5月8日金正恩委員長が中国の大連で習近平主席と、3月末に続いて再度会談を行った。初訪中から40日余での再訪であり、異例のことである。朝鮮半島に関しては、9日に2年半ぶりに開催された日中韓サミットでも議題となり、またポンペオ国務長官が同じく9日に北朝鮮を再訪している。米朝首脳会談にむけて朝鮮半島をめぐる事態が大きく動いている。
では金正恩再訪中で何が話し合われたのか。5月6日に北朝鮮の外務省スポークスマンの「米国が北朝鮮の完全な核廃棄まで制裁と圧力を続けて朝鮮半島情勢を再び緊張させようとしている」と非難したことの北朝鮮側の真意を釈明したのかもしれない。...
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5月8日金正恩委員長が中国の大連で習近平主席と、3月末に続いて再度会談を行った。初訪中から40日余での再訪であり、異例のことである。朝鮮半島に関しては、9日に2年半ぶりに開催された日中韓サミットでも議題となり、またポンペオ国務長官が同じく9日に北朝鮮を再訪している。米朝首脳会談にむけて朝鮮半島をめぐる事態が大きく動いている。
では金正恩再訪中で何が話し合われたのか。5月6日に北朝鮮の外務省スポークスマンの「米国が北朝鮮の完全な核廃棄まで制裁と圧力を続けて朝鮮半島情勢を再び緊張させようとしている」と非難したことの北朝鮮側の真意を釈明したのかもしれない。さらに8日夜に習近平主席はトランプ大統領と電話会談を行っているのだがそれもヒントになる。そこで中国は「朝米双方が相互に信頼し、段階的に行動していくことを希望する」「北朝鮮に対する敵視政策がなくなり、安全への脅威がなくなったならば核が必要なくなる」、つまり北朝鮮への安全への脅威がある間は核が必要だということを強調している。遅くとも大統領選挙までに成果をあげたいトランプ大統領に対し、習近平主席は「段階的に行うように」今一度念をおしていることになる。「段階的に非核化を行いたい」という北朝鮮の思いは、たとえば在韓米軍の駐留などを口実に非核化の引き延ばし戦略ができると思っていたのに、米国自身が在韓米軍の撤退を口にすることに対して、時間稼ぎできなくなるという北朝鮮の危機感もあったのだろう。
さらにイラン核合意からの米国の離脱も北朝鮮の危機意識をあおったのかもしれない。3月末に中朝首脳会談が行われた時点でこの事態は予想されていたことであるが、いざ離脱が目前になった段階で、もう一度米中による北朝鮮への体制の保証、米朝首脳会談によって発表される合意事項の米国による遵守の確約を必要としたともいえる。
一方中国にしてみれば、朝鮮半島の平和には中国の関与が必要であることも強調したかったのだろう。米国・北朝鮮と並んで中国こそが平和協定への調印者であることを今一度強調する必要があった。
そのためには中朝の友好度のアピールも忘れない。これまでは習近平中国国家主席と金正恩国務委員長との会談であったものが、今回はこれらの肩書の前に、各々中共中央総書記、労働党委員長の肩書をつけている。さらに成果としての第一には両国の伝統的友誼が、第二に社会主義国家同士としての団結が、第三に両党(中国共産党と朝鮮労働党)の高官の往来など交流の強化がいわれている。かつて中朝関係は「党と党が特別な関係」にある国家だった。しかし1992年の中韓国交樹立後は、他の国交関係にある国家と同じ関係になっていた。今回の金正恩訪中によって両国は再び「特別な関係」になったわけである。
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北朝鮮・金正恩労働党委員長が中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。これを受け、米国・トランプ大統領は習主席と電話で会談した。
史上初の米朝首脳会談を前に北朝鮮の非核化について話し合った。
金委員長がきのうまでの2日間、中国を訪問し習主席と会談した。
金委員長が訪中したのは最高指導者に就任以降ことし3月に続いて2回目で、この様子を北朝鮮国営テレビも伝えた。
中国中央テレビによると習主席は「米朝が対話と交渉で朝鮮半島問題を解決するのを支持し半島問題の対話による平和的解決のプロセス推進と地域の恒久的な安定のため、積極的役割を果たしたい」と述べた。...
