(中国が公海上で北朝鮮に石油を)
国連が新たな制裁を決めたその裏で、制裁が抜け穴だらけであることを示すような、衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。米国の監視衛星写真を基に韓国や米国のメディアが「中国船籍と推定される船が公海上で北朝鮮船に10月以降、石油を約30回ほど売ったとみられる」と報じた。トランプ大統領はこれらの記事を念頭に「中国が北朝鮮に石油の供給を容認している犯行の現場を押さえた。中国には大変失望した」と非難し、「こうしたことが続くなら北朝鮮問題の友好的な解決などありえない」と、北朝鮮に対する米国の単独行動も示唆してみせた。...
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(中国が公海上で北朝鮮に石油を)
国連が新たな制裁を決めたその裏で、制裁が抜け穴だらけであることを示すような、衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。米国の監視衛星写真を基に韓国や米国のメディアが「中国船籍と推定される船が公海上で北朝鮮船に10月以降、石油を約30回ほど売ったとみられる」と報じた。トランプ大統領はこれらの記事を念頭に「中国が北朝鮮に石油の供給を容認している犯行の現場を押さえた。中国には大変失望した」と非難し、「こうしたことが続くなら北朝鮮問題の友好的な解決などありえない」と、北朝鮮に対する米国の単独行動も示唆してみせた。またトランプ大統領は、北朝鮮以外の第三国の企業や個人に制裁を科す二次的制裁を中国企業に発動する意向を示唆している。この情報について中国外務省・華春瑩副報道局長は「一連の報道が主張していることは、事実に合わない」と述べ、報道を否定した上で、「関係各国が国連安保理の制裁を履行し、対話や協議による問題解決を進めるよう希望する」という考えを強調した。この後、韓国政府関係者は北朝鮮の船に海上における石油の積み替えを行ったとして香港船籍のタンカー「ライトハウスウィンモア号」を韓国南部・ヨスで拿捕したことを韓国メディアに明らかにした。それによれば、ウィンモア号は台湾の所在企業である「ビリオンズバンカークラブ」がチャーターした船であり、この企業の指示で北朝鮮に対する積み替えが行われたとみられるという。韓国政府はウィンモア号や関係者の調査結果を安保理に報告する方針。
(このタイミングで、日米共同世論調査が)
こうした中、日本の民間団体「言論NPO」と米国・メリーランド大学によって、核ミサイル開発を加速させる北朝鮮への米国の軍事行動の是非について日米共同世論調査が実施された。米国では軍事行動に“賛成”と答えた人が32.5%、日本では20.6%となった。「北朝鮮の核開発を止める最も有効な方法は?」を聞いたところ、日本では「そもそも止めることができるとは思わない」が最多の27.2%、米国では「6カ国協議など多国間での外交努力が必要」が最多の35.3%となった。「北朝鮮を核保有国として認めるべきか」に対しては、驚くべきことに日本の3倍近い37.6%もの人々が北朝鮮を核保有国として認めるべきとしている。世論調査はこれから政府が行おうとする政策のための環境醸成のために行われることが多い。それを考えるなら自国を最優先に考えるトランプ大統領がこれ以上の核・ミサイル開発を凍結することを条件に北朝鮮を事実上の核保有国と認めて手打ちとする可能性もないとはいえないだろう。もちろん米国の軍事行動の可能性もこの結果を見るとないとは言えない状況だ。
(今後の北朝鮮の動きは)
CNNテレビは12月27日、米国情報当局者の話として北朝鮮が新たなミサイル発射を準備している兆候が確認されたと伝えており、韓国メディアも北朝鮮が近いうちに弾道ミサイルもしくは人工衛星用ロケットを発射する可能性があると一斉に報じている。まず考えられるのは1月1日。金正恩委員長が新年の辞を述べ終わった後に祝砲のような形でミサイル、または衛星と称する飛翔体を打つ可能性もないとはいえない。次に金正恩の誕生日である1月8日。3か月以内で最も可能性が高いのは2月9日の平昌五輪あたりで、この時期は新たな国連制裁の効果が出始める時期であり、北朝鮮はその影響は全く出ていないことをアピールするために行動に出てくる可能性もある。また五輪という神聖なセレモニーが行われている最中であるため米軍も手を出しにくい時期であることも当然考えているとみられ、小規模な実験で終わらせる可能性もある。平昌五輪の前日の8日はちょうど旧建軍節ということもあり、要注意日だろう。意表を突くことが好きな北朝鮮はSLBMを発射してくる可能性もある。その後は2月16日の金正日誕生日(光明星節)あたりが候補として考えられる。
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北朝鮮船舶など4隻・国連加盟国への入港禁止へ(12月29日)
米国は国連安保理で採択された制裁決議の履行状況を調べる制裁委員会に対し、北朝鮮が決議で禁輸の対象になっている石油などの物資を運んでいた疑いがあるとして、10隻の船舶を制裁の指定に加えるよう求めている。
これについて安保理関係者は、このうちの4隻について中国が同意したことから、国連加盟国の港に入ることを禁止する措置が取られる見通しとなったことを明らかにした。
対象となる4隻は北朝鮮の船舶3隻とパラオ船籍の1隻で、この中には米国財務省が先月公開した写真で、国籍不明の船から石油の可能性がある物資を移し替える様子が写っていた北朝鮮の貨物船「レソンガン1」も含まれている。...
