米中対立の根本にあるもの(8月24日)
(米中対立の根本にあるもの)
貿易、為替、安全保障、人権など様々な問題で米中が対立しているその根幹部分には国家体制における構造問題が横たわっている。構造問題とは突き詰めれば資本主義・自由主義・民主主義と共産主義・全体主義という体制の違いを乗り越えられないために生じる問題で、結論から言えばどちらかの体制がどちらかを変えない限り、乗り越えることはできない。いままで米国はいつの日か中国は変わるだろうという甘い期待を持ち、こうした部分に敢えて目をつむってきたが、特にアメリカファーストを掲げたトランプ大統領が就任したことで、状況は大きく変化し、目をつむることをやめたことで本質的な問題が噴き出してきた。...
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(米中対立の根本にあるもの)
貿易、為替、安全保障、人権など様々な問題で米中が対立しているその根幹部分には国家体制における構造問題が横たわっている。構造問題とは突き詰めれば資本主義・自由主義・民主主義と共産主義・全体主義という体制の違いを乗り越えられないために生じる問題で、結論から言えばどちらかの体制がどちらかを変えない限り、乗り越えることはできない。いままで米国はいつの日か中国は変わるだろうという甘い期待を持ち、こうした部分に敢えて目をつむってきたが、特にアメリカファーストを掲げたトランプ大統領が就任したことで、状況は大きく変化し、目をつむることをやめたことで本質的な問題が噴き出してきた。特に大きな問題は共産主義が自由な資本移動を認めていないということである。具体的には、資本の自由化を許容すれば、多くの富裕層が中国国内から国外へと逃げ出し、資産を移転させる可能性があり、共産党独裁体制の崩壊につながるからである。また、国内で自由な資本移動を許せば、国内の土地を外国資本によって買われてしまうことにつながり、土地の私有化を許すことにもつながる。このような状態はもはや共産主義とは言えないものである。
(中国の経済成長のために編み出された抜け道)
こうしたことから外資系企業は原則的には中国国内に100%出資の企業を持つことはできない規制があるが、中国の経済成長のために抜け道として編み出されたのが、外国企業が中国の企業と合弁会社を設立し、企業内に共産党組織を設置するというやり方だった。しかし、トランプ政権になってから米国は「この仕組みによって米国企業の技術が中国に盗られている」と主張し、これをやめるよう要求している。また中国を為替操作国に認定することで、管理変動相場制という固定相場制をやめさせ、中国に自由主義経済体制の日本や西側諸国と同じ条件で経済活動を行うよう要請し始めた。資本移動の自由化と為替の自由化は、中国共産党による一党独裁体制をやめろと言っているに等しく、トランプ政権は為替自由化や資本取引の自由化をてこに、中国の共産党体制を揺さぶろうとしている。しかし中国にとっては簡単に受け入れられるものではない。今後起きる可能性があるのは世界が米国陣営と中国陣営に二分され、両陣営が様々な国を自陣営に取り込んでいくという構図になる。
(中国陣営に組み込まれていく韓国)
例えば日本の隣国・韓国は伝統的に米中の間でそうした選択を回避するという、戦略をとってきたが、これまでは自由主義陣営に属してきている。ただ文在寅が大統領に就任して以来、中国陣営に対する距離を急速に縮め始めた。そもそも文大統領は、就任当初から4日間に及ぶ訪中を実施するなど、中国寄りの姿勢を見せていたし、自身の取り巻きも反米韓同盟論者で固めている。さらに米政府の掲げる中国包囲網戦略「インド太平洋戦略」にも距離を置き、過去にトランプ大統領との約束を何度か反故にする場面もみられた。今回破棄されたGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)に至っては、実は大統領になる前から破棄すると明言していた。GSOMIAの破棄はもちろん中国にとっては歓迎すべきことである。一方、米国の目には中国陣営にすり寄る「裏切り行為」として映ったことは想像に難くない。ただし、米国は韓国の5Gを可能にする通信システムなどのハイテク分野の技術は失いたくないと考えており、しばらくは韓国を追い詰め過ぎないようにする可能性もある。中国も機会をみつけて韓国に経済的側面の支援をすることは目に見えており、韓国の引っ張り合いが展開される。現段階では韓国は中国になびきつつあるといえるかもしれない。中国にしてみれば、現在の文政権は中国にとって最も取り込みやすい政権であり、この政権であるうちに韓国を昔のような中国の従属国家に戻す策略かもしれない。
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米国・取り引き禁じ措置・ファーウェイ・関係46社追加 (8月20日)
米国・商務省はことし5月、米国企業が政府の許可なくファーウェイや関連68社との取り引きを禁じる措置を導入した。
この措置をめぐって19日、取り引きを禁止するリストに新たにファーウェイ関係46社を追加したと発表した。
米国・トランプ大統領は中国・習近平国家主席と首脳会談後、ファーウェイへの締め付けを一部緩和する方針を示した。
その後、農産品や通貨問題をめぐり再び対立が深まっていて、結局ファーウェイへの締めつけを強化した。...
