米中貿易戦争・その行方を読む(5月11日)
(トランプ大統領・中国への追加関税を発動)
米中貿易協議は中国の構造問題で妥協点を見いだせず、2日目も約1時間半で終了した。トランプ大統領は「中国が合意を壊そうとしている」ことを理由に挙げ、2000億ドル(22兆円)分の中国製品への制裁関税を25%に引き上げる措置に打って出た。これに加え新たに3250億ドル(36兆円)の関税を上乗せする手続きにも着手しているという。中国は報復措置に踏み切る構えを見せており、これが実行された場合には中国への輸出が多い米国国内の農業関連企業の倒産が増加する恐れもある。...
全部読む
(トランプ大統領・中国への追加関税を発動)
米中貿易協議は中国の構造問題で妥協点を見いだせず、2日目も約1時間半で終了した。トランプ大統領は「中国が合意を壊そうとしている」ことを理由に挙げ、2000億ドル(22兆円)分の中国製品への制裁関税を25%に引き上げる措置に打って出た。これに加え新たに3250億ドル(36兆円)の関税を上乗せする手続きにも着手しているという。中国は報復措置に踏み切る構えを見せており、これが実行された場合には中国への輸出が多い米国国内の農業関連企業の倒産が増加する恐れもある。ただ、中国から輸出される商品は大半が海路で運ばれるため5月中は適用が猶予されるに等しく、その間に両国が落としどころを見つける可能性もないとはいえない。まったく先が読めない感のある米中貿易戦争がどのように展開していくのかは日本にとっても死活的に重要な問題である。今後の展開を短期的長期的に読み取っていきたい。
(米中貿易戦争・短期的に見た場合)
安さを売り物にしている中国の製品は値上げされると需要が落ち込みやすいというデータ(世界銀行・USTR)がすでに明らかになっている。つまり中国製品は値上がりに弱い。さらに米中貿易戦争を短期的に見た場合、中国が不利であることを示す大きな要素が4つある。一つ目は米国と比べ中国の経済規模が小さいこと。米国の経済規模は中国の1.6倍あり、同じ額ずつの制裁を課していった場合、中国が先に疲弊することになる。二つ目は製造業のウェートが米国が1割なのに対し、中国は3割であるため、関税を課していくと中国には相当きつくなっていくということ。中国が米国に制裁を課そうとすると、GDPの0.7%までしか課せない一方で、米国は中国GDPの3.6%まで課すことができる。加えて中国が加工貿易型の国という要素も中国に不利となっている。現状はトランプ大統領が攻めていて、中国は腰が引けた状態となっている。
(米中貿易戦争・長期的に見た場合)
中国が米国に対して今後取りうる対抗措置としては米国企業が中国に持っている現地法人の製品不買運動を起こしていくと、その影響は22兆円程度と試算されている。さらに中国の金融緩和の流れの中から米国の金融機関を締め出していくことが考えられる。可能性は低いが、中国が持っている100兆円以上の米国債を売り浴びせ、米国の金利を急上昇させ共倒れを図ることも考えられるが、これは影響が大きすぎるので可能性としては小さい。中国にとって一番現実的なのは毛沢東以来、中国共産党の伝統のあるセオリーとして位置づけられる持久戦に持ち込むことで、関税のブーメラン効果を生かすことが、最大のポイントとなる。米中関税合戦の第一弾、第二弾において米中はお互いに500億ドルずつ関税を課し合ったが、ここでは中国経済に対する悪影響の方が大きかった。ところが第三弾になると、米国が2500億ドルで中国に関税を課しているのに対し、中国は1100億ドルと抑制的に反撃している。そうすると時間をおいて米国が中国に課した関税がブーメランのように米国に跳ね返り、米国の消費は時間が経てば経つほど厳しくなる。さらにトランプ大統領の任期は長く見積もってもあと6年なので、その意味でも持久戦に持ち込むことが得策と中国は考えている。支持率・株価の動向次第では米国がいずれ折れる可能性があると考えている。注意すべきなのは米中の問題は二層構造になっており、貿易戦争の話は表面上の話に過ぎないということ。底流の部分では資本主義と共産主義の間の体制間の争いというものがあり、強制的に中国に対して技術を移転させている問題や産業の補助金など体制に関わる部分については20年ぐらいの時間軸で続いていく可能性がある。
(米中貿易戦争激化・日本への影響)
