「監視型都市整備モデル」を打ち出すか?(6月27日)
今月11日以降、北京市の食品卸売市場を訪れた人など250人に新型コロナウイルスの集団感染が確認された。北京市の当局は、「戦時状態に入った」として、北京市を封鎖し大規模規制を行った。中国の保健当局は新型コロナウイルスのPCR検査について、検査態勢を強化した結果、1日に最大370万人余りの検査を行えるようになったと強調し、北京を離れ、出張する人などにも、PCR検査を行うように指示し、22日までにおよそ9000万人分の検査を行ったとしている。...
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今月11日以降、北京市の食品卸売市場を訪れた人など250人に新型コロナウイルスの集団感染が確認された。北京市の当局は、「戦時状態に入った」として、北京市を封鎖し大規模規制を行った。中国の保健当局は新型コロナウイルスのPCR検査について、検査態勢を強化した結果、1日に最大370万人余りの検査を行えるようになったと強調し、北京を離れ、出張する人などにも、PCR検査を行うように指示し、22日までにおよそ9000万人分の検査を行ったとしている。北京市外に出るためには7日以内に取得した陰性証明書が必要となるという。
中国疾病予防コントロールセンター首席専門家・呉尊友は第2波流入ルートとして2つの可能性をあげた。一つは市外から市場に持ち込まれた肉や水産物の表面にウイルスが付着していた可能性、もう一つは、感染者が市場で感染を広げた可能性である。その上で呉尊友は今回、北京で発見されたウイルスは、欧州で流行している主要なウイルス株である可能性が高いとしている。環球時報は「北京のコロナ感染は武漢よりも高いが中国の防疫経験は実に豊富だ」との見出しで「このウイルスは欧州経由であり、輸入品と関係すると見られる」と書いている。
これまで中国は新型コロナウイルスを克服したかのように振舞っていた。そのことは中国の国務院新聞弁公室が「新型コロナウイルス肺炎疾病を乗り越えた中国の行動」という白書を出したことを見ても明らかである。皮肉なことにこの白書を出した途端に、中国共産党のお膝元である首都・北京で第2波に見舞われてしまったことになり、習近平国家主席のメンツが丸つぶれになってしまった。
ただ、北京の感染者数256人という数字は4月17日東京都で出た201人とほとんど変わらない。この感染者数で9000万人規模のPCR検査体制を構築し、防疫強国を打ち出していくあたり「監視型都市整備モデル」を国際標準として提案している中国の裏の意図を感じざるをえない。不退転の決意で大国化に乗り出している中国が、米国やブラジル、スウェーデンが経済最優先で感染者を拡大させていることをほくそえんでみている可能性も感じる。
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東京五輪の開催可能性は(6月6日)
米国はRNAワクチン、日本はDNAワクチンの開発にそれぞれ競い合うようにして前のめりになっているが、ワクチンには有効性と安全性の両方を満たしていることが要求され、接種できる時期は見通せない。期待されたレムデシビルも中等症に対する限定的な効果にとどまるとされ、安倍首相がスピード承認を約束していたアビガンも臨床研究で明確な有効性が示されず早期承認は絶望的な状況になっている。
このような中で日本政府は「東京五輪を来年の7月23日から8月8日まで行う」と早々と発表した。...
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米国はRNAワクチン、日本はDNAワクチンの開発にそれぞれ競い合うようにして前のめりになっているが、ワクチンには有効性と安全性の両方を満たしていることが要求され、接種できる時期は見通せない。期待されたレムデシビルも中等症に対する限定的な効果にとどまるとされ、安倍首相がスピード承認を約束していたアビガンも臨床研究で明確な有効性が示されず早期承認は絶望的な状況になっている。
このような中で日本政府は「東京五輪を来年の7月23日から8月8日まで行う」と早々と発表した。来年7月の状況がどうなっているのかはなかなか予測することは難しい。政府は選手や観客にもPCR検査を行う方向で検討しているようだが、そもそも海外の感染状況がどうなっているのかもわからない中で来たい選手、観客がいるのかどうかも疑わしい。
さらに深刻なのは主催する東京都の厳しい財政事情である。4日、小池百合子知事は、「国や大会組織委員会と連携して、合理化や簡素化を進めていく」とし質素な五輪にする考えを示したが、既に新型コロナウイルスの対策費は1兆円超に膨らみ、財政調整基金は9000億円超の残高をほぼ使い切ってしまった。
安倍首相は完全な形で東京五輪を行うことを表明したが、数千億円といわれる追加費用のうち、IOCは再々延期はないとくぎを刺し、最大6億5000万ドル(約709億円)を支払う意向で残りを開催都市に負担させようとしている。
このまま開催にこぎつけた場合、都債を発行して賄う形になる可能性が高いが、例えば、感染リスクを抑えるためにPCR検査を実施し入場者数を制限した場合に、チケット収入は大幅に減少する上、簡素化によって広告効果の減少を懸念して、スポンサーが減少することなども想定される。このあたりをどう考えるのか。7月の東京都知事選でも現実を直視した東京五輪についての冷徹な議論が必要とされる。
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コロナ後に進む世界経済の「日本化」(5月26日)
コロナの感染拡大等を考えた時、第二波、第三波が懸念されているので、なるべくお金を使わない、貯蓄した方が良いという思いが企業や家計に波及していく傾向がある。
結果として表れてくるのが消費投資意欲低迷、低成長、低物価、結果として低金利が根づいてきてしまうのではという危惧も持たれる。
日本の貯蓄・投資(IS)バランスはゼロより上にある状況が続いているが、民間部門がお金を使わなかった分は政府部門がお金を借りて財政出動、時に減税で経済を支える。...