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米国・商務省はことし5月、米国企業が政府の許可なくファーウェイや関連68社との取り引きを禁じる措置を導入した。
この措置をめぐって19日、取り引きを禁止するリストに新たにファーウェイ関係46社を追加したと発表した。
米国・トランプ大統領は中国・習近平国家主席と首脳会談後、ファーウェイへの締め付けを一部緩和する方針を示した。
その後、農産品や通貨問題をめぐり再び対立が深まっていて、結局ファーウェイへの締めつけを強化した。
ファーウェイ製品を使った通信ネットワーク保守事業などは一部の取り引きについては、猶予期間を90日間延ばす。
ロス商務長官は「混乱を防ぐために時間が必要だ」と声明、米国の中小企業などファーウェイとの取り引きをやめるための一時的対応だとの姿勢を崩していない。
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中国を怒らせる米配送会社「フェデックス」(8月19日)
フェデックスは、今年に入って「業務ミス」を中国で起こしている。複数のファーウェイの宅配品を郵送先ではないアメリカに誤送してしまったこともあった。また、ファーウェイのスマートフォンの中国以外の国への配送依頼を拒否していると言われている。いずれも、特定中国企業に対する米国政府の狙い撃ちに協力している行動だと中国に捉えられている。昨日、福建省にあるスポーツ用品会社がフェデックス便で送られてきたアメリカ発の小包に銃があったというニュースが中国の国営メディアを通じて大きく報道された。...
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フェデックスは、今年に入って「業務ミス」を中国で起こしている。複数のファーウェイの宅配品を郵送先ではないアメリカに誤送してしまったこともあった。また、ファーウェイのスマートフォンの中国以外の国への配送依頼を拒否していると言われている。いずれも、特定中国企業に対する米国政府の狙い撃ちに協力している行動だと中国に捉えられている。昨日、福建省にあるスポーツ用品会社がフェデックス便で送られてきたアメリカ発の小包に銃があったというニュースが中国の国営メディアを通じて大きく報道された。
良く知られてないが、中国は民間人による銃の所持を厳しく取締っている国のようだ。また、中国の関連法律で十種類以上の物品の郵送を禁じていて、武器弾薬の場合には「禁郵」と表面に表示することになっている。そんなことを世界最大の輸送流通会社のフェデックスが知らない筈はない。普通に考えれば、これはあり得ない「業務ミス」ということになる。
環球時報は「待っていました」と言わんばかりに、「これは明らかに重大な事件だ」と、社評を出して、フェデックスへの批判に拍車をかけ始めた。
「今回の事件に関連した銃は本物ではないのではないかもという人がいるかもしれないが、それはどう見ても本当の銃であること。たとえ高精度模倣銃であっても、中国の法律に違反しているため、フェデックスの今回のミスは法的には責任を免れる余地がない」と、社評はこう決め込んでいる。そのうえ、「フェデックスは中国の法律を遵守し、武器などの危険な禁制品を中国に郵送しない義務がある。それに、フェデックスは小包から銃器という武器を発見する能力も持っているはず。それなのに今回のようなことが起きている。意図的に何かの陰謀に協力しているのか」と、事件性の可能性についても言及した。
また、中国中央テレビ局の報道では、「一日も早く、今回の出来事について真相究明が必要でフェデックスに誠実な対応をしてほしい」と論じる一方、「現在、中国にはすでに「信用できない実体リスト」制度が設けられており、リストに載せられた事に対しては必要なら法律上、行政上のいかなる措置も講じる」とし、フェデックスを処罰することもちらつかせている。
世界規模の民間企業が米中覇権争いの渦の中に巻き込まれているが、今回の出来事はまた謎も多い。
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米国の台湾武器輸出(8月17日)
この数十年で最大規模となる総額80億ドル(約8500億円)に及ぶ66機のF16戦闘機の売却を台湾に行うと報じた。この複数の米国メディアによる報道を日本人としては大きく受け止める必要がある。今年になってから蔡総統は台湾への軍事的威嚇を強める中国を批判した上で「我々には立ち向かうすべが必要だ」と述べ、米国に対し武器売却で一層の協力を求めたが、この要請に今回米国が呼応した形だ。中国は米国の武器売却について「中国の主権と安全保障上の利益を害するものであり、断固反対する。...
