地球温暖化問題で米国の足元を見る中国(3月20日)
中国に対して人権問題、台湾問題、香港問題などで強い姿勢を示す米国バイデン政権だが、一方では地球温暖化問題で世界と連携していく姿勢を示し、中国と話し合う姿勢をみせている。
バイデン政権の政策の中心である環境問題を進めるにあたり中国は米国より優位にあるため、バイデン政権は中国に対し強く出れない。何がそうさせているのか。
まず、EV製造の際やカーボンニュートラルのためのグリーンテクノロジーには欠かせないレアアースを中国に握られていることが大きい。...
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中国に対して人権問題、台湾問題、香港問題などで強い姿勢を示す米国バイデン政権だが、一方では地球温暖化問題で世界と連携していく姿勢を示し、中国と話し合う姿勢をみせている。
バイデン政権の政策の中心である環境問題を進めるにあたり中国は米国より優位にあるため、バイデン政権は中国に対し強く出れない。何がそうさせているのか。
まず、EV製造の際やカーボンニュートラルのためのグリーンテクノロジーには欠かせないレアアースを中国に握られていることが大きい。
レアアースは中国にとってハイテク戦略物資であり、日本も尖閣問題の際、輸出を止められた経緯があり大きな被害を受けた。
驚くべきことに中国では自国で採掘されたものを含めて、世界のおよそ6割のレアアースを握っている。実はレアアース自体は例えば米国でも採掘されているが、先進国では自国でレアアースを採掘したにも関わらず、有害な放射性物質(ウラン、トリウム)を除去するために一旦中国にレアアースを送り、そこで除去してから自国に再度輸入しているのである。
もうひとつは太陽光発電で重要な役割を果たす部品ポリシリコンである。皮肉なことに人権問題で有名な新疆ウイグル自治区で、ポリシリコンの世界における供給量の50%を生産している。
バイデン大統領は「米国は(ウイグルの問題は)人権問題だと捉えているが、中国にとっては国家の分断を防ぐ国内の治安問題だ」と発言する等、弱腰に見えるが問題はこの辺りに潜んでいると思われる。
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米中覇権争い(3月20日)
米中外交トップ会談、会談では予想以上に激しいやり取りが行われた。
冒頭からブリンケン国務長官はウイグル自治区やチベット、香港、台湾、サイバー攻撃などの問題での中国のふるまいを批判し、これに対し中国・楊潔チ政治局長は内政干渉だと反発し、非難の応酬となった。
2日間にわたった会談の終了後、ブリンケン長官が会見し、中国側とのやりとりは原則論のやり取りに終始するものとなったが、イランや北朝鮮、アフガニスタン、気候変動問題では率直な意見交換ができたと一定の評価を与え、中国メディアも「意見の相違はあったが、会談は建設的で有益だった」と伝えている。...
