「緊急事態宣言を決める」よりシンプルで分かりやすいモデルの追求(5月31日)
4月7日に発出された緊急事態宣言が、25日ようやく解除された。2週間と4日の外出自粛、休店などによって多くの会社、ビジネスマン、生活者に経済的打撃が及んでいる。「8割の行動制限」は政府専門家会議・北海道大学の理論疫学のエキスパート西浦博教授によって主導された。独自の計算式に基づいて「8割の行動制限をしなければ、日本人42万人が死亡する」と主張する西浦教授のデータに誰も異論を差しはさむことなく、緊急事態宣言が実施されることになったが、今になって「緊急事態宣言は不要だったのではないか」という指摘が一部で上がっており波紋を広げている。...
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4月7日に発出された緊急事態宣言が、25日ようやく解除された。2週間と4日の外出自粛、休店などによって多くの会社、ビジネスマン、生活者に経済的打撃が及んでいる。「8割の行動制限」は政府専門家会議・北海道大学の理論疫学のエキスパート西浦博教授によって主導された。独自の計算式に基づいて「8割の行動制限をしなければ、日本人42万人が死亡する」と主張する西浦教授のデータに誰も異論を差しはさむことなく、緊急事態宣言が実施されることになったが、今になって「緊急事態宣言は不要だったのではないか」という指摘が一部で上がっており波紋を広げている。驚くべきことに感染のピークは、緊急宣言が出た4月7日よりも前だったいうのである。ピークがさがっていたことは東京都の実行再生産数が0.7だったことからも明らかである。西浦教授は「8割の行動制限」の根拠となる計算を実行再生産数2.5で行っていた。さらに計算式すら、忙しいとの理由で提示しなかった。今から考えてみればここに突っ込みを入れられない日本人のデータ・リテラシーのなさに唖然とさせられる。少なくとも子どもの頃から数値や指標、データを扱う訓練を受けている欧米人に比べると、日本人はデータを扱うことが不得手であるようだ。加えて日本人は専門家とか権威の肩書に弱い面があり、少なくとも緊急事態宣言が発出された当時、日本人の誰もが政府の専門家、北海道大学の理論疫学の権威としての西浦教授のデータを信じ切っていたという結果になってしまった。
感染者数が増えれば自粛をして抑え、ちょっと増えればアラートを発する。こうした波をいかにつかむかが新型コロナウイルスが終息するまでに必要となる一番重要な要素である。大阪大学核物理研究センターの中野貴志教授が考案したK値は今後有力な数値モデルとなる可能性を秘めている。すでに神奈川県では導入済みであり、計算式も公開されている。直近1週間の新規感染者数をこれまでの累計感染者数で割った直近1週間の感染者の増加率がK値である。この数値を繋げて行くと今後の感染者の動向が曲線として見えてくる。この曲線を予想曲線と呼び、曲線が上に大きくはずれてくる場合には感染者数が増える傾向がある。実際に、このデータの精度の高さは大阪府の感染者のデータを当てはめてみたことによって証明された。大阪府のデータでは予想曲線を上に大きくはずれるポイントがあったが、実際にその後、大阪で感染者数が拡大したのである。今後、日本は計算式が公表された精度の高い数値モデルを複数突き合わせ、新型コロナウイルスの抑え込みを図っていくべきである。しかも数値モデルは、微分方程式など高等数学を使うものよりも、よりシンプルなモデルを採用しなければ、モデルそのものを検証することが難しくなる。当然のことながらモデルの見直しや検証も随時行っていくべきである。
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自民党“感染拡大踏まえた「骨太の方針」に”(5月31日)
新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、自民党は“日本社会のぜい弱性を洗い出し、次なる危機に備えることが急務”だとして、甘利税調会長をトップにした組織を立ち上げ、対策を検討することになった。
具体的には、新たな働き方、デジタル化加速、情報通信インフラの整備、サプライチェーンの再構築などを「骨太の方針」に盛り込むよう政府に提言することにしている。
また、米国と中国の対立が国際秩序に与える影響や日本の果たすべき役割について、中長期的に検討を進める方針である。...