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北朝鮮・金正恩労働党委員長が中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。これを受け、米国・トランプ大統領は習主席と電話で会談した。
史上初の米朝首脳会談を前に北朝鮮の非核化について話し合った。
金委員長がきのうまでの2日間、中国を訪問し習主席と会談した。
金委員長が訪中したのは最高指導者に就任以降ことし3月に続いて2回目で、この様子を北朝鮮国営テレビも伝えた。
中国中央テレビによると習主席は「米朝が対話と交渉で朝鮮半島問題を解決するのを支持し半島問題の対話による平和的解決のプロセス推進と地域の恒久的な安定のため、積極的役割を果たしたい」と述べた。
これに対し金委員長は「朝鮮半島の非核化実現はわれわれの一貫した明確な立場であり関係国が敵視政策と安保上の脅威を除けば、われわれは核を保有する必要はなく非核化を実現できる」を表明した。また非核化に一定の条件を付ける考えを強調した。
こうした中、米国・トランプ大統領は日本時間の昨夜、習主席と電話で会談した。金委員長の会談について説明を受けたという。
両首脳は北朝鮮の核・ミサイル開発計画を恒久的に報告するまで制裁の継続が重要だという認識で一致したとしている。
一方、中国国営の新華社通信によると習主席は米朝双方が互いへの信頼を高め、段階的な行動をとって北朝鮮の安全保障への懸念も考慮するよう望むと述べ最終的な非核化に向けて北朝鮮の要求にも応じるべきという考えを示した。
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中国・遼寧省大連で迎賓館に続く道路はきのうから厳しい交通規制が敷かれた。
国際空港では北朝鮮国営のコリョ航空機と金正恩朝鮮労働党委員長の専用機と同型機の姿が確認された。
北朝鮮の要人が大連を訪れたものとみられる。
黒塗りの車列も確認された。韓国・連合ニュースは北朝鮮消息筋の話として北朝鮮の最高位級の要人が中国側と接触していると報道した。
接遇の状況などから金委員長の可能性が高まっていると伝えた。...
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中国・遼寧省大連で迎賓館に続く道路はきのうから厳しい交通規制が敷かれた。
国際空港では北朝鮮国営のコリョ航空機と金正恩朝鮮労働党委員長の専用機と同型機の姿が確認された。
北朝鮮の要人が大連を訪れたものとみられる。
黒塗りの車列も確認された。韓国・連合ニュースは北朝鮮消息筋の話として北朝鮮の最高位級の要人が中国側と接触していると報道した。
接遇の状況などから金委員長の可能性が高まっていると伝えた。航空機は日本時間午後4時20分ごろ飛び立った。
金委員長は3月に訪中し習近平国家主席と会談を行ったばかりで、韓国大統領府は「相当な重きを置いて鋭意注意している」としている。
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融和ムードが続いていた朝鮮半島情勢であるが、日中韓の首脳会談や米朝首脳会談を前に、北朝鮮は突然、米国が制裁と人権で圧力を加え続けているとして、米国を非難しはじた。
5月6日、北朝鮮の外務省報道官が北朝鮮の朝鮮中央通信の記者の質問に答えて述べたもの。「(板門店宣言で示された非核化の意思が)米国の制裁と圧力の結果であるように世論を操作している」「(米国が)北朝鮮の完全な核廃棄まで制裁と圧力を続けて朝鮮半島情勢を再び緊張させようとしていると非難した」(「連合ニュース」2018年5月6日)。...
