アメリカや世界における人々の問題意識や意見、傾向を調査するシンクタンク「ピュー研究所」の分析によると、1970代からの比較調査で今年、いわゆる「中産階級」層が過半数を割ったと発表している。中産階級が減った代わりに、上位層が増えた背景には、高学歴化や女性の社会進出が進み、株やITベンチャーで高所得層が増えた事、低所得層の増加には、移民や未婚、シングル家庭の増加など人口動向にも要因がみられるという。中産階級の変化は来年の選挙戦にも少なからず影響がみられるだろうと各紙では報道している。
12月9日付け
『Pew Research Center』ピュー研究所は、「中流米国人縮小」と題して中流家庭が半数を割ったとの研究結果を発表している。アメリカ経済40年以上の大半を占めてきたアメリカの中産階級は、現在上位層・下位層とほぼ数が一致してきている。ピュー研究所による政府のデータの分析結果によると、2015年初頭、成人男女のうち1億2080万人が中産階級層で、上位・下位所得層を合わせた数の1億2130万人を上回ったと報道している。
上位所得層の割合が1971年からは増加しているおり、ある意味この変動は経済発展を表す。
1971年以降国の総世帯収入は、実質的に高所得層へシフト、2014年(1971年の29%から)49%と上昇した。アメリカの中産階級に関するニュースがすべて悪いわけではない。中産階級の増加は上位所得世帯の伸び率には至らないが、1970年以降長時間にわたって34%ゆっくりと上昇、下位所得世帯の28%よりは伸び率は大きい。
これらの結果は、米国勢調査局と知事の連邦準備制度理事会からのデータをピューリサーチセンターが分析したものである。当研究は3人世帯を基準とし、所得層を3階層に分けて分析している。
アメリカの中産階級の動向は来年2016年の大統領選挙の候補者の間で経済政策の要となる。政治家たちは賃金の上昇と所得の不平等を改善する最善の方法を議論し合うこととなる。一方、バラク・オバマ大統領は、彼の経済政策を説明するのに"中産階級の経済”という言葉を使用しており、多くの先進国が求める経済の起爆剤が多くの中産階級によりもたらされるという新しい研究もなされている。
また当分析結果によると、高齢者の貧困率は24.6%から10%に減少、社会保障の充実が主な要因であり、18~29歳の若者は低所得層が増加。大卒者での変化はほとんど見られず、大卒未満はより低い層へシフト、高卒者層は所得が最も下がった。共稼ぎの夫婦を筆頭に、既婚家庭の所得が上昇、未婚者では下降した。
人種別では、白人とアフリカ系アメリカ人合算では所得は上昇、ヒスパニック系は下がった。アフリカ系アメリカ人の所得は上昇したが、白人には及ばなかった。ヒスパニック系の下層化は、移民の増加にも要因があるとしている。
12月9日付け
『Los Angeles Times』は次のように報道している。
春のギャラップの世論調査では51%の米国人成人が自分を中産階級か上位層だと答え、48%が低所得層または労働階級だと回答している。2008年には63%が同様の調査で中産階級だと答えた。
ニューヨーク大学政治学教授パトリック・イーガン氏はピュー研究所とギャラップの調査から、「国民は所得の再分配にさらに寛容になっている。米国民は概して全階層への福祉に消極姿勢であるが、低所得者層だと自認する層が増えると政治はそのような方向に行く」と述べている。また億万長者共和党のドナルド・トランプ氏の支持層の多くは中産階級で主に大学教育を受けていない層であり、彼らの中産階級としての安定が奪われるとなると政府や移民に不満を持つだろう。」と述べている。
ピュー研究所の調査によると、中産階級の減少の原因として、高学歴で高いスキルが求められる職の台頭や輸入品との競争により製造業が衰退したことが上げられ、また低スキルの移民が増えたという人口変動にも要因があるとしている。
12月9日付け
『Wall Street Journal』は次のように報道している。
実質は過去5年かわっておらず、収入と富が上位階級に集中したためだと分析。
ピュー研究所のラケシュ・コチャー氏は、高スキルの労働者が求められ、低スキル低学歴の人だと取り残されるだろう、と語る。
中産階級の落ち込みは収入格差を焦点にしたバーモント州バーニー・サンダース上院議員をはじめとする来年の大統領選に影響を与える。
ウォールストリートジャーナルとNBCニュースによる1月の調査によると、47%の回答者が(共和党より民主党が遥かに力を入れている)収入格差是正を政府に求めると回答している。
今回の分析報告によると、昨年の所得は、低所得層は3万1000ドル以下、、3人世帯の中流下位層では3万1000ドル~4万2000ドル、中流上位層では12万6000ドル~18万8000ドル、上位層は18万8000ドル以上となった。
1971年に61%だった中産階級は今年50%まで落ち込んだ。上位層は14%から21%へ増加、しかし逆に低所得者層は71年の29%から今年25%に減少した。
現在20%(71年は16%)の米国成人が低所得者層にあたる。対象外となるのは65歳以上の人で40年超低所得者層が少ない。理由として現役で働く高齢者が増え社会保障制度の恩恵を受けているためだとされる。
閉じる
8月5日、米国ピュー研究所(Pew Research Center)は、2015年3月から5月の2ヵ月間、40ヵ国で約4万5千人を対象に実施したロシアおよびプーチン大統領に関する好感度調査の結果を発表した。
(詳細は下記URLを参照:http://www.pewresearch.org/)
その調査によると、世界はロシアおよびプーチン大統領の対外政策を支持しておらず、尊敬もしていない。...
