上昇傾向にあり、それぞれ1億4,662万8,322人(前回報告より+1,432万7,723人)、310万2,588人(同+23万807人)、また、致死率は若干下がって2.1%となっている。感染率が高く、若年層も発病しやすい変異株ウィルスの蔓延が原因とみられるが、特に深刻なインドに対して、米・英国・ドイツはもとより、敵対国のパキスタンまで人道的支援を申し出ている。一方、長期間の行動制限に辟易しているイタリア市民の多くが、ソーシャルディスタンシング確保もマスク着用義務もおざなりで初夏の外出にいそしんでいる(米ジョンズ・ホプキンズ大の4月26日午後4時現在の集計データを引用)。
4月25日付
『AP通信』他:「COVID-19感染問題に関わる直近の状況」
<ハイライト>
●米国:ジョー・バイデン大統領(78歳)が、変異株の感染拡大に喘ぐインド(感染者1,731万3,163人、死者19万5,123人、致死率1.1%)に対して、医療機器等の提供を申し出。
●英国:インド支援のため、大量の検査キットを送付手配済み。
●ドイツ:(1)同じくインド支援のため、移動式酸素吸入器等の医療機器の送付を検討。
(2)これまでは他国同様、高齢者や既往症の人たちに優先的にワクチン接種を行ってきたが、ワクチン追加手配の目処が立ったことより、6月から全成人対象のワクチン接種開始見込み。
●イタリア:4月26日から都市封鎖措置が一部緩和されることになっているが、行動自粛に辟易していた多くの都市の市民が、緩和前の週末に、市街・ビーチ等に繰り出し、ソーシャルディスタンシング確保もマスク着用義務も無視する行動。
●パキスタン:国境紛争等で敵対するものの、COVID-19蔓延に喘ぐ隣国インドに対して、必要不可欠な医療品等の人道支援を行うと発表。
●日本:3度目の緊急事態宣言適用を発出。“ゴールデンウィーク”期間中の混雑回避を見越してのものだが、専門家は、効果を疑問視。
●エジプト:アブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領(66歳、2014年就任)がワクチン接種したことを公表。国民、特に医療従事者のワクチン接種促進を意図。
●タイ:首都バンコクの感染拡大が深刻なため、アサウィン・クワンムアン都知事(70歳、バンコクは特別区で都政、2016年就任)が4月26日から2週間の都市封鎖措置を決定。
<米国>(感染者3,224万4,617人、死者57万7,224人、致死率1.8%)
・バイデン大統領は4月25日、“インドからの救援要請に応えるため、可及的速やかに必要な医療品等の提供を行う”とツイート。
・これに関して、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当、44歳)が同日、インドのアジット・ドバル首相補佐官(国家安全保障担当、76歳)と電話会談して、治療薬や感染検査キット、人工呼吸器、酸素吸入器、医療防護具等を至急手配すると伝達。
・更に、インド製薬会社が開発・製造するワクチン“コビシールド”用の原材料提供も行うとし、また、米国資本のインド在製薬工場を増強することによって、2022年までに少なくとも10億回分のワクチン製造を達成意向。
<英国>(感染者440万4,882人、死者12万7,428人、致死率2.9%)
・外務省に相当する外務・英連邦・開発省(2020年に外務・英連邦省と国際開発省が統合して誕生)は4月25日、インド支援のために9機の貨物機での検査キット手配を決定していて、その1番機が4月17日にニューデリーに到着すると発表。
・今週(4月19日の週)、ボリス・ジョンソン首相(56歳、2019年就任)が訪印予定だったが、インドの感染深刻化で予定がキャンセルされたことより、その代わりとして救済措置が講じられたもの。
・なお、検査キットの他、空気清浄機495台、非侵襲的補助換気機120台、手動人工呼吸器20台も提供。
<ドイツ>(感染者329万9,325人、死者8万1,624人、致死率2.5%)
・国防省は4月25日、インド救済のために移動式酸素吸入器等の医療機器の提供を検討中だと発表。
・これに先立ち、アンゲラ・メルケル首相(66歳、2005年就任)が、ドイツは“可及的速やかにインドへの支援”を行うと表明。
・ドイツはこれまで、COVID-19対策のために他国や国際機関に38の支援部隊を派遣。
・保健省は、ワクチン手配が大きく進捗していることから、6月から全成人対象のワクチン接種が可能となると発表。