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この数十年で最大規模となる総額80億ドル(約8500億円)に及ぶ66機のF16戦闘機の売却を台湾に行うと報じた。この複数の米国メディアによる報道を日本人としては大きく受け止める必要がある。今年になってから蔡総統は台湾への軍事的威嚇を強める中国を批判した上で「我々には立ち向かうすべが必要だ」と述べ、米国に対し武器売却で一層の協力を求めたが、この要請に今回米国が呼応した形だ。中国は米国の武器売却について「中国の主権と安全保障上の利益を害するものであり、断固反対する。台湾への武器売却をやめなければ、中国は必ず強い反応をすることになり、その結果や責任はすべて米国が負うことになるだろう」と猛反発している。中国の言う強い反応とは何を指すのかが非常に気になるところだが、例えば弾道ミサイルの実弾演習や中国の戦闘機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側に侵入するなどの行為を指すのかもしれない。場合によっては中国共産党機関紙・環球時報が書いたように、台湾軍の基地を爆撃するなどといった行為も含まれるのかもしれない。こうした事態に米軍がリアクションを起こした場合、日本の自衛隊は傍観者ではいられなくなる。仮に台湾が中国に併合される事態になれば、第一列島線(九州-沖縄-台湾-フィリピン)が突破されたことになり、日本の地政学的な立場は大きく揺さぶられることになる。東シナ海、南西諸島、沖縄本島へと中国の覇権拡大が広がり、小笠原諸島やグアムを結ぶ第2列島線を突破されてしまう危険性も出てくる。まさに台湾は米国だけでなく日本にとってもチョークポイントなのである。2020年にも武力で中国が台湾を併合するのではという憶測もある中、1月の台湾総統選挙は対米、対中関係のあり方が重要な争点となり、中国支持派が総統選に勝利した場合にはサインひとつで台湾が中国に組み込まれてしまう可能性が高くなり、血を流すことなく第一列島線に風穴をあけられてしまう。台湾総統選はまさしく米中代理戦争と言っても過言ではない凄まじい戦いとなる。
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米中双方が強硬姿勢に転換(8月17日)
(米中覇権戦争に突入秒読みか?)
米中貿易戦争に端を発した米中の対立が為替、安保・安全保障まで拡大し、香港デモや台湾まで巻き込み、打開の糸口は全く見えなくなってきた。トランプ大統領は人民解放軍まで投入した香港デモに対する中国当局の弾圧に対し「香港情勢に懸念している。これ以上暴力的な弾圧は見たくない」と発言した。これに対し中国は内政干渉だと猛反発している。米国は将来的に相応の責任を果たす民主主義的な国家になるものと信じ中国を援助してきたが、大国となった今、中国は米国が思っている方向とはまったく違った独自の方向に進む意思をはっきりと打ち出してきている。...
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(米中覇権戦争に突入秒読みか?)
米中貿易戦争に端を発した米中の対立が為替、安保・安全保障まで拡大し、香港デモや台湾まで巻き込み、打開の糸口は全く見えなくなってきた。トランプ大統領は人民解放軍まで投入した香港デモに対する中国当局の弾圧に対し「香港情勢に懸念している。これ以上暴力的な弾圧は見たくない」と発言した。これに対し中国は内政干渉だと猛反発している。米国は将来的に相応の責任を果たす民主主義的な国家になるものと信じ中国を援助してきたが、大国となった今、中国は米国が思っている方向とはまったく違った独自の方向に進む意思をはっきりと打ち出してきている。どうやら想定していたより早く米中覇権戦争に突入しつつあるようにみえる。
(激化が予想される米中対立・米中双方が強硬姿勢に転換)
米国・トランプ大統領の場合、中国に対する態度は米国大統領選挙の雲行きによって左右されるが、今、共和党内にトランプ大統領の対抗馬がいないことや、民主党対立候補も乱立状態であり、トランプ大統領を脅かす候補が出てきていない。SNS360万人のフォロワーと福音派などトランプ大統領の支持層票さえしっかり固めておけば選挙に勝てるという読みがトランプ大統領にはある。習近平国家主席も北戴河会議で長老から「米国に対し弱腰だ」との突き上げがあり、この会議を境に米国に対し耐え忍ぶ作戦から強く出る政策に転換したようにもみえる。
(今後、米中間で予想されること)
9月1日に第四弾の中国に対する制裁関税を行うが、これに中国が報復措置に出た場合には「究極の報復」を行うとトランプ大統領は中国を威嚇した。「究極の報復」とは何を意味するのだろうか。ファーウェイなど中国企業5社の製品を政府機関が調達するのを13日から禁じたが、これをもう一段進めファーウェイを米国市場から締め出したりすることなどが可能性として考えられる。一方、香港のデモ問題に強い関心を示すトランプ大統領は、近日中に習近平国家主席と電話会談を行うとし、習主席に香港デモ参加者と話し合いの席につくよう促す姿勢を見せているが、この要望は習主席にとっては到底受け入れられるものではない。中国政府は香港デモをテロリストによるものと断定し、容赦ない圧力を加えていく姿勢を鮮明にしているからだ。ましてや今、このタイミングで米国は日本円にして8500億円相当の計66機のF16戦闘機を台湾政府に売却すると米国メディアが一斉に報じており、トランプ大統領と習主席の電話会談すらできるかどうかという雰囲気になっている。報復措置として次に中国が米国に対して行う可能性があるのが米国債の売却やレアメタルの禁輸などである。米国債について言えば、すでに中国は2017年をピークに米国債の保有数を減らし続けており、これを加速化させ米国債の売却を一気に進める可能性がある。米中覇権争いの進行を遅らせることができるのは、11月のAPEC首脳会談で米中首脳会談が行われるかどうかにかかっている。
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