北朝鮮情勢を追う・ポンペオ国務長官が7月6日に訪朝か(6月30日)
(ポンペオ国務長官が7月6日に訪朝か)
米国・ポンペオ国務長官が6月12日の米朝首脳会談を踏まえた上で、北朝鮮の完全な非核化に向けた具体的な協議を行うため、7月6日に北朝鮮・平壌を訪問する方向で調整を進めている。この後、7日に東京を訪問し、協議の具体的内容について説明を行うものとみられる。先の米朝共同声明では米国側が北朝鮮に対して体制の保証を約束した一方で、完全で後戻りできない核廃棄CVIDなどの文言が入っていなかったことに加え、米国は8月の米韓合同軍事演習の中止を発表、ポンペオ長官の核廃棄の期限は設けないなどといった発言などもあり、日本の米国に対する信頼が低下していた。...
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(ポンペオ国務長官が7月6日に訪朝か)
米国・ポンペオ国務長官が6月12日の米朝首脳会談を踏まえた上で、北朝鮮の完全な非核化に向けた具体的な協議を行うため、7月6日に北朝鮮・平壌を訪問する方向で調整を進めている。この後、7日に東京を訪問し、協議の具体的内容について説明を行うものとみられる。先の米朝共同声明では米国側が北朝鮮に対して体制の保証を約束した一方で、完全で後戻りできない核廃棄CVIDなどの文言が入っていなかったことに加え、米国は8月の米韓合同軍事演習の中止を発表、ポンペオ長官の核廃棄の期限は設けないなどといった発言などもあり、日本の米国に対する信頼が低下していた。
(水面下で北朝鮮の制裁緩和に動く中国)
こうした中、米国の北朝鮮監視機関38ノースが、寧辺のウラン濃縮施設の屋根に水蒸気のシミができていることが確認されたと発表した。このことは米朝首脳会談の後も北朝鮮の核施設が依然として稼働していたということを意味する。気がかりなのは中国の動きで、先週、北朝鮮船籍のタンカー2隻が、東シナ海の公海上で船籍不明の船に横付けしていることが発見されたが、船籍不明の船はその後中国国旗とみられる旗を掲げたという。さらに中国は28日、北朝鮮に対する制裁緩和に向けた報道声明案を理事国に配布し、水面下で中国が北朝鮮の制裁緩和に向け動き始めている実態が浮き彫りになった形となっている。
(マティス国防長官緊急来日の背景)
米朝首脳会談を経て北朝鮮に何か変化が見られただろうか。残念ながらそうした兆候は見られない。非核化を具体的に進めようとしているようにはとても見えないし、その北朝鮮に対し中国は制裁を緩和させようとさえしている。さらに米国は制裁カードさえ引っ込めて北朝鮮に対し譲歩しているようにさえみえる。日本にとっては日朝首脳会談を実現させ、核問題と拉致問題をセットで解決していくという思い描いている方向にはなかなか進みそうもない状況になっている。こうした中、マティス国防長官が緊急来日し、安倍首相、小野寺防衛大臣とそれぞれ会談を行った。安倍首相との会談では北朝鮮に対しCVIDを求めていく姿勢で一致し、小野寺大臣との会談でマティス長官は在韓米軍の撤退は考えていないと明言し、8月の米韓合同軍事演習の中止は朝鮮半島に平和的な解決をもたらすための決定だと説明するなど、米国に対する日本側の不信感を補うための弁明をしに来日したようにも見える。いずれにせよ7月6日のポンペオ長官の訪朝が日本にとって今後を左右するものとなる可能性が高い。
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ポンペオ国務長官6日に訪朝か(6月30日)
ポンペオ国務長官が7月6日に訪朝すると伝えられた。6月12日の米朝首脳会談後の実務者協議となる。非核化や米兵の遺骨収集作業の話し合いが行われることになろうが、連絡事務所が開設されるか否かも今後の両国の交渉の展開を左右することになる。
非核化に対する米朝の思惑の違いが明らかになってきているが、そうでなくても非核化の交渉には長い時間がかかり、詰めなくてはならない項目は膨大である。交渉を進展させるためには連絡事務所を開設して、常時交渉を行うことが必要になってくる。...
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ポンペオ国務長官が7月6日に訪朝すると伝えられた。6月12日の米朝首脳会談後の実務者協議となる。非核化や米兵の遺骨収集作業の話し合いが行われることになろうが、連絡事務所が開設されるか否かも今後の両国の交渉の展開を左右することになる。
非核化に対する米朝の思惑の違いが明らかになってきているが、そうでなくても非核化の交渉には長い時間がかかり、詰めなくてはならない項目は膨大である。交渉を進展させるためには連絡事務所を開設して、常時交渉を行うことが必要になってくる。ポンペオ国務長官が北朝鮮問題だけに関わっていくわけにもいかないからである。
遺骨収集問題では、遺骨収集のための費用と重機の貸与(供与)が制裁違反になる可能性もあり、一方で北朝鮮が有利な条件を引き出そうとしているため、用意した棺の北朝鮮への搬入もできていないと伝えられている。
また東倉里のミサイル実験場の閉鎖の問題が話し合われるとの報道もある。金正恩委員長が米朝首脳会談で明言していたものであるが、閉鎖の際に、米国人専門家が立ち会うことができるかどうかが争点になる。
これとは別に28日の国連の安全保障理事会に中露が北朝鮮への経済制裁の緩和についての声明案を提出したが、米国が異議を唱えて廃案になった。今回は廃案になったが、今後も、非核化交渉の進展とかかわりなく、中露が北朝鮮への制裁の緩和にむけて動いていくものと見られる。
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南北の協力事業の進展と北朝鮮の人権問題(6月29日)
8月20日~26日にかけて南北朝鮮の離散家族の再会行事が北朝鮮の金剛山で行われる予定であるが、韓国の施設点検団が27日金剛山に向かった。また南北朝鮮の道路連結のための事前調査を8月に合同で行うことも決まった。さらに8月にジャカルタで開催されるアジア大会では合同で入場行進を行うほか、3競技で合同チームが結成されることになった。
このように南北の協力事業が着々と進むなかで、北朝鮮の人権問題は棚上げされた形になっている。...
