三菱重工業の加藤顕彦原子力事業部長は、フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、「将来、ロシアから燃料を輸入するのは難しくなるかもしれない。海外から燃料を輸入する限り、常に不安定さが懸念されることに人々は気づいている」と語り、「安定した国産エネルギー源である原子力発電に対する見方を改めた人が多い」と指摘している。
世界第3位の経済大国である日本は、液化天然ガス(LNG)と石油の価格高騰によって悪化した電力危機に陥っている。...
全部読む
三菱重工業の加藤顕彦原子力事業部長は、フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、「将来、ロシアから燃料を輸入するのは難しくなるかもしれない。海外から燃料を輸入する限り、常に不安定さが懸念されることに人々は気づいている」と語り、「安定した国産エネルギー源である原子力発電に対する見方を改めた人が多い」と指摘している。
世界第3位の経済大国である日本は、液化天然ガス(LNG)と石油の価格高騰によって悪化した電力危機に陥っている。日本はLNGの約9%をロシアから輸入しており、西側諸国がモスクワに制裁を加える中、難しい外交的立場に立たされている。ライスタッド・エナジーの電力市場アナリストであるライアン・クロンク氏によれば、加工ウランの4分の1近くをロシアから調達している米国とは対照的に、日本は加工ウランの約55%を西ヨーロッパ諸国から輸入しているという。
『ファイナンシャル・タイムズ』は、三菱重工業の原子力事業部長の発言のように、福島原発事故以来後退してきた日本の原子力産業が今になって発言する勇気を得たことは、日本の原子力談義が変化したことを示している、と伝えている。加藤顕彦原子力事業部長の発言は、岸田首相が今月初めロンドンで、日本は原子力を使って「世界の脱原発の実現に貢献する」と投資家に語った後に出たものである。加藤氏は「政府の姿勢が変わってきている」と述べ、政府が原発の再稼働をさらに強く支持するよう求めた。日本ではすでに2023年までにいくつかの原発が再稼働する計画があり、島根県と宮城県にある原発は、安全検査に合格しているので再稼働の準備が出来ている。
しかし日本は2009年以来、新しい原子力発電所を建設しておらず、代わりに既存の原子炉のメンテナンスとサポートに注力している。三菱重工業にとって重要な収益源の1つは、テロ攻撃やその他の自然災害によって原子炉が破壊された場合に備えて、プラントを安全に停止させるための緊急施設を設置することである。東京に拠点を置くエネルギー・防衛分野のコンサルティング会社Mathyos Advisoryのトム・オサリバン氏は、「日本はエネルギー自給率の向上を切実に必要としている。原子力発電所はサンク・コストであり、2011年以降、十分に活用されていない資産である。原子力発電所がなければ、おそらく電気料金は一気に上昇し、大きな経済的ダメージを受けるだろう。」と指摘している。
一方、日本国民は依然として原子力発電に慎重である。しかし、日本経済新聞社が最近行った世論調査では、安全性が確保されれば原子炉の再稼働を支持するとの回答が53%に達し、福島原発事故以降最も高い割合になった。
米『ブルームバーグ』によると、日本において電炉メーカー最大手の東京製鐵株式会社も、国内の製造業の競争力を復活させるには、さらなる原子力発電が必要不可欠であると述べていると伝えている。東京製鐵の今村清志常務取締役は取材に対し、商品価格の上昇と石炭の段階的な廃止によって、十分な電力を確保することが難しくなっていると述べた。「これは深刻な問題だ」とし「原子力発電の問題をもう一度議論することが重要だ」と述べた。
日本鉄鋼連盟も、経団連と同様に、原子炉の早期再稼働を要求している。岸田首相は先月、エネルギーのほとんどを輸入している日本が燃料価格の上昇と円安に苦しんでいるため、もっと原子力発電の利用を検討する必要があると述べた。
閉じる