ジョー・バイデン大統領(78歳)はこの程、長らく空席となっていた駐日米国大使に前シカゴ市長のラーム・エマニュエル氏(61歳、注1後記)を指名した。しかし、日本政府は心の中で、付き合いづらい候補者が指名されてしまったと落胆していると一部米メディアが報じている。
5月13日付
『ニューズマックスTV』(1998年設立の保守系メディア):「日本側、ラーム・エマニュエル氏の駐日大使候補指名に落胆」
ジョー・バイデン大統領は5月12日、第31代駐日米国大使として、前シカゴ市長(2011~2019年)であり、かつオバマ政権(2009~2017年)下では大統領首席補佐官(2009~2010年)を務めたラーム・エマニュエル氏を指名した。
しかし、日本の菅政権に近い事情通の情報によると、日本政府は同氏の指名に落胆しているという。
あるベテラン記者が『ニューズマックス』に語ったところによれば、“日本政府は、彼はむしろ駐中国大使の方が相応しいと思っている”という。
また、安倍政権に近かった事情通も、匿名を条件に『ニューズマックス』のインタビューに答えて、“同氏の選出は日本側にとって困惑となる”とした上で、“同氏は多くの強みを持っているかも知れないが、ただそれは外交上相応しいものではない”と断じた。
同氏はかねてより、激高しやすい性格、汚い言葉遣いに加えて、オバマ政権下の首席補佐官時代もシカゴ市長在任中も、しばしば回りと衝突する姿が目撃されていた。
従って、その事情通も、“彼に関する前評判が極端すぎる”とコメントした。
何故なら、日本人は得てして、過ちに寛容で万事に控えめであり、エマニュエル氏の性格とは正反対であるからである。
米政府はこれまで、駐日大使には次のような大物政治家を充ててきた。
ハワード・ベイカー(1925~2014年):上院院内総務(共和党、1977~1985年)、レーガン政権(1981~1989年)時の大統領首席補佐官(1987~1988年)を経て、ブッシュ政権(2001~2009年)時に第26代駐日大使(2001~2005年)。
トム・フォーリー(1929~2013年):下院議長(民主党、1989~1995年)を経て、クリントン政権(1993~2001年)時に第25代駐日大使(1998~2001年)。
ウォルター・モンデール(1928~2021年):カーター政権(1977~1981年)時の副大統領を経て、クリントン政権時に第24代駐日大使(1993~1996年)。
マイク・マンスフィールド(1903~2001年):上院院内総務(民主党、1961~1977年)を経て、カーター政権及びレーガン政権時に第22代駐日大使(1977~1988年)。
かかる歴史もあって、バイデン政権を観察する人たちは、同大統領が、エマニュエル氏ではなく、もっと大物の民主党政治家、例えば、クリントン政権時の副大統領(1993~2001年)で、2000年大統領選では民主党候補ともなったアル・ゴア氏(73歳、環境活動家として2007年にノーベル平和賞受賞)などを指名することを期待していた。
5月12日付『トゥルースアウト』オンラインニュース(2001年設立の倫理追及のNPOメディア):「好戦的なラーム・エマニュエル氏の米国大使指名は悲嘆にくれる選択」
バイデン政権が発足して4ヵ月、日米関係に注力しようとしている政権が誰を駐日大使に指名するか注目されていた。
しかし、この政治家だけは政権内に入れるべきではないと警告されていたにも拘らず、バイデン大統領は、よりによってエマニュエル氏を指名してしまった。
彼の好戦的キャリアはつとに有名で、シカゴ市長時代(2011~2019年)もいろいろ物議を醸していた。
特に強調すべきは、2014年時の2期目を狙った選挙戦時の問題行為である。
実は、Black Lives Matter(黒人の命も大切、BLM、注3後記)運動が大きく広がる契機のひとつとなった事件が、シカゴで2014年に発生している。
同年10月、歩行中のアフリカ系米国人少年のラクアン・マクドナルド君(享年17歳)が、シカゴ市警の白人警官ジェイソン・バン・ダイクに16発も撃たれて死亡した。
当初市警側は、ナイフを保持した同少年が警官の警告に従わなかったため、正当な発砲だったとして、同警官が罪に問われることはなかった。
しかし、事件から13ヵ月後の2015年11月、地裁の命令によって、パトカー搭載カメラの映像が提出されると、無抵抗の同少年をダイク容疑者が後ろから撃っていたことが判明した。
この結果、同容疑者には第1級殺人容疑で有罪判決が下されることになったが、実はこの背景には、2期目の再選しか考えていなかったエマニュエル市長が、選挙に不利とならないよう、搭載カメラ映像の隠蔽を図ったと考えられる。
なお、裁判を通じて真実が判明したこともあって、市警側の一方的な落ち度につき責任を問われ、市から遺族に対して500万ドル(約5億5千万円)の賠償金が支払われることになっている。
従って、エマニュエル氏は市長に再選されたものの、かかる人物が、果たして重要な同盟国のひとつである日本に駐留する大使として適任か、もっと厳しく評価する必要があろう。
(注1)ラーム・エマニュエル:ユダヤ系移民の政治家でイスラエルの国籍も所有。典型的なシオニスト(注2後記)で、1993~1998年の間、ビル・クリントン政権下で補佐官を務めた際は、毒舌・攻撃的姿勢から、同僚より“ランボー(1982年制作映画の主人公のベトナム帰還兵)”と呼ばれる。2003~2009年イリノイ州選出下院議員、2009~2010年バラク・オバマ政権下で大統領首席補佐官、そして2011~2019年にシカゴ市長を2期務めた。
(注2)シオニスト:イスラエルの地(パレスチナ)に故郷を再建、あるいはユダヤ教、ユダヤ・イディッシュ・イスラエル文化の復興運動(ルネサンス)を興そうとするユダヤ人の近代的運動を支持する人。
(注3)BLM:アフリカ系米国人のコミュニティに端を発した、黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える、国際的な積極行動主義の運動。特に、白人警官による無抵抗な黒人への暴力や殺害、人種による犯罪者に対する不平等な取り扱いへの不満を訴えている。
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