ところで米中貿易戦争がエスカレートした場合、日本にとってどのような影響が及んでくるのだろうか。中国から米国に輸出されているものの中には日本企業がつくった部品を中国で組み立てているというものが数多く存在し、それに高関税がかけられることで日本は直接、打撃を受ける形になる。IMFの世界経済見通しによると米中貿易戦争が激化すると0.4%下がり3%を割る。そうなると日本の経済にも非常に大きな影響が及ぶ。円高や株の浴びせ売りも怖く、最終的には日本のGDPが0.6%、3兆円以上落ちてくるリスクが存在する。悪く転んだ場合にはリーマンショック級の打撃にならないともいえない。そうなれば10月に予定されている消費増税の行方も左右することにもなり、日本は今後も米中貿易戦争の動向から片時も目を離すことはできないといえる。
閉じる
米中交渉折り合わず・関税25%に引き上げへ(5月10日)
米国と中国の貿易問題をめぐる閣僚級の交渉が終了したが、9日の交渉では折り合わず、トランプ政権は日本時間の午後1時すぎに中国からの輸入品の関税を引き上げ、制裁を強化する方針である。
ホワイトハウスは10日も交渉を続けるとしている。米国が関税を引き上げれば、中国も報復措置を取る構えを示している。
米中貿易摩擦をめぐっては、閣僚からは交渉による解決を期待する発言が相次いだ。
米中閣僚級の交渉を前に・中国への圧カ強化(5月10日)
トランプ政権は、およそ5か月にわたる閣僚級の交渉で合意した内容を中国側が先週になって突然覆してきたとして不信感を強め、中国からの輸入品に対する関税を引き上げる方針を表明した。
こうした中、9日からワシントンで米国のライトハイザー通商代表とムニューシン財務長官、中国の劉鶴副首相による閣僚級の交渉が開かれる。交渉前にトランプ政権は中国からの2000億ドルの輸入品に上乗せしている10%の関税を10日に25%へ引き上げることを官報で通知した。...
全部読む
トランプ政権は、およそ5か月にわたる閣僚級の交渉で合意した内容を中国側が先週になって突然覆してきたとして不信感を強め、中国からの輸入品に対する関税を引き上げる方針を表明した。
こうした中、9日からワシントンで米国のライトハイザー通商代表とムニューシン財務長官、中国の劉鶴副首相による閣僚級の交渉が開かれる。交渉前にトランプ政権は中国からの2000億ドルの輸入品に上乗せしている10%の関税を10日に25%へ引き上げることを官報で通知した。
トランプ政権としては、中国側が交渉初日の9日中に歩み寄らなければ関税を引き上げることをはっきりと示し、圧力をかける狙いがある。
これに対して中国商務省が「米国が実際に関税を引き上げたら必要な反撃措置を取らざるを得ない」とコメントし、報復措置で対抗する考えを示している。
一方、ホワイトハウスのサンダース報道官は中国側の歩み寄りに期待をした。
米中の貿易摩擦が一段と深刻な事態に陥れば、日本経済や世界経済への影響も避けられないためこのあと始まる瀬戸際の交渉の行方が注目される。
閉じる
株安連鎖・NY株価下落受け・東京市場・一時350円超値下げ(5月8日)
米国と中国の貿易摩擦への懸念からニューヨーク市場で株価が急落したことを受け、今朝の東京株式市場でも日経平均株価が一時350円を超える値下がりとなっている。
米国・トランプ政権が中国からの輸入品への関税を10日から引き上げるとの方針を示したことで、米中貿易摩擦の激化を懸念する売り注文が相次いだ。
米国大統領・対中貿易摩擦“関税引き上げ”言及(5月6日)
米国・トランプ大統領はツイッターに中国との貿易摩擦に関する交渉が遅すぎるとして強い不満を示したうえで中国からの2000億円相当の輸入品に対する関税を今の10%から25%に引き上げ、制裁に強化する方針に言及した。
交渉は中国による国有企業への優遇策など隔たりが残っているとみられるが、ムニューシン財務長官は“交渉は最終局面”にあるという認識を示している。
8日からは閣僚級の会合が開かれる予定で、トランプ大統領は中国側の情報を引き出すため圧力を強める狙いもあるとみられる。...
全部読む
米国・トランプ大統領はツイッターに中国との貿易摩擦に関する交渉が遅すぎるとして強い不満を示したうえで中国からの2000億円相当の輸入品に対する関税を今の10%から25%に引き上げ、制裁に強化する方針に言及した。
交渉は中国による国有企業への優遇策など隔たりが残っているとみられるが、ムニューシン財務長官は“交渉は最終局面”にあるという認識を示している。
8日からは閣僚級の会合が開かれる予定で、トランプ大統領は中国側の情報を引き出すため圧力を強める狙いもあるとみられる。
閉じる
「世界貿易」内の検索