訪欧中のトランプ大統領の思惑どおり、北大西洋条約機構(NATO)諸国に国防費の国内総生産(GDP)比2%までの引き上げを認めさせた。ただ、欧州各国は、同大統領の威圧的態度も、また、国防費増額の対象であるロシアによるクリミア併合違法論に賛同しないという矛盾した姿勢等、大いに不満を持っている。そこで、米ロ関係改善のためとして設定された7月16日の米ロ首脳会談について、トランプ大統領は前のめり気味だが、米国内はもとより、欧州諸国からも批判的な見方が強い。一方、欧米諸国からの経済制裁でかなりダメージを受けているプーチン大統領にとって、トランプ大統領と会談するという事実だけで追い風となると踏んでいる模様である。
7月12日付米
『ロイター通信米国版』:「プーチン大統領にとって、ヘルシンキでのトランプ大統領との会談に臨むだけで大きな収穫」
ドナルド・トランプ大統領は7月16日、欧州歴訪の途上、ヘルシンキ(フィンランド)でウラジーミル・プーチン大統領と首脳会談を持つ予定である。
ロシアは、米国民や同盟国から半ば嫌われ者とされているが、その首脳との会談に積極的なトランプ大統領に対して、米国内外からの批判は少なくない。...
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7月12日付米
『ロイター通信米国版』:「プーチン大統領にとって、ヘルシンキでのトランプ大統領との会談に臨むだけで大きな収穫」
ドナルド・トランプ大統領は7月16日、欧州歴訪の途上、ヘルシンキ(フィンランド)でウラジーミル・プーチン大統領と首脳会談を持つ予定である。
ロシアは、米国民や同盟国から半ば嫌われ者とされているが、その首脳との会談に積極的なトランプ大統領に対して、米国内外からの批判は少なくない。
すなわち、クリミア併合、シリア/アサド政権擁護、更には、2016年米大統領選不当介入容疑と、これら諸問題が何ら解決・改善されない状況下、米大統領がロシア首脳と会うことの意義について懐疑的である。
しかし、ロシアにとっては、悪化の一途を辿っている米ロ関係について、少しでも風向きを換える機会になるのではないかとして、期待されている。
すなわち、プーチン大統領にとっては、会談の中味ではなく、トランプ大統領と首脳談を持ったという事実だけで、地政学的に言って勝利を得ることになるとみられる。
与党・統一ロシア党の傑出した政治家であるアレクセイ・プシコフ上院議員は、米ロ首脳会談の画期的な成果は、米国はロシアを孤立化できないし、無視もできないということが明らかになることである、と語っている。
ロシア外務省に近い外交問題シンクタンク、ロシア国際評議会のアンドレー・コーツノフ議長は、米ロ首脳会談が持たれることで、少なくとも安全保障上、ロシアは米国と対等の立場にあることが証明される、とコメントした。
また、政治問題著者のビタリー・トレチャコフ氏は、ロシア国営テレビの番組で、プーチン大統領は今回、“国際政治初心者”の米首脳に対して、クリミア併合の背景やロシアの政策について噛んで含めるように説明できる機会だと捉えていると言及した。
更に、公正ロシア党のセルゲイ・ミロノフ下院議員は、首脳歴18年のプーチン大統領は、昨年就任したばかりでまだ再選されたこともないトランプ大統領との会談では、間違いなく上座に座って会談をリードすることになろう、と表明した。
ロシアにとって、経済関係の観点からは、中国・インド・欧州との関係の方が大切であろうが、ロシアの政治家にとっては、国際社会におけるロシアの力を米国と対峙することで推し量る傾向にある。
一方、ロシア国民の多くは、今回の首脳会談で、欧米による対ロ制裁の解除等に繋がることはあるまいとみている。
ロシア公共世論センターが7月9日、1,600人の成人に対して行った調査の結果、半分以上が今回の首脳会談で目に見える成果が得られるとは思っていないという。
一方、同日付ロシア『イタル・タス通信』:「ロシア政府、ヘルシンキでの米ロ首脳会談ほど複雑なものはないと表明」
ロシア大統領府のドミートリィ・ペシコフ報道官は7月12日、7月16日に予定されている米ロ首脳会談ほど複雑なものはないとコメントした。
何故なら、トランプ大統領が直前に、ノルド・ストリーム2プロジェクト(注後記)の件でドイツ等を非難するコメントしていることでもあり、米ロ首脳会談での協議事項に両国で折り合えない可能性が大きいからだとしている。
