昨夏にドナルド・トランプ大統領が仕掛けた米中貿易紛争は、90日間の関税賦課合戦一時停止は合意されているものの、米中両国の経済にボディ・ブローのように効きつつある。そこで再開された今月上旬の米中次官級協議では、全くの対立というよりも双方の歩み寄りの兆しが見え隠れする内容であった。そこで一日も早く決着をみたい中国としては、同国一番の経済通である劉鶴(リウ・ホー、66歳)国務院副総理(注後記)を派遣することとした。
1月17日付
『AP通信』:「中国、米中貿易交渉のため経済の権威を派遣すると発表」
中国商務部(省に相当)の高峰(ガオ・フェン)報道官は1月17日、米中貿易交渉に関わり、1月30、31日に予定されている米中閣僚級協議に劉鶴国務院副総理を派遣すると発表した。
同部によれば、米通商代表部のロバート・ライトハウザー長官の求めで派遣が決定したとする。
これに先立つ1月上旬、次官級協議が北京で開催されたが、米側が最も問題視している中国の先端技術開発に伴う諸政策について、溝は埋まらなかった模様である。...
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1月17日付
『AP通信』:「中国、米中貿易交渉のため経済の権威を派遣すると発表」
中国商務部(省に相当)の高峰(ガオ・フェン)報道官は1月17日、米中貿易交渉に関わり、1月30、31日に予定されている米中閣僚級協議に劉鶴国務院副総理を派遣すると発表した。
同部によれば、米通商代表部のロバート・ライトハウザー長官の求めで派遣が決定したとする。
これに先立つ1月上旬、次官級協議が北京で開催されたが、米側が最も問題視している中国の先端技術開発に伴う諸政策について、溝は埋まらなかった模様である。
そこで、トランプ大統領・習近平(シー・チンピン)国家主席が合意した、90日間の関税賦課合戦一時停止の期間中、両国の歩み寄りを果たすべく、劉副総理が交渉に当ることになる。
ただ、中国人民大学の経済専門家の院中海(ユ・チュンハイ)氏は、劉副総理は協商の席上、先端技術開発戦略について、全てを諦めることはできないとしながらも、(米国の意向に沿って)中国側が実施できることとできないことを訴えていくのではないかとみる。
劉副総理は昨年6月、ウィルバー・ロス商務長官が訪中した折りに直接交渉を持ったが、双方の溝が埋められなかったため、トランプ大統領が中国製品への関税賦課政策を打ち出すことになっている。
なお、『ウォール・ストリート・ジャーナル』は1月17日、米連邦検察庁が、中国の華為(ファーウェイ)が米通信大手T‐モバイルから商業上の秘密を盗んだ疑いで捜査を進めていて、近く起訴する可能性があると伝えた。
もし、刑事訴追の話が現実化すると、今月末の米中通商閣僚級交渉にも悪い影響を及ぼす恐れがある。
(注)国務院副総理:中国の最高行政機関である国務院を構成し、同総理(首相)を補佐する役職。劉氏は、李克強(リー・コーチアン)第二次内閣が組成された2018年3月に就任。ハーバード大ケネディスクールで公共経営修士を取得している経済通。
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