(北朝鮮ペースで進んだ南北会談)
韓国と北朝鮮の軍事境界線上にある板門店で、約2年ぶりに行われた南北閣僚級会談。平昌五輪をなんとしても成功させたい韓国側は「北朝鮮が平昌五輪参加に合意した。行き詰まっていた南北関係が復元された」と前のめりになっている。この会談の中で「平昌五輪に北朝鮮の高官級外交団、選手団を派遣すること」、「軍事的緊張状態を緩和すること」、「南北問題は同じ民族同士で解決すること」の3項目で合意した。...
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(北朝鮮ペースで進んだ南北会談)
韓国と北朝鮮の軍事境界線上にある板門店で、約2年ぶりに行われた南北閣僚級会談。平昌五輪をなんとしても成功させたい韓国側は「北朝鮮が平昌五輪参加に合意した。行き詰まっていた南北関係が復元された」と前のめりになっている。この会談の中で「平昌五輪に北朝鮮の高官級外交団、選手団を派遣すること」、「軍事的緊張状態を緩和すること」、「南北問題は同じ民族同士で解決すること」の3項目で合意した。こうした流れに乗るかのように米国・トランプ大統領も「おそらく私は金正恩と非常に良い関係を構築できる」などと米国のメディアで述べ、米朝外交交渉の可能性まで示唆してみせた。米国とともに北朝鮮への圧力をかけてきた日本だけがここにきて取り残されたかのような状況に置かれ、日米の地政学上の認識による差が出てきた。結果的に韓国の足元をみた北朝鮮が終始自国のペースで進めた形となった南北閣僚級会談。アメリカンエンタープライズ研究所・ニコラスエバーシュタットは、「北朝鮮は非核化を強制している国際社会の中で最も弱いとみられる韓国をターゲットに定めた」と分析している。この先、北朝鮮情勢はどのような形になっていくのかを読み取っていきたい。
(平昌五輪明けが大きな山場)
平昌五輪が終わるまでの2か月は現在のような融和状態で関係は推移するものとみられ。この間におそらく北朝鮮は核・ミサイル完成のための開発を急ピッチで進めることになるだろう。ウッドロー・ウィルソン・センターの研究員ロバートリトワックは、ニューヨーク・タイムズ紙上で「北朝鮮の平昌五輪参加は、米韓の間にくさびを打ち込み、米国本土を攻撃する能力を獲得するための必要な追加テストを行うための時間稼ぎ」と分析している。五輪が終わる3月18日以降に北朝鮮がミサイル発射もしくは核実験を行う可能性は依然として高い。米国もこのあたりは織り込み済みであり、「核兵器を搭載可能なB2戦略爆撃機を3機グアムに展開している」と公表したのに加え、海上で船から船に積み荷を移し替える違法取引を禁止するために北朝鮮船舶への日米韓の臨検を強化する方針を打ち出すなど水面下で北朝鮮をけん制している。一方で北朝鮮が米韓合同軍事演習中止を要求してくることも考えられ、米国がこうした要求を呑むような場合には日本を頭ごなしにした米朝首脳会談が行われる可能性もないとはいえない。いずれにしても平昌五輪明けがひとつの山場とみていい。今まで金正恩委員長はトランプ大統領から「リトルロケットマン」と揶揄されてきたが、「おそらく金正恩とは非常に良い関係にある(11日)」などと述べたように金正恩委員長に対するトランプ大統領の評価が上がってきたことは、日本にとっては非常に厳しい状況になることを意味する。とにかく金正恩主席とトランプ大統領の次の一手に注目が集まる。
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韓国・北朝鮮・閣僚級会談始まる・南北代表“合意に向け努力”(1月10日)
ピョンチャン五輪への北朝鮮の参加などについて協議するため、韓国と北朝鮮の閣僚級会談がきょう午前10時から、軍事境界線にあるパンムンジョムの韓国側の施設「平和の家」で始まった。
南北の当局者による会談は約2年ぶりで、双方の代表は冒頭、合意に向けて努力する姿勢を強調した。
今回の会談では、ピョンチャン五輪への対応が主な議題とみられ、北朝鮮の参加に向け本格的な調整を行うことにしている。
また韓国側は、軍当局者の会談の実施など、関係改善に向けて南北対話を加速させたい考え。...
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ピョンチャン五輪への北朝鮮の参加などについて協議するため、韓国と北朝鮮の閣僚級会談がきょう午前10時から、軍事境界線にあるパンムンジョムの韓国側の施設「平和の家」で始まった。
南北の当局者による会談は約2年ぶりで、双方の代表は冒頭、合意に向けて努力する姿勢を強調した。
今回の会談では、ピョンチャン五輪への対応が主な議題とみられ、北朝鮮の参加に向け本格的な調整を行うことにしている。
また韓国側は、軍当局者の会談の実施など、関係改善に向けて南北対話を加速させたい考え。北朝鮮側が、米韓合同軍事演習の中止などを求める可能性もあるとみられる。
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協議難航も予想・南北閣僚級会談・今日午前10時開催(1月9日)
北朝鮮では昨日、キムジョンウン朝鮮労働党委員長が誕生日を迎え、34歳か35歳になったとみられているが、今のところ目立った動きは見られない。
キム委員長は新年の演説で、ピョンチャンオリンピックの参加へ前向きな立場を示していた。
そして昨日、国営テレビが伝えたのは、北朝鮮北部でオープンしたスキー場について。背景には、五輪に対する国民の意識を高める北朝鮮指導部の狙いもあるとみられる。
開幕まで1か月のピョンチャンオリンピックは、今日の南北会談でも主な議題となる。...
