<ハイライト>
●国連:人道支援担当幹部、紛争多発地域や貧困国における2021年のCOVID-19感染爆発・犠牲者は昨年以上に急増と警鐘。
●欧州連合(EU):EU委員会(政策執行機関)のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(62歳)、域内のワクチン接種率が1回接種約70%、2回接種約57%と世界トップクラスと強調。
●米国:(1)ジョー・バイデン大統領(78歳)、デルタ株ウィルス蔓延傾向にも拘らずワクチン接種伸び悩みを憂えて、連邦政府職員らにワクチン接種義務付けを検討。
(2)疾病予防管理センター(CDC、1946年設立)、ワクチン接種者間でもデルタ株感染が発生していることから、ワクチン接種済みであっても屋内でのマスク着用を推奨。また、ワクチン接種如何に拘らず、学校の教職員・生徒らの屋内でのマスク着用を要請。
●ロシア(露):保健省、ロシア製スプートニクⅤワクチンに続いて、2回目に英国アストラゼネカ製ワクチン接種することで有効性が増すかにつき臨床試験実施を承諾。
●英国:都市封鎖解除に伴って導入した、新規感染者の濃厚接触者に対する自主隔離措置について、必要不可欠な業務遂行者への制限措置緩和を検討。同措置によって、かかる業務遂行者の人員不足が発生することを懸念したため。
●インドネシア(印尼):7月27日、アジア諸国の中で一日の感染者が最多。また、死者も同国最多記録を更新。そのため、直近3日間で滞在外国人の国外退去が活発となり、既に1万9千人近くが退去。
●ポルトガル(葡):かつての植民地の国々での感染拡大を受けて、ワクチン余剰分を他国から買い付けて追加提供すると発表。
●タイ(泰):保健当局、首都バンコクでの中等~重症者急増で病床ひっ迫危機のため、軽症者は医療従事者を随行させて患者の出身地へ鉄道搬送する措置を開始。必要に応じ、今後バス、ワゴン車、飛行機を使っての搬送も検討。
●韓国:ソウル等大都市圏外でも厳しい行動制限措置を講じることとしたものの、7月28日の全国の感染者が最多記録を更新。
●中国:(1)東端の江蘇省(チャンスー)における新規感染者急増に伴い、同省政府が省境に検問所を設け、省外に出ようとする乗用車・貨物車等の運転手に48時間内の陰性証明書携帯を義務付け。
(2)中国国内では既に15億回分のワクチン接種済みであるが、感染力の強いデルタ株の感染者が急増中。
<国連>
・人道支援担当のラメッシュ・ラジャシンガム副事務総長は7月26日、紛争多発地域や貧困国における2021年のCOVID-19感染爆発・犠牲者は昨年以上に急増と警鐘。
・国連安全保障理事会において発言したもので、同副総長は、ワクチン配布不足、各国での感染防止対策緩和、デルタ株ウィルスの蔓延のため、世界の4分の3の国々が人道支援を必要とする結果となっていると強調。
・更に、そのうちの3分の1の国では、“昨年比、感染者及び犠牲者の数が少なくとも3倍
“になっているとも付言。
<EU>
・EU委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は7月27日、域内のワクチン接種率が1回接種約70%、2回接種約57%に達していると表明。
・同委員長は、“これは、ワクチン接種で世界をリードしていることを表す”と強調。但し、猛威を振るうデルタ株ウィルス感染防止を怠らないよう付言。
・EUは今年初め、ワクチン接種率が低調であることに対して非難の声。
<米国>(感染者3,460万3,433人、死者61万6,040人、致死率1.8%)
(1)ジョー・バイデン大統領は7月27日、デルタ株蔓延傾向にも拘らずワクチン接種を拒否する人が依然多いことを憂えて、全連邦政府職員にワクチン接種を義務付けることを検討中と発言。
(2)疾病予防管理センターは7月27日、ワクチン接種者間でもデルタ株感染が発生していることから、ワクチン接種済みであっても屋内でのマスク着用を新たに推奨。また、ワクチン接種如何に拘らず、学校の教職員・生徒、また学校訪問者も屋内でのマスク着用を要請。
<ロシア>(感染者617万2,812人、死者15万5,380人、致死率2.5%)
・保健省は、ロシア製スプートニクⅤワクチンに続いて、2回目に英国アストラゼネカ製ワクチン接種することで有効性が増すかにつき臨床試験実施を承諾。
・7月26日より、まず150人のボランティアで臨床試験を開始。なお、両ワクチンは、同じ製法技術を用いて生産されている。
・当局は昨年、2回ともスプートニクⅤワクチン接種を奨励していたが、同ワクチン製薬会社は11月、1回目に同社製ワクチン接種、そして2回目にアストラゼネカ製ワクチン接種によって、後者のワクチン効果が増加する可能性を示唆。
<英国>(感染者574万5,526人、死者12万9,303人、致死率2.3%)
