ベトナムは冷戦時代(1946~1989年)、中越戦争(1979年)等も背景に中国と対立するソ連(1922~1991年)との結びつきが強く、ソ連崩壊後も主にロシアから武器を調達してきた。しかし、ウクライナ戦争を契機に欧米諸国による対ロシア制裁強化に伴い、ベトナムも将来の武器調達計画に不安を覚え、ついにロシア離れの動きが加速しそうである。
12月15日付
『ロイター通信』は、「米武器メーカー、ヘリコプターや無人攻撃機販売に向けてベトナム高官と交渉」と題して、ベトナムが初めて開催した兵器・装備品国際展示会の機会を捉えて、複数の米武器メーカーがベトナム高官と軍事装備品供給について協議を重ねていると報じた。
米軍需産業大手メーカーがこの程、ヘリコプターや無人攻撃機等の供給に向けてベトナム高官と協議を重ねている。
事情通が匿名条件で『ロイター通信』のインタビューに答えたもので、これが進展すると、ベトナムが長い間頼ってきたロシア製武器の比率を減じることになるという。...
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12月15日付
『ロイター通信』は、「米武器メーカー、ヘリコプターや無人攻撃機販売に向けてベトナム高官と交渉」と題して、ベトナムが初めて開催した兵器・装備品国際展示会の機会を捉えて、複数の米武器メーカーがベトナム高官と軍事装備品供給について協議を重ねていると報じた。
米軍需産業大手メーカーがこの程、ヘリコプターや無人攻撃機等の供給に向けてベトナム高官と協議を重ねている。
事情通が匿名条件で『ロイター通信』のインタビューに答えたもので、これが進展すると、ベトナムが長い間頼ってきたロシア製武器の比率を減じることになるという。
同情報通によると、12月9日からベトナムで開催されている兵器・装備品国際展示会の機会を捉えて、米・ASEAN経済人会議(1984年設立)が設定したベトナム高官との会議に、ロッキードマーティン(1995年合併設立)・ボーイング(1934年設立)・レイセオン(1925年設立)・テクストロン(1923年前身設立)・IMシステムズグループ(1987年設立)代表が出席したという。
これら代表が協議を持ったのは、ベトナム公安部や国防部の高官であるとする。
ベトナム政府がこのような協議を持った背景は、長い間武器調達の主力となってきたロシアが、ウクライナ戦争を契機とした欧米諸国による対ロシア制裁強化の影響で、一国に依拠することを懸念して調達先の多様化を考えてのこととみられる。
豪ニューサウスウェールズ大学(1949年設立の国立大)のグエン・ティ・フォン軍事専門家は、“この協議を契機に、ベトナム人民軍(1935年前身設立)が国防面全体で米国側との関係強化を図っていくことになろう”と分析した。
ただ、軍事専門家の多くは、米国政府が人権問題を理由として対ベトナム武器提供に難色を示す可能性や、ベトナム・中国間の緊張度が高まる恐れ、更には、米国製の先端技術武器がベトナムの旧型武器に慣れ親しんでいる人民軍に最適化できるか等が懸念されるとしている。
米国政府は、ベトナム戦争(1955~1975年)終結後もベトナムとの関係には慎重で、2016年に対ベトナム武器禁輸措置を全面解除して以降も、ベトナム向けに提供するのは沿岸警備艇や練習機に止まっていた。
一方、その間にロシア製武器はベトナムが輸入した武器の約80%にも上っていた。
なお、先週開催されていた兵器・装備品国際展示会には30ヵ国から170以上の武器メーカーや団体が参加し、兵器や装備品を展示していた。
ベトナムは、中国との緊張関係が高まったり弱まったりを繰り返してきていることから、今後防衛強化の一環で年に20億ドル(約2,700億円)相当の武器調達を行うと予想されており、同展示会参加のメーカーらは多額の武器供給成約を期待している。
関係者情報によると、ベトナムは、長い間ロシアの次の供給元となっていたイスラエルの他、インド、欧州、更には東アジア諸国からの武器調達を検討しているとみられる。
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12月14日付欧米
『ロイター通信』は、「UA、ボーイング787ドリームライナー含む200機の次世代ジェット機発注」と題して、コロナ禍後の航空産業再興に期待して200機もの大規模発注を行うことになったと報じている。
UAは12月13日、コロナ禍後の航空産業再興に備え、かつ非効率な旧型機と入れ換える目的で、ボーイング787ドリームライナー(注1後記)100機及びB737MAX(注2後記)100機を発注することにしたと発表した。
当該発注高は、メーカー希望小売価格から算出すると約430億ドル(約5兆8,050億円)にも上る。
UAは同時に、当初公表していたエアバスA350(中~大型ワイドボディ機、約170~370席)45機の発注時期は“早くても”2030年まで繰り延べる、としている。
UAのスコット・カービィ最高経営責任者(55歳、2019年就任)は、“保有するB777(大型ワイドボディ機、1995年運用開始)の実際の入れ替え時期は2030年以降となるので、その際に、代替機候補をA350かB787かどちらを主とするか検討することになる”と付言した。
UAは2021年6月、“将来構想”の一環で、B737MAX 200機及びA321neo(長距離用中型ナローボディ機、約240席)70機を発注する意向を表明していた。
今回の発表で、ボーイング機の発注中身が変わることになったが、A321neoの発注意向は変わりないとしている。
一方、米ジェフェリーズ・フィナンシャルグループ(1970年前身設立)の経済アナリストは、UAの今後2年間の資本的支出(設備投資額)が200億ドル(約2兆7千億円)、また、2032年までに700機もの新型機の納入を受けることになるため、資本的支出が500億ドル(約6兆7,500億円)にも達すると懸念を表明した。
その上で、“必要不可欠な決断だとみられるが、将来的に厳しい向かい風にさらされることになる”と言及している。
しかし、UAは、堅実な財務諸表を追って提出することを“約束する”と強調している。
ただ、発注先のボーイング(1934年設立)の株価は0.2%上昇したが、UAは5.5%も下落している。
同日付米『CBSニュース』は、「UA、ボーイングのワイドボディ機を最大200機まで発注意向と発表」として詳報している。
UAとボーイング両社は12月13日、次世代機の新規売買契約が成立したと共同発表した。
その発表によると、B787ドリームライナー100機の発注に加えて、追加100機のオプションが付帯しているという。
ボーイングにとって、同機の発注高は同社史上最多となるとする。
また、UAはB737MAXを100機発注するとしており、既発注分の44機に更に56機が追加されることになる。
なお、UAは、B787ワイドボディ機の納期は2024~2032年となり、また、787-8(約250席)、787-9(約270席)、787-10(約300席)の3機種の組み合わせはUAがオプションを保有することになるとしている。
(注1)B787ドリームライナー:次世代の長距離用中型ワイドボディ機で、2011年運用開始。座席数は最大約300席。B767(中型セミワイドボディ機、1982年運用開始)及びB777の後継機。
(注2)B737MAX:第4世代の小型ナローボディ機で、2017年運用開始、座席数約200席。2018年10月にインドネシア・ライオン航空のジャワ沖墜落事故、及び2019年3月のエチオピア航空の墜落事故が立て続けに発生。米連邦航空局(FAA、1958年設立)から運用中の約250機に緊急改善通告が出されたこともあって、ボーイングは2020年1月以降生産停止。ただ、問題が改善されたとして同社は同年5月に生産再開。
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