全部読む
8月5日、米国ピュー研究所(Pew Research Center)は、2015年3月から5月の2ヵ月間、40ヵ国で約4万5千人を対象に実施したロシアおよびプーチン大統領に関する好感度調査の結果を発表した。
(詳細は下記URLを参照:http://www.pewresearch.org/)
その調査によると、世界はロシアおよびプーチン大統領の対外政策を支持しておらず、尊敬もしていない。ロシアに対し、平均で僅か30%が好感度を抱いているに過ぎず、ほとんどの国で米国を下回っている。さらに、プーチン大統領が国際関係において正しく行動していると考えているのは平均24%にしか過ぎず、オバマ大統領への信頼度よりはるかに低い。
ロシアに最も好感を持つ国はベトナム(75%)であるが、半数以上が好意を抱いている国は40ヵ国中ガーナ(56%)と中国(51%)を含め3ヵ国のみである。また、プーチン大統領への信頼度が半数を超えているのはベトナム(70%)と中国(54%)の2ヵ国だけで、スペイン(6%)、ポーランド(9%)、ウクライナ(10%)、フランス(15%)等の国では同大統領への不信感が相当強い。一方で、ロシア国内でのプーチン大統領への信頼度が88%と非常に高いことは注目に値する。日本では、ロシアへの好感度が21%、プーチン大統領への好感度は22%と、韓国(各46%、27%)などと比較しても低い結果となっている。
『ブルームバーグ・ビュー』のレオニド・ベルシドスキー論説員は、8月5日、ビュー調査について次のように解説している。それによると、世界の目から見てプーチン大統領評判は、ロシアよりも悪い。同大統領への評価はアフリカが32%と最も高く、ヨーロッパが15%と最低であり、中東を含むすべての国でオバマ大統領に負けている。
一方、本年2月、ケリー米国務長官が上院小委員会で「ロシアは冷戦の時代以来最もあからさまで広範な宣伝活動を行っており、それを阻止しないためうまく成功している」と証言している。これに関しては、「ロシアは毎年5億ドル以上を投じ、RTテレビを通じ不和の種を流布し視聴者を欺く謀略放送を流している」との別の報告もある。さらに、プーチン大統領は、ロシア国内で統制下にある広範なメディを通じ、多額の資金を使って宣伝活動おこない効果をあげている。多くのロシア人が(一部の米国人も含め)「昨年夏にマレーシア航空機を撃墜させたのはウクライナであり、ロシアは世界中の謀略と戦っている」と信じているのはこのためである。
欧米では、ロシアのメディア操縦への対抗としてロシア国内向への報道を強化する動きがあるが、その効果は疑わしい。ロシア人の西欧に対する態度は、西欧のロシアに対するよりも更に悪化している。2013年には51%のロシア人は米国に好感を抱いていたが今や15%まで落ち込んでいる。ドイツに対しても同様で78%から35%に半減している。そのような状況で、西側によるどのようなメディア戦略も、ロシア人にとっては母国と大統領を誹謗するだけと映る。プーチンは実にうまくロシアを他と孤立させつつ、国内では外圧によるロシア包囲を喧伝している、とベルシドスキー論説員は解説する。
閉じる