・政府は、都市封鎖解除に伴って、新規感染者の濃厚接触者に即時に自主隔離するよう警告を発するアプリを導入。
・同アプリは既に約2,600万人がダウンロード済みであるが、同警告を受けた濃厚接触者は10日間の自主隔離が義務。
・しかし、この結果、必要不可欠な業務遂行者も濃厚接触者となった場合、かかる業務遂行者の人員不足が発生することが懸念されるため、政府は7月27日、これらの人への適用緩和を決定。
・対象となるのは、(元々対象となっていた医療従事者の他)食品業者、配送業者、国境管理業務者、警官、消防士に加えて、ゴミ収集業者、刑務所看守、獣医、収税人、防衛業務担当者らで、自主隔離の代わりに毎日の防疫検査受診することで業務続行が可能。
<インドネシア>(感染者323万9,936人、死者8万6,835人、致死率2.7%)
(1)7月27日、一日の感染者が4万5,203人となりアジア諸国の中で最多。また、同日の死者も2,069人と同国最多記録を更新。そのため、直近3日間で滞在外国人の国外退去が活発となり、既に1万9千人近くが退去。
(2)かかる背景もあって、既に数ヵ国が、インドネシアからの渡航者の入国拒否あるいは制限措置を決定。
<ポルトガル>(感染者95万6,985人、死者1万7,307人、致死率1.8%)
・かつてポルトガルの植民地だったアフリカの5ヵ国(アンゴラ、カーボベルデ、ギニアビサウ、モザンビーク、サントメ・プリンシペ;いずれも1973~1975年にポルトガルから独立)及び東南アジアの東チモール(1975年一旦独立、その後インドネシアに占領されて主権回復は2002年)における感染拡大を受けて、ワクチン余剰分を他国から買い付けて追加提供すると発表。
・外務省のアウグスト・サントス・シルバ大臣(64歳)は、当初、100万回分を予定していたが、それでは不十分と判断し、300万回分に増やすこととし、不足分を他国から買い付けると発表。
・これに対して、同国訪問中のハンガリーのシーヤールトー・ペーテル外務・通商大臣(42歳)が7月27日、英国アストラゼネカ製ワクチン20万回分を提供すると表明。
・ハンガリーは、EU調達プログラム内でのワクチン手当てに加えて、独自にロシア製スプートニクⅤワクチンや中国のシノファーム製ワクチンを手当て済みであったため、他国へのワクチン提供に余裕。
<タイ>(感染者54万3,361人、死者4,397人、致死率0.8%)
・保健当局は7月26日、首都バンコクでの中等~重症者急増で病床ひっ迫危機のため、軽症者は医療従事者を随行させて患者の出身地へ鉄道搬送する措置を開始。
・軽症患者及び随行医療従事者の100人余りが、防疫措置が取られた客車で、患者それぞれの出身地まで送り届けられ、それぞれの街の医療従事者に引き渡し。
・保健省のアヌティン・チャーンウィーラクン大臣(54歳)は、“バンコクの病院に集中治療が必要な重症者がゼロとなるまで、かかる措置を継続する”と表明。
・同大臣は、必要に応じ、今後バス、ワゴン車、飛行機を使って、感染がひどくない地域への搬送も検討と付言。
<韓国>(感染者19万3,427人、死者2,083人、致死率1.1%)
・当局は7月27日、デルタ株による感染拡大が続いていることから、ソウル等大都市圏に続いて、それ以外の地域にも、これまでより厳しい行動制限措置を講じることを決定。
・しかし、7月28日の全国の感染者が1,896人と、7月22日に記録した1,842人の最多記録を更新。
<中国>(感染者9万2,605人、死者4,636人、致死率5.0%)
(1)東端の江蘇省(チャンスー)における新規感染者急増に伴い、同省運輸局は7月28日、高速道路上の93ヵ所に検問所を設け、省外に出ようとする乗用車・貨物車等の運転手に48時間内の陰性証明書携帯を義務付け、不携帯の人の通行は禁止とする措置。
(2)中国国内では既に15億回分のワクチン接種済みであるが、感染力の強いデルタ株の感染者が急増中。
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米中二大国は、貿易紛争・新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行・人権問題・南シナ海の制海権等々でことごとく対立している。そしてこの程、両国間の鍔迫り合いが宇宙空間にも拡大しようとしている。
6月29日付
『CNBCニュース』:「中国はかつて宇宙への進出など夢物語としていたが、今や火星探検ミッションを計画する程進歩」
1957年、ソ連が世界で初めて人工衛星・宇宙船スプートニク2号(イヌを搭載)の打ち上げに成功して以来、米ソ間の宇宙開発競争が激化した。
その当時、中国の毛沢東初代国家主席(マオ・ツォートン、1893~1976年)は、“中国は宇宙に芋さえ運んでいくことはできない”と述べていたという。