すなわち、同会談に臨むトランプ大統領は7月11日、NATO事務総長と会談した際、米国が多額の国防費を払ってロシアから守っているNATO加盟国が、ロシア企業とのノルド・ストリーム2を支持しているのは矛盾していると批判した。
更に同大統領は、同パイプラインのお蔭でドイツは、60~70%のエネルギーをロシアに頼ることになっており、ロシアにすっかり牛耳られていると言った上に、同プロジェクト事業会社のノルド・ストリーム社の会長にドイツのゲアハルト・シュレーダー前首相が就任していることも不適切だと厳しく非難しているからである。
(注)ノルド・ストリーム2プロジェクト:バルト海海底を経由してロシア・ドイツ間を繋ぐ天然ガスパイプライン敷設計画。ロシア国営企業ガスプロムとドイツ・フランス等の合弁事業として2011年に稼働開始したノルド・ストリームを増強するもので、2019年完工予定。
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ロシアで開催されているサッカー・ワールドカップ(W杯)は、従前に噂された暴動等は発生しておらず、ホスト国ロシアとしてはひとまず安堵しているとみられる。この状況に関してウラジーミル・プーチン大統領は、国際サッカー連盟(FIFA)会長らの表敬訪問を受けて、これまで散々西側諸国から言われたロシアへの悪口が虚偽であることが証明できたとご満悦である。
7月6日付米
『ロイター通信米国版』:「プーチン大統領、ワールドカップのお蔭でロシアの悪口が根拠のないものだと判ったはずとご満悦」
W杯が開催される前、特に米国からプーチン大統領は“害を及ぼす政治家”だと皮肉られ、W杯ホスト国として全く不安でうまくいくはずがなかろうと噂されていた。
しかし、W杯が実際開催されてみると、心配された人種差別問題やフーリガン暴動(熱狂的なサッカーファンによる暴動)も発生しておらず、ロシアを訪れた多くの人たちがロシアの好印象を口にしている。...
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7月6日付米
『ロイター通信米国版』:「プーチン大統領、ワールドカップのお蔭でロシアの悪口が根拠のないものだと判ったはずとご満悦」
W杯が開催される前、特に米国からプーチン大統領は“害を及ぼす政治家”だと皮肉られ、W杯ホスト国として全く不安でうまくいくはずがなかろうと噂されていた。
しかし、W杯が実際開催されてみると、心配された人種差別問題やフーリガン暴動(熱狂的なサッカーファンによる暴動)も発生しておらず、ロシアを訪れた多くの人たちがロシアの好印象を口にしている。
そこでプーチン大統領は7月6日、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長らの表敬訪問を受けて、目下のところのW杯の成功で、“ロシアに関する多くの悪評が嘘であることが証明”されたと喜びのコメントをした。
同大統領は更に、ロシアを実際に訪問した人たちは、ロシアが友好的で手厚くもてなすことに長けた国だということを確信したはずだとも付言した。
インファンティーノ会長も、赤の広場で人々から、ロシアの警官が常に笑みを浮かべていて、道案内等を求めてもとても友好的に接してくれたと喜んでいると言われたことを明かし、“ロシアに対する新たな印象”となっていると語った。
ただ、一方で7月5日、また新たに毒ガス“ノビチョク(旧ソ連が開発した神経ガス)”によるとみられる被害が英国で発生したとして、英政府から責任追及される事態となっている。
英国では今年3月、ロシアの二重スパイとみられる人物とその息女が、ノビチョクとみられる毒ガス攻撃に遭っており、英国等からロシアが糾弾されていた。
なお、ロシア政府は、今年3月の事件も今回の事態についても一切無関係だと主張している。
同日付ロシア『イタル・タス通信』:「プーチン大統領、ロシアを訪れた多くのサッカーファンがソーシャルメディアを通じてロシアの悪評を吹き飛ばしてくれていると表明」
プーチン大統領は7月6日、かつてのW杯スター・プレーヤーらの表敬訪問を受けて、ロシアを訪問している多くのサッカーファンが、ソーシャルメディアを通じて、ロシアに向けられていた多くの悪評が真実と違うことを訴えてくれていると喜んだ。
同大統領は、訪問客らがロシアの温かいもてなしに実際に接し、また、ロシアの良き伝統にも触れて、良い思い出を自国に持って帰ってくれるはずだともコメントした。
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