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新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、自民党は“日本社会のぜい弱性を洗い出し、次なる危機に備えることが急務”だとして、甘利税調会長をトップにした組織を立ち上げ、対策を検討することになった。
具体的には、新たな働き方、デジタル化加速、情報通信インフラの整備、サプライチェーンの再構築などを「骨太の方針」に盛り込むよう政府に提言することにしている。
また、米国と中国の対立が国際秩序に与える影響や日本の果たすべき役割について、中長期的に検討を進める方針である。
一方、自民党・下村元文部科学相や稲田幹事長代行らは“社会変革を促進し新たな国家像を模索する必要がある”として議員連盟を発足させ、テレワーク推進やマイナンバー活用を検討し、政府に申し入れることにしている。
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ワクチン開発最前線(5月30日)
現在のワクチンの開発状況は、どうなっているのか。ワクチンの種類は大まかに言って生ワクチン、不活化ワクチン、ウイルスベクター、サブユニット、RNAワクチン、DNAワクチンの6種類がある。現在は時間がかかる生ワクチンを除き、5種類のワクチン開発が各国で進められている。
感染力を失わせたワクチンを使う不活化ワクチンは中国で開発が進められており、現在少人数の健康な人に接種するフェーズ1に到達している。...
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現在のワクチンの開発状況は、どうなっているのか。ワクチンの種類は大まかに言って生ワクチン、不活化ワクチン、ウイルスベクター、サブユニット、RNAワクチン、DNAワクチンの6種類がある。現在は時間がかかる生ワクチンを除き、5種類のワクチン開発が各国で進められている。
感染力を失わせたワクチンを使う不活化ワクチンは中国で開発が進められており、現在少人数の健康な人に接種するフェーズ1に到達している。
弱毒性のウイルスをベクター(たんぱく質)に用いるウイルスベクターは健康な人に接種するフェーズ2に中国が入った。最も進んだ段階のフェーズ3にアストラゼネカ、オックスフォード大学の英国チームが入った。大規模な集団に接種して有効性と安全性を確認する最大の山場を迎えるが、大規模に接種する段階にも関わらず感染者数が英国で減少していることが気がかりであるが、成功した場合には出資者の米国と英国で使われる予定になっている。
一方、遺伝子工学を用いたサブユニットワクチンの開発では米国がフェーズ1に入っている。さらに体内で人工ウイルスを作るRNAワクチンの開発にはフェーズ1に米国とドイツがおり、フェーズ2にも米国が入っている。
DNAワクチンは大阪大学とアンジェスの日本連合が7月にフェーズ1に入る予定である。さらに、9月にはフェーズ2に入る。
特許権をプールしてみなでワクチンを使えるようにしようというパテントプールという概念を安倍首相が6月後半に米国で予定されているG7で提唱する模様で、世界の連帯がどこまで進むか注目される。
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コロナ禍・結果が気になる特異な政策の行方(5月30日)
世界における新型コロナウイルスの感染拡大は感染者600万人に迫る勢いを見せており留まる気配がみられない。パンデミックの下では検査・隔離がセオリーとなるが、いくつかの国ではこの原則から外れた行動がみられる。
例えば、ブラジル・ボルソナロ大統領はこのような状況下でも経済活動を優先させる姿勢を鮮明に打ち出している。新型コロナウイルスを「ただの風邪だ」と称し、厳しい外出制限を取っていない。ボルソナロ大統領に激しく抵抗したのが、ブラジル各州の知事だった。...
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世界における新型コロナウイルスの感染拡大は感染者600万人に迫る勢いを見せており留まる気配がみられない。パンデミックの下では検査・隔離がセオリーとなるが、いくつかの国ではこの原則から外れた行動がみられる。
例えば、ブラジル・ボルソナロ大統領はこのような状況下でも経済活動を優先させる姿勢を鮮明に打ち出している。新型コロナウイルスを「ただの風邪だ」と称し、厳しい外出制限を取っていない。ボルソナロ大統領に激しく抵抗したのが、ブラジル各州の知事だった。彼らは感染拡大をしっかり止めないといけないということで、外出制限など、厳しい規制を取ってきた。これを快く思っていないボルソナロ大統領は、ジェットスキーをしたりやりたい放題で、自身も外出自粛反対デモに参加し、「奴らはクソだ。クソ野郎の州知事どもはウイルスを利用している。あの市長は無駄な墓地まで掘っている」などと叫ぶなど、大統領とは思えない行動に出ている。現在、ブラジルの感染者数は41万人超とロシアを抜いて2位となっている。