しかし、六十有余年後の現在、習近平第7代国家主席(シー・チンピン、68歳、2013年就任)は、今月初めに同国で初めて中国独自の宇宙ステーションに到達して乗り込んだ3人の宇宙飛行士を称賛している。
毛国家主席の発言以来、中国は着々と宇宙開発を進め、人工衛星を打ち上げ、人間を宇宙に送り、そして現在は、火星に宇宙基地を建設しようと画策している。
この試みは、7月1日に創立100周年を迎える中国共産党にとって、大躍進の成功例の一つに数えられる。
かくして、かつての米ソ宇宙開発競争が、今後は米中間で繰り広げられることになる。
英国ノーザンブリア大(1969年設立の国公立大学)国際宇宙法専門のクリストファー・ニューマン教授は、“習国家主席は、宇宙開発において他先行国を追い抜き、2045年までに宇宙空間における先進国になるという「中国の夢」を実現する、と宣言している”とし、“この大方針の下、宇宙空間における世界で唯一の科学・技術大国となるべく全てを注ぎ込んでいる”とコメントしている。
<宇宙開発に挑む理由>
中国は今年3月、宇宙は“新たな技術開発を繰り広げる場所”だとし、“宇宙の起源と進化”の研究に注力していくとぶち上げた。
ロンドン宇宙法・政策研究所のザイード・モステシャー専務理事及びクリストフ・ビーチル研究員によると、これには別の見方があって、“国家安全保障や社会経済発展の分野でしのぎを削る米中両国にとって、宇宙分野での優位性確立も最重要課題であるからだ”という。
専門家は、宇宙戦争に発展する可能性は低いとしながらも、地球外での活動は地球上の軍事行動の助けになることは十分考えられるとする。
また、モステシャー及びビーチル両氏は、“米中両国は月や火星探検活動を通じて、自国民や世界に対して洗練された技術力を見せつけることで、国内及び国際社会での存在感、国家活動としての正当性並びに国際社会への影響力を高めていこうとしている”と分析している。
<中国の宇宙開発の野望>
中国の直近の技術進歩は著しい。
例えば、昨年6月には、米政府が開発・運用している全地球測位システム(GPS、1993年運用開始)に対抗して、北斗衛星測位システム(Beidou、2012年運用開始)を完成させた。
12月には、月で採取した石を持ち帰るという同国初のミッションを成功させている。
そして今年5月、前述せるとおり、自国開発した宇宙ステーションに初めて3人の宇宙飛行士を送り込むことに成功した。
更に中国は、火星探検に注力するとし、同じく5月に火星への無人宇宙船の着陸を成功させた。
そして、2033年には有人宇宙船を送り込むとも宣言している。
<米中間の宇宙における鍔迫り合い>
米中両国は、半導体から人工知能の分野において優位性を取るべく競争している。
そして、宇宙開発についても、これまでは米国が先行していたが、今後は新たに競争が激化する分野となる。
ジョージ・ワシントン大(1821年設立の私立大学)附属のエリオット国際関係大学院(1898年設立)のスコット・ペイス宇宙政策研究所長(62歳)は『CNBC』のインタビューに答えて、“宇宙開発全般では米国の優位性に変わりはないが、中国がものすごい勢いでその差を詰めてきている”とコメントした。
同所長は更に、“米国は宇宙開発政策について明確なビジョン、有能な同盟国やパートナーを有しており、中国の付け入る隙は中々ないと思われるが、今後米国が如何に迅速かつ良好な計画を立案・実行していけるかにかかっている”と付言している。
ただ、米中間の政治的齟齬・対立構造が、宇宙空間にも及ぶ可能性がある。
それは、宇宙開発に関し公平かつ責任の伴う国際ルール作りを目指して、米航空宇宙局(NASA、1958年設立)主導で昨年成立したアルテミス合意(注後記)について、米国の他に日本・英国・オーストラリア・カナダ・イタリア・ルクセンブルグ・アラブ首長国連邦が署名しているが、中国はこれに応じていないからである。
ノーザンブリア大のニューマン教授は、“地政学的な二大国の宇宙開発に関わる二極分化は、今後の人類の宇宙開発活動にとって重大な脅威となる恐れがある”とコメントした。
すなわち、同教授は、“両国間の不一致によって、スペースデブリの削減や地球外の資源の搾取問題等を解決することが益々困難になるからである”と付言した。
(注)アルテミス合意:月や火星などの宇宙探査や宇宙利用に関する基本原則を定めた国際的な合意。2020年10月に日本、米国、英国など8ヵ国の署名により成立。昨年から今年にかけて、ウクライナ、韓国、ニュージーランド、ブラジルが署名し、合計12ヵ国が合意。1967年発効の宇宙条約(中国含め130ヵ国以上が署名・批准)を踏まえ、宇宙の平和利用やスペースデブリの削減、歴史的遺産の保護、国家間の干渉の防止を求めている。
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