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融和ムードが続いていた朝鮮半島情勢であるが、日中韓の首脳会談や米朝首脳会談を前に、北朝鮮は突然、米国が制裁と人権で圧力を加え続けているとして、米国を非難しはじた。
5月6日、北朝鮮の外務省報道官が北朝鮮の朝鮮中央通信の記者の質問に答えて述べたもの。「(板門店宣言で示された非核化の意思が)米国の制裁と圧力の結果であるように世論を操作している」「(米国が)北朝鮮の完全な核廃棄まで制裁と圧力を続けて朝鮮半島情勢を再び緊張させようとしていると非難した」(「連合ニュース」2018年5月6日)。
なぜこの時期に北朝鮮は米国を非難したのか。首脳会談の準備段階で何らか齟齬があった可能性もあるが、それよりも会談が米国の主導で行われるのではない、北朝鮮から提案したことを強調し、優位にたとうとしているように思われる。
首脳会談の場所と日時が間もなく発表できるだろう、拘束されていた米国人が間もなく解放されるだろうと、トランプ大統領が次々とフライング気味にツイッターで発表し、自分の手腕を誇示している、ことへの苛立ちである。
北朝鮮としては、「米国の思惑に乗せられているわけではない」「(制裁に)屈服などしていない」ことを示し、米国が(北朝鮮から見て)勝手気ままにふるまえば、いつでの「首脳会談から降りる」用意がある、とアピールしているようにも見受けられる。
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米朝首脳会談を前に韓国の文在寅大統領が5月22日に訪米し、トランプ大統領と会談することが決まった。南北首脳会談や板門店宣言について話し合われるわけだが、文在寅大統領のプレゼンテーションが米朝首脳会談の行方を左右することになろう。過度に楽観的な南北朝鮮関係の将来や、交渉相手としての金正恩委員長に対する「良い印象」が語られ過ぎれば、米朝関係や北東アジア情勢にも影響を与えることになる。
北朝鮮のソフトムードが強調され過ぎると懸念されることがある。...
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米朝首脳会談を前に韓国の文在寅大統領が5月22日に訪米し、トランプ大統領と会談することが決まった。南北首脳会談や板門店宣言について話し合われるわけだが、文在寅大統領のプレゼンテーションが米朝首脳会談の行方を左右することになろう。過度に楽観的な南北朝鮮関係の将来や、交渉相手としての金正恩委員長に対する「良い印象」が語られ過ぎれば、米朝関係や北東アジア情勢にも影響を与えることになる。
北朝鮮のソフトムードが強調され過ぎると懸念されることがある。
一つは在韓米軍の削減あるいは撤退問題である。とくに北朝鮮あるいは朝鮮半島の非核化より在韓米軍の撤退が先行することがあれば、北朝鮮が非核化を真剣に行わない可能性が高くなる。折しも、韓国の文正仁大統領統一外交安保特別補佐官という南北朝鮮問題の中枢にいる人物が、「もしも朝鮮戦争の停戦協定が平和協定に転換されたならば、在韓米軍の駐留を正当化するのが難しくなる」という文章をフォーリン・アフェアーズに寄稿した。これに対し文在寅大統領は平和協定と在韓米軍の問題は関係ないと発表し、この主張が韓国の公式な見解ではないとしているが。
米国も「在韓米軍の問題は米朝首脳会談の議題にはなっていない」としているが、一方でトランプ大統領は、在外駐留米軍の米国による費用負担を不合理だと以前に言及していた。また5月3日付のニューヨーク・タイムス紙が米国政府の当局筋の話として「トランプ大統領が国防総省に『在韓米軍の削減を選択肢』として準備するように」と語ったと報じている。
二つ目の懸念は人道問題である。北朝鮮に拘束されていた3人の米国人が解放される見込みであることが伝えら、人道問題でも明るい兆しがあるようにも感じられる。トランプ大統領は「前政権は米国人解放を要求したが失敗に終わった。今後乞うご期待」とツイッターに書いた。果たして日本人拉致被害者は帰国することができるのか。一方板門店宣言では「民族分断によって発生した人道問題を早急に解決する」との文言がある。離散家族の高齢化などこちらも時間との闘いという側面がある。
ここで「民族分断によって発生した人道問題」とされているということは、北朝鮮の中での人道問題は当然問題視されていないことになる。4か月以前までは何度も報道されていた北朝鮮内部での粛清のニュースを、米国人解放のニュースで「なかったこと」にはできない。
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