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米中外交トップ会談、会談では予想以上に激しいやり取りが行われた。
冒頭からブリンケン国務長官はウイグル自治区やチベット、香港、台湾、サイバー攻撃などの問題での中国のふるまいを批判し、これに対し中国・楊潔チ政治局長は内政干渉だと反発し、非難の応酬となった。
2日間にわたった会談の終了後、ブリンケン長官が会見し、中国側とのやりとりは原則論のやり取りに終始するものとなったが、イランや北朝鮮、アフガニスタン、気候変動問題では率直な意見交換ができたと一定の評価を与え、中国メディアも「意見の相違はあったが、会談は建設的で有益だった」と伝えている。
今回の米中会談で派手な言い争いを大きく取り上げ「米中の溝が浮き彫りになった」と伝えるメディアは多いが、激しいやり取りはむしろカメラを入れた冒頭部分だけであり、バイデン政権の本当の狙いは中国に対し弱腰姿勢であると批判している米国国内の共和党やトランプ支持者たちに向けたパフォーマンスの色合いが強いものとえいえる。
実は2月5日にブリンケン長官は既に中国側に根回しをしており楊潔チ政治局長と電話会談を行う中で、中国が一番気にしている「1つの中国」という原則を認めるか否かについて、「認める」と伝えているという。
さらに、バイデン大統領は習近平国家主席との電話会談で「米国は(ウイグルの問題は)人権問題だと捉えているが、中国にとっては国家の分断を防ぐ国内の治安問題だ」と発言し、中国側が大喜びしたということをバイデン大統領自らが語っている。こうしたことから中国側としてもトランプ政権と異なり安心して言い合える寸止めが効く相手とみて今回の会談に臨んだものとみられる。
米国の強い言い回しを信じて日本が米国と歩調を合わせていった場合、後になって梯子を外される可能性もある。バイデン政権は、バランスを重視する性格を合わせ持つ政権という認識を持っておく必要がある。
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米国・バイデン大統領・半導体など調達見直しに大統領令(2月26日)
米国・バイデン大統領は、重要な物資の確保を目指す大統領令に署名した。
対象は半導体、レアアース、電気自動車などの電池、医薬品の4品目。政府機関に対し、100日以内にサプライチェーンを見直し国内での生産促進や同盟国を通じた入手など安定的な調達方法を検討するよう命じている。
公衆衛生や情報通信など6つの分野についても、1年以内にサプライチェーンを見直すよう指示した。
感染拡大した米国では中国で生産のマスクなど医療物資が不足したほか、半導体の世界的な不足で自動車の減産を強いられた。
バイデン大統領は、中国への依存度を減らし安全保障上のリスクを下げる狙いを示唆した。
中国外務省の報道官は、中国企業の排除につながると警戒感を示した。
中国と欧米の対立が鮮明に(2月8日)
ユーラシア大陸を中心にがっちりと一帯一路を広げていこうとしている中国に対し、海からじわじわと圧力をかけようとしている欧米という構図がはっきりと見えてきている。
日本も含めた欧米諸国は海から中国を包囲する「航行の自由作戦」で、海側から中国に圧力をかけていこうとしている。
英国が西太平洋に英国が空母「クイーンエリザベス」を向かわせているのもこの流れの一環で、今後「クイーンエリザベス」は西太平洋に常駐するという。...
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ユーラシア大陸を中心にがっちりと一帯一路を広げていこうとしている中国に対し、海からじわじわと圧力をかけようとしている欧米という構図がはっきりと見えてきている。
日本も含めた欧米諸国は海から中国を包囲する「航行の自由作戦」で、海側から中国に圧力をかけていこうとしている。
英国が西太平洋に英国が空母「クイーンエリザベス」を向かわせているのもこの流れの一環で、今後「クイーンエリザベス」は西太平洋に常駐するという。英国は相対的に力が弱まっている米国に代わって欧米先進国の中でリーダー的なポジションを狙っているのかもしれない。
2020年、同盟国である日本・米国・豪州に中国との領土紛争を抱えるインドが加わり、クワッドという枠組みができたが、この枠組みに英国が加わる意向を示した。
それだけではなく、英国はTPPにも加わる意向を示していて、これが実現すればTPPも中国包囲網としての機能を果たしていく可能性がある。
こうした動きを察知した中国はユーラシア大陸内部、特に近隣アジア諸国を次々と仲間に引き込んでいる。EUに経済制裁されたカンボジアに中国は援助の手を差し伸べ、中国寄りにした他、タイとの鉄道プロジェクトを開始させ、タイも仲間に引き入れている。
驚くべきことに、南シナ海の問題で中国と対立しているはずのフィリピンまでが中国と南シナ海を共同開発することになっている。韓国・サムスンは2012年から中国・西安に大きな半導体工場を作っていて中国寄りであることは明白である。ベトナムなどメコン川周辺国に対しても中国はワクチン外交を行い、すでに手懐けている。
中国は南シナ海や東シナ海を通過せずに中東の石油を中国に入れるため、ミャンマーを手懐けてチャウピュー深海港を作ろうとしており、そのために中国とミャンマーは合弁会社まで設立している。チャウピュー深海港は「一帯一路」における「中国・ミャンマー経済回廊(CMEC)」の中心として今後、重要な役割を担っていくとみられる。
中国と欧米のせめぎ合いから今後も目が離せそうもない。
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動き出したバイデン政権のアジア政策(2月6日)
2027年は人民解放軍創設100周年にあたる。この年までに台湾統一という国家目標を達成したいと習近平国家主席は本気で考えている。その意思は既に第19期中央委員会第5回総会で習主席によって示されている。これからの7年間、中国は台湾を中心に、東シナ海と南シナ海を取り囲む第1列島線をあらゆる手段を使って突破しようとしてくることが考えられる。
2月1日、中国が海警法を施行し、中国が定める「管轄海域」において、コストガードを装った事実上の戦艦である「海警」の武器使用を可能にさせたのもこの流れの一環であり、中国は米国の台湾政策や南シナ海政策に関する出方を探りつつ、着々と目標に向けて駒を進めている。...