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米国は国連安保理で採択された制裁決議の履行状況を調べる制裁委員会に対し、北朝鮮が決議で禁輸の対象になっている石油などの物資を運んでいた疑いがあるとして、10隻の船舶を制裁の指定に加えるよう求めている。
これについて安保理関係者は、このうちの4隻について中国が同意したことから、国連加盟国の港に入ることを禁止する措置が取られる見通しとなったことを明らかにした。
対象となる4隻は北朝鮮の船舶3隻とパラオ船籍の1隻で、この中には米国財務省が先月公開した写真で、国籍不明の船から石油の可能性がある物資を移し替える様子が写っていた北朝鮮の貨物船「レソンガン1」も含まれている。
安保理は制裁決議でガソリンなどの石油精製品の北朝鮮への輸出を厳しく制限しており、制裁委員会としては北朝鮮による制裁逃れの密輸を食い止めることで核やミサイル開発の資金源を封じ込めたい考え。
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木造船の船長起訴・経緯など解明進むか(12月29日)
先月、北海道松前町沖で見つかった北朝鮮の木造船の船長が無人島の小屋などから家電製品などを盗んだとして窃盗の罪できのう起訴された。
今後は公の法廷で審理されることになり裁判を通して漂着までの経緯や家電製品などを大量に持ち出した目的の解明が進むかが注目される。
北朝鮮から来たとみられる木造船が日本国内に漂着したり漂流したケースは海上保安庁によるときのうまでに103件で5年で最多となっている。...
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先月、北海道松前町沖で見つかった北朝鮮の木造船の船長が無人島の小屋などから家電製品などを盗んだとして窃盗の罪できのう起訴された。
今後は公の法廷で審理されることになり裁判を通して漂着までの経緯や家電製品などを大量に持ち出した目的の解明が進むかが注目される。
北朝鮮から来たとみられる木造船が日本国内に漂着したり漂流したケースは海上保安庁によるときのうまでに103件で5年で最多となっている。
松前町の漁業関係者からは裁判を通じて操業の実態も明らかにしてほしいという声があがっている。
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(制裁で北朝鮮を追い込む国際社会だが、その効果を疑問視する声も)
北朝鮮の大陸間弾道ミサイル実験のXデイとされていた12月17日が過ぎ、北朝鮮は不気味な沈黙を守っている。国際社会の反応を注意深く分析して、間をおいている可能性や技術的な問題で準備が間に合っていないためにやらなかった可能性もある。こうした中、国連安保理は22日、米国が提案した新たな北朝鮮制裁決議を全会一致で採決した。加盟国に対し石油精製品の北朝鮮への輸出を去年に比べ89%制限し、貴重な外貨獲得源となってきた海外出稼ぎ労働者を1年以内に北朝鮮へ送還するほか、北朝鮮による食料品や木材、農産物、電子機器などの輸出も禁止するという厳しい内容となっている。...
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(制裁で北朝鮮を追い込む国際社会だが、その効果を疑問視する声も)
北朝鮮の大陸間弾道ミサイル実験のXデイとされていた12月17日が過ぎ、北朝鮮は不気味な沈黙を守っている。国際社会の反応を注意深く分析して、間をおいている可能性や技術的な問題で準備が間に合っていないためにやらなかった可能性もある。こうした中、国連安保理は22日、米国が提案した新たな北朝鮮制裁決議を全会一致で採決した。加盟国に対し石油精製品の北朝鮮への輸出を去年に比べ89%制限し、貴重な外貨獲得源となってきた海外出稼ぎ労働者を1年以内に北朝鮮へ送還するほか、北朝鮮による食料品や木材、農産物、電子機器などの輸出も禁止するという厳しい内容となっている。加えて新たな核実験、ミサイル発射を行った場合にはさらなる石油の禁輸措置をとるとも明記されている。供給制限や物資不足に長年慣らされている北朝鮮住民の多くは、ただでさえ不足している燃料供給がさらに制限されることを最も心配しているという。現在、制裁の影響により生活費が上昇し、石油価格も上がり、道路を走る車の数が減っているという情報もある(北朝鮮のガソリンとディーゼル燃料価格は昨年下旬と比べほぼ2倍)。一方で北朝鮮の人々は厳しい経済状況下での暮らしに慣れきっており、仮に石油の禁輸が実現しても、最低でも1年は何とか暮らせるだろうとする声もある。また制裁の効果に対する疑問の声も出ている。というのも、公海上で北朝鮮が船から船へと積み荷を移し替える手法で、戦闘機やミサイルに使われる可能性がある石油精製品などを密輸入していることが明らかになったからだ。これに中国などの船が関与しているという。こうした海上密輸行為が国連制裁の抜け穴となっており、取り締まりを強化しない限りいくら制裁を科してもその効果は限定的なものとなる。
(北朝鮮内部で何かが起きているのか)
