10月7日付
『CBSニュース』では、アメリカ主導で行われてきたTPP交渉のメリットは
参加している12か国に平等に行き渡ってはいないと報じられている。
参加国の中で最もメリットを享受するのはヴェトナムであるという。同国では衣類や
靴の製造業が現在飛躍的に成長しており、アメリカをはじめとする参加国間の関税が
撤廃されれば、大きな利益を上げるだろうとされている。中には日本の自動車関連産
業やマレーシアの電子機器および半導体産業もTPP交渉のメリットを享受するとみる
専門家もいる。...
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10月7日付
『CBSニュース』では、アメリカ主導で行われてきたTPP交渉のメリットは
参加している12か国に平等に行き渡ってはいないと報じられている。
参加国の中で最もメリットを享受するのはヴェトナムであるという。同国では衣類や
靴の製造業が現在飛躍的に成長しており、アメリカをはじめとする参加国間の関税が
撤廃されれば、大きな利益を上げるだろうとされている。中には日本の自動車関連産
業やマレーシアの電子機器および半導体産業もTPP交渉のメリットを享受するとみる
専門家もいる。
IHSグローバル・インサイトのアジア太平洋地域チーフエコノミストであるラジブ・
ビスワス氏は「TPPはヴェトナムにとって大きなチャンスであり、とりわけアメリカ
へ衣料品を輸出する国々の中でも抜きん出ることができるかもしれない」と語ったと
いう。ヴェトナムの台頭はメキシコの衣料品や靴の製造業、さらにはカナダやアメリ
カの同産業を圧迫するものであるが、この3か国は農産業や機械産業、電子機器分野
で利益を享受するという。
このTPP協定によりヴェトナムへの海外資本の流入は加速するとみられているとい
う。サムスン電子などは永年中国に工場を構えてきたが、近年高騰する人件費を少し
でも抑えるため、ここ数年はヴェトナムに工場を建設中だという。ビスワス氏らによ
れば、ヴェトナムはTPP参加国の中で最もバランスの良い経済成長を遂げており、こ
れはひとえに一人当たりのGDP(国内総生産)が比較的低いためだという。アメリカ
のコンサルティング会社ユーラシア・グループの調査結果によると、ヴェトナムは
2025年にはTPP協定がなかった場合と比して25%成長し、360億ドル(約4.3兆円)規模
のものになり、輸出だけでみると28%の伸びになると予測されている。
海外資本のヴェトナムへの流入は他の国々の利益を侵食するだろうとの見方もある。
製造業の中でもとりわけ衣料品メーカーは「商品の材料もヴェトナムで調達しなけれ
ばならない」という不安から、競って生産の一部をヴェトナムに移行しているとい
う。ビズワス氏によると「糸や布といった製造の初期段階の拠点も次第にヴェトナム
に移りつつある。これは総生産高を押し上げるもので、大きな資本移動が起こってい
るといえる」という。
香港に拠点を構え、アメリカの名だたる衣料品メーカーと製造委託契約を結んでいる
会社の社長は
『CBSニュース』の取材に対して「TPPにより製造場所を移さなければな
らなくなるが、会社の純利益は現状維持か、ともするとマイナスになるかもしれな
い」と語ったという。「我が社としてもヴェトナムで製造したいのは山々だが、異国
の地で今までと同様の競争力を確保することは難しい。商品の納入先は関税低減のメ
リットを最大限要求してくるだろうから我々の利益は少ないだろう」。
マレーシアも今回のTPP協定により恩恵を受けるとみられている。産業大臣のムスタ
ファ・モハメド氏によると、マレーシアは生地や衣類ではもちろん、より高い付加価
値産業である半導体や集積回路では大きな利益が見込めるという。前出のユーラシ
ア・グループによると、マレーシアはエレクトロニクス産業の鍵を握っており、TPP
批准により同国の経済は2025年には現在より5.6%成長するとみられるという。
日本もTPPにより自動車関連産業の外国市場参入の間口を広げられており、2025年に
は現在より1億500万ドル(約126億円)のGDPの増額が見込めるという。
10月6日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』によると、ヴェトナムはTPPを大いに歓迎し
ており、すぐにでも批准されるだろうと伝えている。ヴェトナムの前国会議員である
グェン・ミン・トゥイ氏は「ヴェトナムの貿易相手国は中国に偏っており、TPPは中
国への依存を減らし多様な貿易相手を確保するという点で歓迎すべき」と語ったとい
う。ヴェトナム統計局によれば今年9月までのヴェトナムの貿易相手国は中国が1位
で、対中国貿易黒字は5000万ドル(約60億円)だという。
10月7日付
『バリュー・ウォーク』(アメリカ)は、クレディ・スイスの分析を引用
し、企業にとって流動的な資金調達ができないと工場移転も困難でありTPPの直接の
利益を享受することは難しいが、一定の波及効果は望めるとしている。例えば金融業
や消費、資産などには良い影響を及ぼすだろうとしている。ただ、ヴェトナムへの資
本流入により今回TPPに参加していないタイは資本の大量流出という大きな打撃を受
ける可能性があるとしている。
また、マレーシアに関しては2018年までは目に見える発展は望めないが長期的にはメ
リットをもたらすだろうとの専門家の分析を掲載している。
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