アマゾンが旭日旗を全面に模した地下鉄の車内広告を撤去(2015/11/26)
大手通販会社のアマゾンが、ネット動画配信サービスを行うドラマの宣伝活動の一環として、ニューヨーク地下鉄の車内の座面を、旭日旗に似せたデザインに全面的に塗り替えた。このことが議論を巻き起こし、結果アマゾンはこの広告を取り下げたことが明らかになった。広告が誰にとって不快なのか、公の交通機関ではじめ許可された広告が取り下げられたいきさつ、今回の事態に対する批判など各メディアは次のように報じている。
11月24日付
『グラント・デイリー』(米)によれば、アマゾン社は「高い城の男」というドラマのネット配信をスタートするにあたり、広告活動のためニューヨークの地下鉄の座面をを旭日旗に似せたデザインに塗り替えたという。このドラマは1962年に発表されたフィリップ・K・ディック氏のSF小説を映像化したものであり、第二次世界大戦で日本、ドイツが勝利し、アメリカが東西に二分され、ドイツと日本による分割統治が行われる世界を描いたものだという。...
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11月24日付
『グラント・デイリー』(米)によれば、アマゾン社は「高い城の男」というドラマのネット配信をスタートするにあたり、広告活動のためニューヨークの地下鉄の座面をを旭日旗に似せたデザインに塗り替えたという。このドラマは1962年に発表されたフィリップ・K・ディック氏のSF小説を映像化したものであり、第二次世界大戦で日本、ドイツが勝利し、アメリカが東西に二分され、ドイツと日本による分割統治が行われる世界を描いたものだという。
ニューヨークの都市交通局の広報担当者であるオーティス氏は、アマゾン社が駅に貼られた260枚のポスターおよび、座面のデザイン全てを撤去する方針であることを発表し、撤去も完了したという。本来ならば、この広告は11月15日から12月14日まで行われる予定であったという。同記事はアマゾン社に取材を申し入れたが、回答はなかったとする。座面のデザインは、ナチス・ドイツ時代に用いられていたカタジロワシの国章や日本の旭日旗をアメリカの国旗と組み合わせたようなデザインで、似たような広告がロンドンでも使われているものの、ロンドンの広告が撤去されるか否かは不明であるという。
この広告に対しては、第二次世界大戦で枢軸国から被害を受けた人々(ユダヤ人など)の感情を逆なでするものだという批判がなされていたという。
前出の都市交通局の広報担当であるオーティス氏によれば、電話による苦情はわずか1件のみで、他のおびただしい数に上る批判はソーシャル・ネットワーク上でのものだったという。同氏は「今回の広告の依頼は都市交通局の中立性確保の基準には適合しており、受理せざるを得なかった。我々は公共機関である以上、感情に基づいて広告の受理・不受理を決めることはできない」と語ったという。この「中立性確保の基準」は今年4月に承認されたものであり、政治的に誤っていたり、誤解を招く恐れのあるもの、性的なもの、喫煙を促すもの、暴力を想起させるもの、および特定の団体や個人を中傷するものは広告として受理しない旨定められているという。
今回の一連の騒動に対しては、批評家から広告の選別に対して偽善的であるとの批判が寄せられているという。というのも、都市交通局は以前、政治活動家の「イスラエル支持、聖戦は不支持」とする広告や、女性の生理用下着の広告、労働者の最低賃金引き上げを目的とする広告を不受理としたという経緯があるからである。
11月25日付
『abc7シカゴ』(米)は今回の広告の目的が「乗客に日本、ドイツの占領下でのアメリカをイメージしてもらうため」だったとしている。また、今回のような、座面を全て広告で覆いつくすような手法は従来の広告方法とは違ったものであったとしている。
広告がなされ、乗客がデザインを目にした直後からソーシャル・ネットワークでデザインの適否が話題となり、ニューヨーク市長であるデブラシオ氏の耳にも入ることになったという。そして同氏は「広告は都市交通局の基準には適合しているかもしれないが、無責任でナチスドイツの被害を受けた人々やその家族、ひいてはニューヨーク市民に対して失礼である。直ちに撤去されるべきだ」とコメントしたという。
「名誉棄損防止組合」ニューヨーク支部のバーンスタイン氏は、今回のケースの最大の問題点は「前置きや脈絡が一切ない状況下で広告がなされたこと」だとする。「例えばこの広告がテレビ番組内でなされたなら、おそらくヒトラー占領下のアメリカなどの説明が入り、広告の意図の説明がつく。しかしこれが電車の中となると、乗客はナチスのシンボルと結合したアメリカ国旗を何の前置きもなく目にすることになり、直感的に嫌悪の念を抱くのだ。しかもそのデザインが車内中に施されていれば、乗客の感情を逆なでするだろう」。
11月25日付
『ブレイトバート』(米)はアマゾン社の広告自体ではなく、今回の都市交通局の取った広告受理の判断を批判している。同記事は前述のイスラエルを支持する内容の広告を不受理としながら、今回の旭日旗に似せた広告を受理したことは結果的に広告が不受理になった者の表現の自由を侵害しているとしている。
同記事は先月ニューヨーク裁判所が、ムスリムの集団による「ムスリムがやってくる」という内容の広告の受理をめぐる裁判で広告を受理すべきとの判断を下したことにも触れている。都市交通局はこの判決を受けて、前述のイスラエル支持の広告の不受理だけを狙い撃ちすべく、基準を改めたのだという。同記事はこれは広告の内容に立ち入りすぎた審査であり、改められるべきだと指摘する。
広告内容の適否の判断は関係者にとって悩ましい問題であろうが、アマゾン社にとって今回の騒動は、賛否両論含めて想定以上の宣伝効果をもたらすことになったのではなかろうか。
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ペルシャ湾沿岸の国々の暑さが深刻な状態に(2015/10/28)
地球温暖化が取りざたされる今日この頃であるが、新たな予測が発表された。このまま地球温暖化が進めば、今世紀末にはペルシャ湾沿の暑さは人間の耐えうる限度を超えるものになるとのことである。各メディアは以下のように報じている。
10月26日付
『ザ・ウィーク』によると、2100年までにペルシャ湾沿岸の国々は健康な人間でも数時間屋外にいられない程の熱気に見舞われるようになるだろうという予測が発表されたことを伝えている。
この予測は「ネイチャー」誌の「気候変動」で発表されたもので、アメリカのロヨラ・メアリーマウント大学のパル氏と、マサチューセッツ工科大学のエルタヒール氏によるものだという。同氏らは研究の中で、気候モデルを予測し、湿球温度計を用いて大気の状態を計測する方法により、人間がどの時点で汗をかき、その汗が蒸発しないかを研究したという。...
