【Globali】
中国、メコン川流域開発に資金提供(2016/03/24)
3月23日中国の李克強首相は中国海南島の三亜で開催されたタイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーの東南アジア5ヶ国とのメコン川流域開発協力に関わる第1回目の会議で、低利融資100億元(約15億ドル)と融資枠100億ドルの合計115億ドルの資金を提供することを表明した。メコン川開発協力会議は中国とタイの主催で開催されたが、中国の目的は、中国が主唱する「一帯一路」経済圏構想の一環としてメコン川流域を中心とする東南アジアの社会インフラの整備と生産性向上を目指すものである。インフラ整備には現在中国で深刻な課題となっているセメント、鉄鋼などの過剰な生産設備が利用出来るし、融資に関しては、最近設立したアジア投資銀行(AIIB)が活用出来ることも中国にとって大きなメリットである。
中国のもう一つの思惑としては、南シナ海の人工島問題で直接領有権を争うベトナムは勿論のこと東南アジア全体でも中国の膨張に対し警戒感が生じており、これを緩和するため友好協力的姿勢を示すことにあると思われる。
東南アジア諸国も今回の会議の成果を実利ベースでは評価して中国との友好ムードを見せる一方で、完全に中国ベッタリにはなれないという微妙なバランスの対中外交を行う必要がある。中国に対して距離を置く姿勢は現地のメディアの報道にも現れている。
3月22日付シンガポールの
『ストレートタイムズ』は、「中国はメコン地域で更に寛容に」という見出しで、中国が今回の会議の前にメコン川下流諸国の干ばつ対策として上流にあるダムの水を放流したことについて、干ばつ対策とはなったが、発表が急だったため急激に川の水位が上がることにより漁業や沿岸の農業、観光に被害をもたらす可能性があると警告している。過去中国が勝手に上流にダムを建設して下流の諸国に影響が出ていたが、今回の会議でタイの首相は中国に対してしっかりと公平な水管理への協力を求めるべきであるという意見を掲載している。...
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3月22日付シンガポールの
『ストレートタイムズ』は、「中国はメコン地域で更に寛容に」という見出しで、中国が今回の会議の前にメコン川下流諸国の干ばつ対策として上流にあるダムの水を放流したことについて、干ばつ対策とはなったが、発表が急だったため急激に川の水位が上がることにより漁業や沿岸の農業、観光に被害をもたらす可能性があると警告している。過去中国が勝手に上流にダムを建設して下流の諸国に影響が出ていたが、今回の会議でタイの首相は中国に対してしっかりと公平な水管理への協力を求めるべきであるという意見を掲載している。
3月23日付タイの
『バンコクポスト』は、「プラユット首相、メコン首脳会議で公平な水利用を強調」という見出しで、会議の共催者であるタイのプラユット首相は、開会の挨拶で全流域諸国に利益をもたらすメコン川水管理計画の確立が課題であると述べたと伝えた。これは暗に中国に対して発言したものと思われる。
3月22日付ベトナムの
『ベトナムプラス』は、「ベトナム、メコン川協力を積極推進」という見出しで、メコン川開発協力会議に参加する北京駐在ベトナム大使へのインタビューを掲載している。その中で大使は記者の南シナ海の問題に関する質問に対し、国際法に基づき両国にとり受け入れ可能な解決策を根気よく交渉してゆく必要があること、両国とも更に問題を複雑化させるような行為をしないことを繰り返したと報じている。
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マニラでAPEC首脳会議開催(2015/11/19)
11月18日と19日の二日間の予定でフィリピンのマニラにおいてAPEC(アジア太平洋経済協力)の首脳会議が21カ国首脳により開催される。15日、16日に開催されたG20サミットに続く会議であり、11月30日から12月11日まではパリ気候変動会議も開催予定である。安倍首相のみならず多くの首脳が外交日程に忙しく国内政治から遠ざかることになる。また、13日に発生したパリ同時多発テロの影響で警備体制は従来にも増して厳しいものにならざるを得ない。APECでは当初予想された通り、南シナ海とTPPを巡って米中両巨頭が対峙する様相を呈している。参加国のメディアはどのように報道しているのであろうか。
開催国フィリピンの
『マニラブレティン』は、11月19日付で「首脳会議当地開催 世界の希望はAPEC首脳とともに」と題する社説を掲載した。数ヶ月に亘る計画と準備、何千人もの通勤者に長距離の徒歩通勤を強いる交通規制に対する抗議と批判、何百という航空便の欠航や航海、飛行禁止区域の布告、パリ同時テロを受けての警備強化の後、昨日APEC首脳会議はフィリピン国際会議場で開幕に漕ぎつけた。米国のオバマ大統領と中国の習近平主席に多大な注目が集まる。...
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開催国フィリピンの
『マニラブレティン』は、11月19日付で「首脳会議当地開催 世界の希望はAPEC首脳とともに」と題する社説を掲載した。数ヶ月に亘る計画と準備、何千人もの通勤者に長距離の徒歩通勤を強いる交通規制に対する抗議と批判、何百という航空便の欠航や航海、飛行禁止区域の布告、パリ同時テロを受けての警備強化の後、昨日APEC首脳会議はフィリピン国際会議場で開幕に漕ぎつけた。米国のオバマ大統領と中国の習近平主席に多大な注目が集まる。米国のTPP(環太平洋経済連携協定)と中国のFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)で両者は経済を主導するために覇を競う。しかし、南シナ海での米中間の抗争が経済問題を脇へ押しやるかもしれない。最近のパリ同時多発テロが議論になるやもしれない。この会議に対する警備の強化は被害妄想のレベルとまで言われているが、万一のことがあってはならない。社説は、今回の首脳会議のテーマである「開放経済とより良い世界の構築」達成のために合意がなされることを期待すると結んでいる。
11月19日付シンガポールの
『ストレートタイムズ』は、「オバマ大統領 環境協定と貿易協定を推進」という見出しで、オバマ大統領が、パリ気候変動サミットでの協定合意とTPPの早期批准を訴えたと報じた。一方で中国の習近平主席がFTAAPについてTPPと違って、世界経済のブロック化を進めるものではないと売込んでいることも伝えている。
11月18日付のカナダの
『グローバルアンドメール』は、「APEC首脳会議 政府TPP約束せず」という見出しで、TPPの合意は前ハーパー政権時代になされており、11月4日に成立したばかりのトルドー新政権はTPPに対し中立的立場であると表明していると報じている。合意されたTPP協定では、自動車の関税撤廃にアメリカが25年の猶予期間を勝ち取ったのに対しカナダの猶予期間は5年であり、カナダの自動車業界が反発している。カナダの外相と貿易相は、カナダの新政権は貿易賛成派ではあるが、TPPの批准には議会での審議が必要であるとして、TPPに対する支持、不支持の表明を控えていると伝えている。
11月18日付英文版
『上海日報』は、「習主席 FTAAPの早期構築を求める」という見出しで、APEC首脳会議における習主席の演説を報じた。習主席は演説で、TPPは(世界の)ブロック経済化に繋がる恐れがあるが、自由貿易協定では、平等な参加と十分な協議に基づき、開かれた誰でも参加出来ることを重視すべきであるとし、保護主義に対抗し、公正な競争に資するものである必要があると訴えた。
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