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コロナの感染拡大等を考えた時、第二波、第三波が懸念されているので、なるべくお金を使わない、貯蓄した方が良いという思いが企業や家計に波及していく傾向がある。
結果として表れてくるのが消費投資意欲低迷、低成長、低物価、結果として低金利が根づいてきてしまうのではという危惧も持たれる。
日本の貯蓄・投資(IS)バランスはゼロより上にある状況が続いているが、民間部門がお金を使わなかった分は政府部門がお金を借りて財政出動、時に減税で経済を支える。
これが日本経済で長年続いてきた構図であり、日本企業についてよく内部留保を貯め込みすぎと言われていたが、それがあったから今回助かったという成功体験になったとも言える。
内部留保を貯めたりするのが必ずしも正義ではないが、結果として世界でそうなっていく可能性もある。
ヨーロッパでは金融規模がそういう流れになってきている。世界全体がそうなってきてしまうと低金利が根づいてしまう、使われないお金がたくさん出てきてしまう可能性が高くなっている。
金融経済と実体経済のかい離は今もあるし、これからも進んでいく可能性がある。
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WHOと中国、そして日本は(5月23日)
18日WHO年次総会オンライン会議が開催された。中国・習近平国家主席やWHO・テドロス事務局長の他、国連・アントニオ・グテーレス事務総長、フランス・マクロン大統領、ドイツ・メルケル首相、韓国・文在寅大統領、南アフリカ共和国・ラマポーザ大統領、バルバドス・モトリー首相、スイス・シモネッタソマルーガ大統領などがスピーチを行った。
台湾はオブザーバー参加を希望していたが、米国、日本、オーストラリアの支持にも関わらず、水面下で中国が圧力をかけたため、台湾は参加を断念した。...
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18日WHO年次総会オンライン会議が開催された。中国・習近平国家主席やWHO・テドロス事務局長の他、国連・アントニオ・グテーレス事務総長、フランス・マクロン大統領、ドイツ・メルケル首相、韓国・文在寅大統領、南アフリカ共和国・ラマポーザ大統領、バルバドス・モトリー首相、スイス・シモネッタソマルーガ大統領などがスピーチを行った。
台湾はオブザーバー参加を希望していたが、米国、日本、オーストラリアの支持にも関わらず、水面下で中国が圧力をかけたため、台湾は参加を断念した。
新型コロナウイルスの対応において中国とWHOの責任を徹底的に追及していく構えを示している米国・トランプ大統領は、WHO年次総会開催と同じタイミングでテドロス事務局長に送った書簡をツイッターで公開した。
この中には「WHOは驚くほど中国からの独立性を欠いている」などと中国に偏向した動きをするWHOに対する怒りや、新型コロナウイルスの発生源となった中国に対する怒りが書かれており、「組織の抜本的改革を行い、今後30日以内にWHOに改善が見られない場合、年間4億5000万ドルの拠出金を停止し、WHOからの脱退も辞さない」とWHOに対する痛烈なメッセージが書かれていた。
中国はこれに即座に反応し、習主席はオンラインスピーチで、「WHOに2年で2100億円の拠出を行う。ワクチンの開発に成功すればそれを国際公共財にする」などと表明し、米国不在のWHOであたかも国際社会を主導するリーダー国であるかのように振舞った。
総会では「中国にWHO査察団を派遣し、ウイルスの起源や、WHOの初動対応について独立した調査を行う」ことなどが決定されたが、「中国の責任追及は行わない」ことや、調査は「感染収束後」に行うなど、中国に都合がよい条件がつけられた。
専門家は「WHOが今、中国に査察に行っても中国はほとんどの証拠を隠滅してしまったため、ほとんど何も見つけることはできないだろう」と落胆の色を隠さない。
今後、テドロス事務局長はトランプ大統領の要求に応え、形だけの改革案を提示する可能性もあるが、それに納得しないトランプ大統領がWHOを抜ける可能性は十分あるといえる。パリ合意やTPPから離脱したことを考えれば、トランプ大統領にとってはむしろ自然な流れかもしれない。
そうなるとWHOはいよいよ中国の発言力が強まる組織となることが考えられ、日本にいやがらせをしてくる可能性も考えられる。中国主導のWHOにおいて日本としてはどのように振舞っていくべきなのか、今から準備をしておく必要があるかも知れない。
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工場の操業など再開で・武漢-成田空港の貨物臨時便・運航始まる(5月20日)
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻だった中国・武漢で工場の操業などが再開したことを受け、ANA Cargoは成田空港との間を直接結ぶ貨物臨時便の運航を開始した。
直行便の運航は、輸送時間の大幅短縮に繋がると期待されている。ANA Cargo・勝部昭男取締役は「6月以降もニーズが高ければ運航は続けていきたい」とコメントした。
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