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10月26日付
『ザ・ウィーク』によると、2100年までにペルシャ湾沿岸の国々は健康な人間でも数時間屋外にいられない程の熱気に見舞われるようになるだろうという予測が発表されたことを伝えている。
この予測は「ネイチャー」誌の「気候変動」で発表されたもので、アメリカのロヨラ・メアリーマウント大学のパル氏と、マサチューセッツ工科大学のエルタヒール氏によるものだという。同氏らは研究の中で、気候モデルを予測し、湿球温度計を用いて大気の状態を計測する方法により、人間がどの時点で汗をかき、その汗が蒸発しないかを研究したという。これによると華氏95度(摂氏35度)がその温度だったという。
同記事は「ニューヨークタイムズ」の記事を引用し、気候変動のためペルシャ湾沿岸の国々が地球上で最初に、人間にとって耐えがたいほどの暑さと湿度を体験することになるだろうとしている。
湿球温度計を用いて気温を測定し35度を記録することは、10年か20年に一度あるかないかというレベルであり、エルタヒール氏によれば「非常に致命的」であり、とりわけエアコンを持たない人や屋外で働く人、メッカを巡礼する人々には大変危険だという。しかしながら同氏によれば、地球規模で温室効果ガス排出量削減の努力がなされれば、予測された展開を変えることも可能と述べたという。
10月26日付
『CBSニュース』はAPの記事を引用し、最新のコンピューター・シミュレーションを用いて計算した結果、熱指数華氏165度(摂氏73.8度)(熱指数とは、気温と湿度から体感温度を計算する方法)が人体が熱を蒸発させることのできる限界だとしている。今回出された数値は2003年の夏にヨーロッパを襲い、死者7万人を出した熱波とほぼ同レベルだという。
カーネギー研究所の気候研究家であるフィールド氏は今回の研究に関わっていないが、「CBSニュース」の取材に対し「気候変動により現れる恐ろしい現象の中には人類が今まで
全く経験したことのないようなものもある」と述べたという。
10月27日付
『グラント・デイリー』によると、「耐え難いほどの気温上昇」とは単なる例えではなく、文字通り耐え難く死に至るほどのものだとしている。このまま今の温室効果ガスの排出が続けば経済的発展を石油資源に頼ってきた国々は、結果として石油の消費による被害を被ることになるかもしれないとしている。
また、同記事は気温と湿度の関係にも着目している。人間の体は発汗作用により熱に対応しており、汗を蒸発させることにより体の熱を下げている。しかし、気温とともに湿度が上昇すると、発汗作用がうまく機能しなくなり人体の機能を害するのだという。
さらに前出の湿球温度計は空気中の湿度が100%の状態にならない限り、通常は実際の気温よりも低めの値を出すため、湿球温度計で出された今回の予測気温は実際にはもっと高くなる可能性があるとしている。現在湿球温度計の出す値は、夏の最も暑い日でもせいぜい摂氏31度であり、ひどい場合でも35度を超えることはない。この35度という数値は健康な人間にとっても致命的なレベルだという。しかしながら、2100年にはドバイなどのペルシャ湾沿岸地域では夏の平均気温が湿球温度計で31度となり、極端に暑い日には35度を超えるようになるだろうとされている。
クウェートのような乾燥した地域では湿球温度計では人間が生存できる限界内ではあるものの、実際の気温は摂氏60度を記録すると予想されているという。
ただ、未来はお先真っ暗というわけでもなく、今年12月にパリで開催されるCOP21で温室効果ガスの排出がどの程度削減されるかにより、文明が芽生えた地域の、継続した繁栄が可能になることもありうるとしている。
涼しくなってくると地球温暖化という言葉がピンと来なくなるが、喉元過ぎても熱さを忘れてはならないといったところか。
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