キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T)と呼ばれる治療法は通称「Yescarta」とも呼ばれ、患者の白血球を変化させ、その白血球がリンパ腫を攻撃し死滅させる。治療費用は37万3000ドル(約4200万円)ほどと高額で、他の数種類のがん治療の後、がんが再発してしまった患者に対して許可される。FDAは声明で「この治療法はFDAによって承認された2番目の遺伝子治療であり、かつリンパ節を攻撃するがんの一つである非ホジキンリンパ種の特定種に対する初の免疫治療法となる。」とした。
FDAのスコット・ゴッドリーブ長官は「わずか数十年の間に、死に至るような治療法のないがんに対して遺伝子治療は理想からより現実な解決策へと向上した。今回の承認は医薬分野の継続的な勢いを示しており、新しい治療法の開発を支援するものだ」と述べた。
FDAは8月に当時25歳未満だったB細胞急性リンパ芽球性白血病の患者に対し、別のCAR-Tを承認していた。「キムリア」と呼ばれるその治療法はスイスの製薬会社大手のノバルティスが開発し、47万5000ドル(約5370万円)程度の費用がかかる。今回承認された治療法はそれとは異なるタイプの大型B細胞リンパ腫に対して有効とされ、毎年約72000人程度がリンパ腫と診断されるが、そのうちのほんの一部が治療の対象とされる見込みである。
フレッド・ハッチンソンがん研究センターの医師であるデイビッド・マロニー博士は「今回のFDAの決断は細胞免疫治療分野における革命であり、患者の免疫を操作してがん細胞を排除することが可能になる。今後数年間で数千人の命が救われるだろう。」と述べた。
一方でこの治療法は重篤な副作用を引き起こす可能性も指摘されており、FDAは開発した製薬会社に対し措置を講じるよう求めている。この治療法によって患者の免疫システムがサイトカインと呼ばれる物質を体に放出してしまい、その結果高熱などの症状の他、まれに死に至るほど神経を損傷させてしまう可能性があると言われており、医療機関はこれらへの対応も必要とされている。
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