一方で、北朝鮮軍の兵士がまたしても、軍事境界線の中西部で韓国側に亡命するという動きがあった。韓国軍によると北朝鮮から韓国への亡命は今年15人目となり、その数は去年の3倍にもなる。日本には北朝鮮からの木造漂着船が急増しているが、その数もすでに去年の7倍にも達しているという。亡命兵士の増加も含めて、北朝鮮の現体制にほころびが生じている現象とする見方も出てきている。グロ-バルニュース(カナダ)は今、北朝鮮内部で何かが起きているのではないかとする専門家達の声を紹介している。数年間韓国を拠点にDMZエリアの監視を行っていた元米軍大佐でIKAS(the Institute for Korean-American Studies)研究員のデイヴィッド・マックスウェル氏は、「北朝鮮兵士達が多くの地雷が仕込まれているDMZを横断するという危険を犯してまでも、亡命しようとしている事実をよく考えるべき」とした上で「今や多くの北朝鮮の人々が貧困に喘いでいることは誰の目にも明らかだ。もっと多くの脱北者が出てきてもおかしくない状況だが、脱北した場合、彼らの家族や親戚が強制収容所に送られて恐ろしい目にあわされるということが彼らの決断をにぶらせている」と北朝鮮の現状を分析した。マックスウェル氏は、「北朝鮮のシステムは、どんなレベルの陰謀も阻止するために、相互密告システムを構築しているが、密告する側が少数派になった時には、北朝鮮の人々が勇気を出し、亡命する可能性も出てくる」と指摘している。
(米国の最新の動き)
一方、英国のテレグラフ紙によると、トランプ政権が「ブラディ・ノーズ」と名付けた対北朝鮮軍事作戦を準備しているという。北朝鮮が追加の大陸間弾道ミサイル実験をする前にミサイル発射台や武器庫を破壊するもので、これによって米国は北朝鮮を強制的に交渉のテーブルにつかせることを本気で検討しているのだという。
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(北東アジア全域で緊張が高まっている)
北東アジアの国々は北朝鮮問題で地域が一体になって対処できていないどころか、逆に北東アジア全域で緊張が高まる事態になっている。北朝鮮問題にからみ、日本や韓国が米国から防衛装備品を導入していることに中国・ロシアが猛反発しているのだ。単純に「対北朝鮮」でまとまらない現実がはっきりと見える。日本が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を米国から導入することに強い懸念を示したロシアは、来年にも、千島列島に地対艦ミサイルを配備する計画を明らかにし、ロシアとの経済協力や北方領土問題の行く末に黄色信号が点灯している。...
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(北東アジア全域で緊張が高まっている)
北東アジアの国々は北朝鮮問題で地域が一体になって対処できていないどころか、逆に北東アジア全域で緊張が高まる事態になっている。北朝鮮問題にからみ、日本や韓国が米国から防衛装備品を導入していることに中国・ロシアが猛反発しているのだ。単純に「対北朝鮮」でまとまらない現実がはっきりと見える。日本が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を米国から導入することに強い懸念を示したロシアは、来年にも、千島列島に地対艦ミサイルを配備する計画を明らかにし、ロシアとの経済協力や北方領土問題の行く末に黄色信号が点灯している。一方、日韓に武器を売りつけている米国に対しても中国は容赦ない姿勢を見せ始めた。例えば、米軍艦が台湾に寄港した場合には中国領土への侵略行為と見做すと宣言した。さらに、韓国がTHAADを米国から導入したことに猛反発し、今回の文大統領の訪中にあたっての中国の冷たい対応を含めて、韓国製品不買運動や韓国への団体観光客の制限、中国国内の韓国系スーパーなどを次々と営業停止に追い込むなど、外交的にも経済的にも凄まじい圧力をかけている。
(中国に踏み絵を迫られている韓国)
こうした問題を解決するべく、文在寅大統領が中国を初訪問したが、待っていたのは中国の冷たいもてなしだった。フィリピン・ドゥテルテ大統領の訪中の際、出迎えは王毅外相だったが、文大統領を出迎えたのは中国外務省の次官補だった。対応に大きな差を意図的につけ、韓国への不満をぶつけている。異例の緊張感の中で行われた習近平国家主席と文大統領との中韓首脳会談直前にも事件が起きた。これを取材しに来た韓国人記者を中国人警備員が制止し、殴る事件が起きたのだ。中韓首脳会談の中で習主席は「中韓関係と朝鮮半島情勢は重大な局面にある」と発言、これに対し文大統領は「北東アジアと全世界の平和と安定のため、北朝鮮問題の平和的な解決を確認したい」と述べた。両首脳は北朝鮮問題については「朝鮮半島での戦争は容認できない」という立場で一致し、「対話と交渉を通じて平和的に解決する」という立場を維持するなど4つの点で合意したものの、THAADなどに関する立場の違いは埋まらず、共同声明が採択されない異例の会談となった。中国と米国の間で板挟みになり、踏み絵を迫られた韓国の出方によっては日米韓の連携にも支障が生じ、北朝鮮問題にも影響が出てきかねない局面になっている。
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