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北朝鮮では昨日、キムジョンウン朝鮮労働党委員長が誕生日を迎え、34歳か35歳になったとみられているが、今のところ目立った動きは見られない。
キム委員長は新年の演説で、ピョンチャンオリンピックの参加へ前向きな立場を示していた。
そして昨日、国営テレビが伝えたのは、北朝鮮北部でオープンしたスキー場について。背景には、五輪に対する国民の意識を高める北朝鮮指導部の狙いもあるとみられる。
開幕まで1か月のピョンチャンオリンピックは、今日の南北会談でも主な議題となる。韓国からチョミョンギュン統一相、北朝鮮から祖国平和統一委員会・リソングォン委員長が出席し、閣僚級で意見を交わす。
会談は今日午前10時から、南北の軍事境界線にあるパンムンジョムの韓国側の施設「平和の家」で行われる。
五輪への北朝鮮参加に向け本格的に調整を進める。また、韓国側は軍事的緊張の緩和に向けた軍当局者による会談の実施や、朝鮮戦争などで南北に離れ離れになった離散家族の再会などについても話し合い、関係改善につなげるため南北の対話も加速させたい考え。
米国・トランプ大統領は今回の会談を“100%支持する”と期待を示したうえで、幅広い議題を協議することを歓迎する姿勢を示した。
また日本政府、安倍首相は北朝鮮の姿勢の変化を評価も、会談を北朝鮮の政策変更につなげることが重要とし、国際社会が結束し圧力を最大限高めるよう呼びかけていく方針。
2年ぶりの南北の当局者の会談について。代表団は閣僚級1人、次官2人の異例の分厚い態勢。
韓国は期待を示しているが、北朝鮮がそれに応じるかどうか不透明の状態である。
一方、今日の会談では、北朝鮮が韓国と米国を分断しようと、定例の米韓合同軍事演習について、オリンピックパラリンピック期間中の実施見合わせではなく中止を求める可能性もあり、協議は難航することも予想される。
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北朝鮮・韓国に米国と連携しないよう要求(1月7日)
南北高位級会談をあさってに控え、北朝鮮の国営メディア・朝鮮中央通信は韓国の文在寅政権に対して「外部勢力に依存する思想は毒だ」と主張し、北朝鮮への対応で米国と連携しないよう要求した。
南北高位級会談について、米国・トランプ大統領は「良い結果が出ることを望む」と述べて期待を示しているが、米国・国務省の報道官は「米韓関係にくさびを打ち込もうとしている可能性もある」と警戒感をにじませている。
(突如対話路線に舵を切った北朝鮮)
北朝鮮・金正恩委員長は1日の新年の辞で平昌五輪参加と南北対話再開に言及する一方で「米国本土を射程に収めた核ボタンが机の上に常にあることは脅しではなく現実だと知るべきだ」と述べ、事実上のICBM実戦配備宣言を行なった。これにトランプ大統領も「北朝鮮よりも強力な核兵器を米国は持っている。我々の核のボタンの方がはるかに強力だ。」と感情的に応じ、このまま北朝鮮状況は膠着するかに思われた。...
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(突如対話路線に舵を切った北朝鮮)
北朝鮮・金正恩委員長は1日の新年の辞で平昌五輪参加と南北対話再開に言及する一方で「米国本土を射程に収めた核ボタンが机の上に常にあることは脅しではなく現実だと知るべきだ」と述べ、事実上のICBM実戦配備宣言を行なった。これにトランプ大統領も「北朝鮮よりも強力な核兵器を米国は持っている。我々の核のボタンの方がはるかに強力だ。」と感情的に応じ、このまま北朝鮮状況は膠着するかに思われた。ところが北朝鮮は3日、韓国との直通電話を再開させ、文大統領が提案した9日の南北高官級会談にも応じる意向を打ち出した。この動きに合わせるかのように、米韓は合同軍事演習を平昌五輪後に延期することで合意し、トランプ大統領も「文大統領を100%支持する」と態度を変えた。しかし、依然として核放棄に関心を示していない北朝鮮に、日本と米国は懐疑的な姿勢を崩していない。今回、合同軍事演習を中止し、文大統領を支持する姿勢を打ち出したのは軍事攻撃の前にやれることは全てやろうというトランプ大統領の姿勢の一環と考えられ、トランプ大統領は今後の推移を慎重に見守るという態度に出ている。
(今後の不透明感が更に増してきた)
北朝鮮が対話路線に転じて、緊張が緩和されると捉えるのは早計で、むしろ今後の緊張がさらに高まる恐れが出てきたというべきなのかもしれない。南北高官会議は単に2年ぶりの顔合わせに終わる可能性が高いが、北朝鮮の狙いは中途半端な対話状態を維持することだろう。北朝鮮は核を放棄するつもりはなく、平昌五輪の間にも核開発を急ぎ、ICBMの実戦配備を急ピッチで進める時間稼ぎを狙っている可能性が高い。また経済制裁の緩和を狙ったものと見ることもできる。米国は平昌五輪後に米韓合同軍事演習を再開させる姿勢を崩していないが、3月の終わりから4月あたりにこれまで以上に緊張が高まる可能性があり、米国の先制攻撃の可能性もないとはいえない。北朝鮮の不穏な動きも米メディアによって伝えられている。来週にかけて北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射に踏み切る動きがみられるという。追加の挑発行為に出た場合には、南北対話の再開に冷水を浴びせることになり、北朝鮮の五輪参加や米韓演習の延期などにも影響が出てくることになる。ティラーソン国務長官はCNNのインタビューで、「トランプ大統領の外交努力は強力な軍事オプションに支えられている。軍事行動は第一の選択肢ではないが、外交努力の背景にあることが重要だ」と述べ、南北対話が米朝対話に結び付くと判断するのは「時期尚早」としている。ともあれ9日の南北高官会議を注視していきたい。
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