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8月20日~26日にかけて南北朝鮮の離散家族の再会行事が北朝鮮の金剛山で行われる予定であるが、韓国の施設点検団が27日金剛山に向かった。また南北朝鮮の道路連結のための事前調査を8月に合同で行うことも決まった。さらに8月にジャカルタで開催されるアジア大会では合同で入場行進を行うほか、3競技で合同チームが結成されることになった。
このように南北の協力事業が着々と進むなかで、北朝鮮の人権問題は棚上げされた形になっている。韓国では北朝鮮人権財団事務局の事務所が財政難を理由に閉鎖された。またポンペオ国務長官は23日には「北朝鮮の人権問題への本格的対処は非核化後に」と述べている。そもそも6月12日の米朝首脳会談後の記者会見で、トランプ大統領は人権問題について質問を受けると「話し合ったし、今後も話し合う」と短く答えた後、まるではぐらかすように、米兵の遺骨収集作業について滔々と語りだしている。「金正恩は人権に対しどのように対応すると思うか」と重ねて問われると、「金氏は対応を取りたいと思っていると私は感じる」と希望的観測を述べたにとどまった。
非核化を前に北朝鮮を刺激したくない、ということは理解できる。ただしあまりにも北朝鮮に「忖度」しすぎると北朝鮮に「人権問題は大した問題ではない」との誤ったサインを北朝鮮に送ることになりかねない。人権問題には拉致問題も含まれていることを忘れてはならない。
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北朝鮮“瀬取り”会談後も継続の可能性(6月28日)
外務省は、海上自衛隊の補給艦が北朝鮮船籍のタンカー2隻が先週、東シナ海の公海上で船籍不明の船に横付けしているのを発見。2隻は22日も横付けしているのが確認され、船籍不明の船はその後中国国旗とみられる旗を掲げた。
政府は、瀬取りの疑いが強いとみて、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会に通報するとともに、中国の船が関与している可能性があるとして、中国に対し状況を注視していることなどを表明した。政府は、さきの米朝首脳会談後も北朝鮮による制裁逃れが続いている可能性があるとみて監視を強めることにしている。
非核化の期限(6月27日)
ポンペオ国務長官は「北朝鮮の非核化に期限を設けず」と25日のCNNのインタビューで述べた。米朝首脳会談直後には、同長官が訪朝し、非核化の具体的な手順やスケジュールを決めるとしていた。実際トランプ大統領は米朝首脳会談後の記者会見で「プロセスが始まれば核兵器は使えなくなる。プロセスは間もなく始まる。」と語っていたが、そのプロセスが始まらない。一方で非核化するまで制裁は続けるとも述べていたが、22日に米国は、米国独自の対北朝鮮経済制裁の1年延長を決めている。...
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ポンペオ国務長官は「北朝鮮の非核化に期限を設けず」と25日のCNNのインタビューで述べた。米朝首脳会談直後には、同長官が訪朝し、非核化の具体的な手順やスケジュールを決めるとしていた。実際トランプ大統領は米朝首脳会談後の記者会見で「プロセスが始まれば核兵器は使えなくなる。プロセスは間もなく始まる。」と語っていたが、そのプロセスが始まらない。一方で非核化するまで制裁は続けるとも述べていたが、22日に米国は、米国独自の対北朝鮮経済制裁の1年延長を決めている。
北朝鮮は「経済制裁の解除が非核化の条件だ」といつの間にか条件を変えている。もっとも北朝鮮にすれば、国連の経済制裁はまだ解除されていないものの、米朝首脳会談などの一連の宥和ムードのなかで、中国の経済支援が始まっていることからあまり問題ないのかもしれない。韓国との間でも鉄道や道路の建設の話し合いが行われ、鉄道連結については、実際の建設は制裁措置違反になるので行われないが、事前調査が行われることになった。韓国も経済制裁の隙間をねらって援助をしようとしているように見受けられる。
米国の次の大統領選挙までに非核化の目途をつけたかった米国であるが、実際には非核化に長い時間がかかることから、実現不可能な目標を設定すれば、実現できなかったときに選挙に不利になるから目標を設定しないということかもしれない。しかし実際に交渉しようとして、非核化のハードルの高さに目標値の設定をどのようにすべきか考えているのであれば、拙速に行われた米朝首脳会談のツケは大きいことになる。
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