ルモンド紙によると、IT技術者のファルチアニ氏が、HSBCから持ち出したデータをフランス税務当局に、2008年末に提供したのが発端だった。この人物は、英国HSBCの実行部隊だったスイスの子会社HSBCプライベートバンク(以下HSBC PB)の元従業員である。2009年1月に提訴され、仏裁判所がデータの詳細を調査した。「約3千の在外フランス人が、HSBC PBで所得隠ぺいした事が分かり、“違法な銀行取引と脱税ロンダリング”法人として調査された」と伝える。「フランス、米国、ベルギー、スイスの捜査で、スイスのHSBC PB経由で、英HSBCが壮大な脱税システムを奨励した事が明るみに出た」。
ル・モンド紙はHSBC 問題を長年調査しており、「2014年初めに、大掛かりな国際的脱税を行う銀行の2005から2007年の2年間のグローバル・バンキング・データを入手」したが、単独のスクープにせずに、「ICIJ(国際調査ジャーナリスト連合)に登録される約60の国際的なメディアと共有した」。「世界中の著名人、有力者を困らせるファイルの厳格な扱い」を守るためである。ル・モンド紙は、モロッコの国王モハメッド6世、米俳優のマルコヴィッチ、ニナ・リッチの相続人等、一部の名を挙げるが、「この暴露が国際的な銀行コミュニティを弱体化させ得る」と慎重さもみせる。
『AFP通信』も、「ファルチアニリストには、武器商人や麻薬密売関係、テロ組織の資金提供者、各国の政治家、芸能界のスターが名を連ねる」と報じる。ル・モンド紙は「1兆8060億ユーロが、10万以上の顧客と約2万のオフショア企業から、HSBC 口座経由でジュネーブに移された模様。正確には2006年11月9日と2007年5月31日の間」と、調査員の調査結果を引用し、「ファルチアニ氏のデジタルアーカイブに対応する」と分析する。
このデータを入手したのは、2014年1月28日にルモンド紙が「HSBC リスト:脱税大規模捜査の神話」を発表した数日後だった。「ル・モンド本社に何者かが現れ、2009年以降フランス税務当局が、最高機密で政治権力にも臆さず作成した全ファイルを含むUSBを委ねた」と報じる。「フランス人顧客全員がHSBC PB実行委員会により、パナマか英国領バージン諸島を拠点に不正な所得隠しが奨励され、2005年創設のESD税(貯蓄課税指令)等の欧州租税を逃れた」事が明らかになり、「調査員は別の違反を証明する物的証拠を握る」と伝える。「多くが完全に違法だが、公共の利益を代表する時、名前を明らかにするのか?」とル・モンド紙は問いかける。データのICIJとの共有は、この問いへの回答の一つと言える。2014年春にICIJ持ち込みを決定した。
「HSBC PBとスイス司法当局は初めから異議を唱え, データは窃盗の産物という理由で、仏当局の数値に懐疑的で、フランスとル・モンド紙の調査をばかげていると公言する」。ファルチアニ氏は、2014年12月にスイス連邦に“経済スパイ”、“データ窃盗”、“商業および銀行の侵害”で告発された。しかしル・モンド紙は自信を見せる。「2014年2月の仏調査裁判官二人の結論は、税務当局と和解した多くの口座保有者の聴取で、このファイルの信憑性が検証された。HSBC PBは、破滅的な訴訟をさけるために、同じ事をする準備が出来た様子」と報じる。
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