2月26日に実施されたイランの総選挙で、穏健派が議会と次の最高指導者を選出する専門家委員会で過半数を獲得し、強硬派は大きく後退した。しかし、防衛委員会が選挙前に立候補者の資格審査をおこない、改革派の多くが立候補資格をはく奪されているため、今回の選挙結果によってイランの民主化が大きく進展するとの見方は少ない。
29日の
『CBSニュース』によると、イラン政府が発表した最終集計では、社会的自由や西側との関係拡大を求める改革派が85議席、核合意を推進した保守穏健派が73議席を獲得し、合計で議会290議席の過半数を制した。
・核合意に反対した強硬派は100議席から68議席に後退した。5議席は宗教少数派が獲得し、残る59議席は4月頃に予定される決戦投票で決まる。
・また、穏健派はアヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者の後任を決める専門家委員会の88議席のうち、過半数の59議席を獲得した。...
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29日の
『CBSニュース』によると、イラン政府が発表した最終集計では、社会的自由や西側との関係拡大を求める改革派が85議席、核合意を推進した保守穏健派が73議席を獲得し、合計で議会290議席の過半数を制した。
・核合意に反対した強硬派は100議席から68議席に後退した。5議席は宗教少数派が獲得し、残る59議席は4月頃に予定される決戦投票で決まる。
・また、穏健派はアヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者の後任を決める専門家委員会の88議席のうち、過半数の59議席を獲得した。
・一方、アヤトラ・ジャナティ氏など一部の大物強硬派も議席を確保した。ジャナティ氏は防衛委員会の委員長であり、今回の選挙に当たって改革派候補3000人の審査をおこない、200人しか立候補を認めなかった。
2月29日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、イランの総選挙でロウハニ大統領と穏健派が議席を伸ばし躍進したと報じている。
・イランで改革派大統領が誕生して3年が経ち、強硬派は核合意で勢いを得た穏健派を前に後退した。強硬派は未だほとんどの重要な地位や政府機関を押さえているが、今回の総選挙での勝利は、イランがより穏健な政治体制に向けて緩やかではあるが着実に進化していることを示している。
・強硬派は、司法や公安、経済政策などを掌握しているが、穏健派や親政府派の勝利によってロウハニ大統領は、国内経済の自由化や対外的な緊張緩和を更に進めやすくなる。
・総選挙は穏健改革派の大勝利であったが、政府支持者も強硬派も共にイラン社会が大きく変革することを期待するのは間違いだと語る。
・改革を唱えて当選した立候補者の多くが実際は慎重派であると見られる。法制度や思想面での急激な変革を主張していた改革派のリーダーらは、投獄中か選挙立候補を禁止されている。
29日付
『ブルームバーグ・ビュー』は、“イランの選挙はマジック”という見出しで、今回の総選挙の結果を次の通り評価している。
・イランの選挙について、「BBC」や「AP」などの大手メディアは改革派が強硬派に勝利したと報道しているが、惑わされてはならない面がある。イランの防衛委員会は1月、改革主義者らの被選挙権をはく奪したが、イラン政治の“マジック”によって、以前の強硬派が今は改革派になっているのだ。
・例えば、イランの民主改革派から活動家を殺害したとして非難されている2人の元諜報機関員は、ハメネイ大統領派として次期最高指導者を決める専門家委員会へ立候補している。また、ロウハニ大統領のリストにある2人の候補者は改革派に入るよう頼まれた覚えはなく、保守派であるハメネイ最高指導者の派閥であると語っている。
・ある識者は、改革派と見做されている者のうちの多くは、防衛委員会が改革派の立候補資格をはく奪した後、改革派のリーダーらから穴埋めとして公認された穏健派にすぎないと述べている。
・外国人がこの選挙を理解するうえで大事なことは、イランの民主化の勝利を意味するものではないという点である。しかし少なくとも、真の改革者らがイランの政界でフェアに戦える日を実現していくためには重要なことである。
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8月5日、米国ピュー研究所(Pew Research Center)は、2015年3月から5月の2ヵ月間、40ヵ国で約4万5千人を対象に実施したロシアおよびプーチン大統領に関する好感度調査の結果を発表した。
(詳細は下記URLを参照:http://www.pewresearch.org/)
その調査によると、世界はロシアおよびプーチン大統領の対外政策を支持しておらず、尊敬もしていない。...
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8月5日、米国ピュー研究所(Pew Research Center)は、2015年3月から5月の2ヵ月間、40ヵ国で約4万5千人を対象に実施したロシアおよびプーチン大統領に関する好感度調査の結果を発表した。
(詳細は下記URLを参照:http://www.pewresearch.org/)
その調査によると、世界はロシアおよびプーチン大統領の対外政策を支持しておらず、尊敬もしていない。ロシアに対し、平均で僅か30%が好感度を抱いているに過ぎず、ほとんどの国で米国を下回っている。さらに、プーチン大統領が国際関係において正しく行動していると考えているのは平均24%にしか過ぎず、オバマ大統領への信頼度よりはるかに低い。
ロシアに最も好感を持つ国はベトナム(75%)であるが、半数以上が好意を抱いている国は40ヵ国中ガーナ(56%)と中国(51%)を含め3ヵ国のみである。また、プーチン大統領への信頼度が半数を超えているのはベトナム(70%)と中国(54%)の2ヵ国だけで、スペイン(6%)、ポーランド(9%)、ウクライナ(10%)、フランス(15%)等の国では同大統領への不信感が相当強い。一方で、ロシア国内でのプーチン大統領への信頼度が88%と非常に高いことは注目に値する。日本では、ロシアへの好感度が21%、プーチン大統領への好感度は22%と、韓国(各46%、27%)などと比較しても低い結果となっている。
『ブルームバーグ・ビュー』のレオニド・ベルシドスキー論説員は、8月5日、ビュー調査について次のように解説している。それによると、世界の目から見てプーチン大統領評判は、ロシアよりも悪い。同大統領への評価はアフリカが32%と最も高く、ヨーロッパが15%と最低であり、中東を含むすべての国でオバマ大統領に負けている。
一方、本年2月、ケリー米国務長官が上院小委員会で「ロシアは冷戦の時代以来最もあからさまで広範な宣伝活動を行っており、それを阻止しないためうまく成功している」と証言している。これに関しては、「ロシアは毎年5億ドル以上を投じ、RTテレビを通じ不和の種を流布し視聴者を欺く謀略放送を流している」との別の報告もある。さらに、プーチン大統領は、ロシア国内で統制下にある広範なメディを通じ、多額の資金を使って宣伝活動おこない効果をあげている。多くのロシア人が(一部の米国人も含め)「昨年夏にマレーシア航空機を撃墜させたのはウクライナであり、ロシアは世界中の謀略と戦っている」と信じているのはこのためである。
欧米では、ロシアのメディア操縦への対抗としてロシア国内向への報道を強化する動きがあるが、その効果は疑わしい。ロシア人の西欧に対する態度は、西欧のロシアに対するよりも更に悪化している。2013年には51%のロシア人は米国に好感を抱いていたが今や15%まで落ち込んでいる。ドイツに対しても同様で78%から35%に半減している。そのような状況で、西側によるどのようなメディア戦略も、ロシア人にとっては母国と大統領を誹謗するだけと映る。プーチンは実にうまくロシアを他と孤立させつつ、国内では外圧によるロシア包囲を喧伝している、とベルシドスキー論説員は解説する。
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