新たに8300人以上の感染が明らかになったロシアでは、感染者が38万人でブラジルに次いで世界第3位となっている。死者数は4374人であるが、実際にはこの倍以上ではないかとの指摘も出ている。こうした中、プーチン大統領は「ピークは過ぎたとみられる」とし、モスクワの経済活動を再開させることや、市民の外出を6月1日から段階的に緩和する方針を了承した。さらに、延期されていた軍事パレードをモスクワなどで6月24日に行う考えを明らかにした。このパレードは、ナチス・ドイツに勝利したことを記念して毎年5月9日に行われている行事であるが、最もロシア国民の愛国心が高まる日だとされている。プーチン大統領としては、感染拡大による経済の落ち込みなどで国民の不満が募る中、愛国的な行事を滞りなく行うことで求心力を高めたい狙いがある。さらに気がかりな動きがある。それはロシアで予定されている憲法改正を問う国民投票で、憲法改正が行われればプーチン大統領が再び大統領選挙に立候補するのではないかという懸念の声が出ている。
3万5727人と感染者数世界16位のスウェーデンは新型コロナウイルスによる死者が4266人で北欧圏の中では突出している。それもそのはずで、スウェーデンはロックダウンを行わずに普通の生活を続けていくという独自政策を行った。この政策はワクチンが承認され、広く利用可能になるまで、「感染の広がりを抑制する方法はない」という考え方がベースになっている。高齢者施設ではマスクもせずに職員が入居者に接し、小中学校は通常通り授業を続けている。飲食店ではバーカウンター形式の接客は禁じているものの、テーブル席も利用可能である。この戦略を推進してきたのは、公衆衛生庁の疫学責任者、アンデシュテグネルである。テグネルは一部の国民からは英雄視さ彼の入れ墨を腕に入れる国民までいるほどの人気ぶりである。テグネルの目論みは国民の60%が免疫を獲得する集団免疫にあったが、結果として新型コロナウイルスに感染した人はわずか7.3%に過ぎず、テグネルは目標を達成することはできなかった。死亡者数が多いことで、テグネルを非難する人も出てきている。ちなみに7.3%という数値は厳格なロックダウンを実施したフランス、スペインの割合とほぼ同じであった。今後こうしたユニークな防疫政策の可否が明らかになってゆくことになる。
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今、米国で何が起こっているのか(5月30日)
米国では新型コロナウイルスの死者数が遂に10万人を超え、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、仕事を失った人が申請した失業保険の件数は非常事態宣言が出された3月中旬からの合計で4000万件を超えた。こうした中、トランプ大統領は自身が所有するバージニア州のゴルフクラブでゴルフをプレーした。さらにメリーランド州では戦没将兵を追悼するメモリアルデーに参加したが、マスクもせずに参列した。
大統領選でトランプ大統領と戦うことになる民主党・バイデン前副大統領はキャンペーン動画を公開した。...
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米国では新型コロナウイルスの死者数が遂に10万人を超え、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、仕事を失った人が申請した失業保険の件数は非常事態宣言が出された3月中旬からの合計で4000万件を超えた。こうした中、トランプ大統領は自身が所有するバージニア州のゴルフクラブでゴルフをプレーした。さらにメリーランド州では戦没将兵を追悼するメモリアルデーに参加したが、マスクもせずに参列した。
大統領選でトランプ大統領と戦うことになる民主党・バイデン前副大統領はキャンペーン動画を公開した。この動画では新型コロナの患者に対応する医療従事者の映像とゴルフをプレーするトランプ大統領の映像が交互に編集され、「10万人近くが命を落とす中、大統領はゴルフに時間を費やしている」と痛烈に批判している。
トランプ大統領は、新型コロナウイルスに対してはワクチンの早期開発・供給を目指す、「ワープ・スピード作戦」を発表し、早期の解決を目指す一方で失業者4000万件という数字が重くのしかかっている。今後、米国の失業率はさらに高まる可能性があると指摘されている。トランプ大統領にとって経済再生は再選の鍵であるが、経済回復への見通しはなかなか厳しいものがある。トランプ大統領が、マスクの着用やソーシャルディスタンスを守らなかったりするのも、11月8日までにコロナ前の好調な経済に戻す必要に迫られている苛立ちが態度に出ているとみるべきである。
トランプ大統領は現在置かれている不利な状況を打開するために、中国叩きに狙いを定めており、「新型コロナウイルスは中国・武漢市のウイルス研究所から流出した可能性がある」とのキャンペーンを展開し、中国叩きに躍起になっている。これには感染拡大の責任追及をかわそうという狙いもある。
トランプ大統領にとってタイミングの良いことに、香港に対する統制を強めたい中国が「国家安全法」を制定したため、トランプ大統領は早速これに食いついた。中国に対する制裁措置として、これまで香港に認めてきた貿易などの優遇措置を停止し、当局者に制裁を科す方針を発表した。今後、大統領選の状況も見据えつつファーウェイ問題や台湾問題、ウイグル問題など矢継ぎ早に中国が嫌がるカードを切っていくとみられる。中国がこうした動きにどう対処するのか注目が集まっている。
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