・これまで、他国と同様、高齢者や既往症の人たちに優先的にワクチン接種を進めてきたが、英国アストラゼネカ製及び米ジョンソン&ジョンソン製ワクチンの追加手配の目処が付いたためと説明。
<イタリア>(感染者396万2,674人、死者11万9,238人、致死率3.0%)
・政府は今週(4月19日の週)、感染率、集中治療室占有率やその他感染流行度を測る指数の改善が認められた都市について、イースター(4月4日)前から導入されていた都市封鎖措置を4月26日から一部緩和することを決定。
・具体的には、レストランやカフェでは、テーブルを外に出しての会食許可。ただ、室内での会食は依然禁止。また、劇場・映画館・美術館も再開されるが、入場者数制限の条件付き。
・しかし、長期間の行動自粛に辟易していた、ローマ・ミラノ・トリノ・ナポリ等多くの都市の市民が、4月23日(金)夜半から25日(日)にかけて、市街・広場・ビーチ等に繰り出してパーティー騒ぎ。ソーシャルディスタンシング確保もマスク着用義務も無視する行動。
<パキスタン>(感染者80万452人、死者1万7,187人、致死率2.1%)
・パキスタンとインドは長い間国境紛争等で敵対してきているが、COVID-19蔓延に喘ぐ事態に鑑み、隣国インドに対して、必要不可欠な医療品等の人道支援を行うと発表。
・具体的には、人工呼吸器・酸素吸入器・X線機器・医療防護具等。
・政府の公式発表の前日、イムラン・カーン首相(68歳、2018年就任)がツイッターに、“COVID-19に感染したインド市民の一日も早い快復を祈る”と投稿。
<日本>(感染者56万2,141人、死者9,913人、致死率1.8%)
・日本政府は、4月25日より5月11日までの17日間、東京・大阪・京都・兵庫に対して緊急事態宣言適用を発出。
・この間、百貨店・バー・映画館等が休業となるが、いわゆる“ゴールデンウィーク”で旅行等が盛んになることを懸念しての感染抑制対策とされるが、専門家は、公共交通機関や目抜き通りでの混雑減少に至らないことから、効果に疑問視。
・日本におけるワクチン接種率が、依然人口比1%程度と低調であることが問題。
・ワクチン配布の大幅遅延のひとつに、海外で許可されたワクチンに対しても、改めて日本政府が再確認の上で承認するプロセスが必要なことが挙げられる。現在、政府承認のワクチンは米ファイザー社製のみ。
・一方、国内産ワクチンの生産・供給は来年、あるいは2023年までかかる見込み。
・なお、日本における死者が1万人近くに上り、東アジアでは最も多く、また、アジア全体でも多い部類。
(参考)アジアの主な国の死者は、インド19万5,123人、インドネシア4万4,594人、パキスタン1万7,187人、フィリピン1万6,783人、バングラデシュ1万1,053人、日本9,913人、中国4,636人、ネパール3,164人、韓国1,817人、マレーシア1,436人、スリランカ642人、タイ148人、カンボジア74人、ベトナム35人、シンガポール30人、台湾12人。
<エジプト>(感染者22万2,523人、死者1万3,049人、致死率5.1%)
・アッ=シーシー大統領が4月25日、ワクチンを接種したとフェイスブックに投稿。
・同大統領としては、ワクチン接種に消極的な国民、特に医療従事者に対して接種を促す意図。ただ、大統領府は、中国シノファーム製か英国アストラゼネカ製かどちらのワクチンを接種したかは明らかにせず。
<タイ>(感染者5万7,508人、死者148人、致死率0.3%)
・首都バンコクでは、4月初め以降COVID-19感染拡大が深刻。
・そこで、クワンムアン都知事が4月26日から2週間の都市封鎖措置を決定。ジム・公園・動物園・博物館・会議場・介護施設・ボクシング競技場は全て閉鎖。また、公共の場所でのマスク不着用は罰金。
・ただ、これまでの政府方針では、検査の結果陽性だった人は全て病院での治療を義務付けていることから、病床が全く空いていない状況が恒常的となり、市民の不満が蓄積。
・地元メディア報道では、入院を断られた患者2人が自宅で死亡。
<スリランカ>(感染者10万1,379人、死者642人、致死率0.6%)
・大統領府は4月25日、直近の感染拡大に鑑み、2週間の都市封鎖措置を行うと発表。
・これに伴い、会合やパーティー等の個人的な営みの禁止措置はもとより、公的サービス提供も中止。
・同国では昨年10月に、縫製工場及び魚市場でクラスターが発生しているが、目下第2波の最中。
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