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2027年は人民解放軍創設100周年にあたる。この年までに台湾統一という国家目標を達成したいと習近平国家主席は本気で考えている。その意思は既に第19期中央委員会第5回総会で習主席によって示されている。これからの7年間、中国は台湾を中心に、東シナ海と南シナ海を取り囲む第1列島線をあらゆる手段を使って突破しようとしてくることが考えられる。
2月1日、中国が海警法を施行し、中国が定める「管轄海域」において、コストガードを装った事実上の戦艦である「海警」の武器使用を可能にさせたのもこの流れの一環であり、中国は米国の台湾政策や南シナ海政策に関する出方を探りつつ、着々と目標に向けて駒を進めている。
一方、今後のアジア地域での米国の出方を探る上で2つの大きな方向性が米国から出てきた。ひとつは1月13日に「インド太平洋における戦略的枠組み」と題された機密文書が機密指定解除の上で公開されたことである。
これはトランプ前政権によるものだが、この文書には沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線の域内で、中国が制空・制海権を長期間確保することを防ぐことや、台湾を含む第1列島線に位置する国を米国が防衛することなど、中国にとっては受け入れられない政策が数多く記載されている。
二つ目は1月20日のバイデン大統領就任式に合わせて米国が空母ルーズベルトを台湾の近くに航行させ、南シナ海に入らせようとしたことである。前日の19日の台湾軍による軍事演習も含めて、この出来事が中国を大きく刺激し、1月23日と24日、計2日間で28機というかってない規模の中国空軍機を台湾の防空識別圏に入った。
中国の爆撃機は8機もあり、1つの爆撃機から対艦ミサイルが2発同時に撃てるので、合わせて16発撃てる。これを米空母に向けて誇示した形である。これは中国の核心的利益である「台湾にちょっかいを出したらただでは済まない」という中国の重大な意思表示であり、2027年までのどこかのポイントでこうした武力衝突が現実化する可能性がないとは言い切れない。
第1列島線上にあるすべての要素は中国にとってはパッケージである。つまり尖閣諸島における日本と中国の紛争もこのパッケージの中に含まれている。バイデン政権は日米安保第五条によって米国は尖閣を守るとの立場を鮮明にしているが、米国は肝心の領有権問題に関しては「特定の立場は取らない」としており、今回、インド太平洋調整官に就任したキャンベル氏も以前オバマ政権時代に公聴会でそのように明言している。「海警」部隊が尖閣に上陸し、「尖閣は中国の領土だ」と宣言してしまえば、第五条の発動はなくなるということである。
中国人を上陸させないことがなにより海上保安庁の重要な任務であり、「海警」のカウンターパートである海上保安庁の機能強化や海上自衛隊との連携システム構築が日本にとって必須作業となる。
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