アメリカのバイデン大統領は23日、岸田総理と会談後の共同記者会見で、台湾有事の際、アメリカが軍事的に関与すると明言した。この発言に対して、米左派メディアの
『MSNBC』は「バイデン氏の混乱した台湾発言は、彼の信頼性に打撃を与えた」と報じ、米右派メディアの
『フォックスニュース』は、「戦争を引き起こしかねない最新の過ちだ」と報じるなど、米メディアは大統領の失言に対して懸念を露わにしている。
米
『MSNBC』は、「おなじみのパターンになりつつある」と伝えている。バイデン大統領は、中国やロシアのようなライバル国や敵対国との戦争に対する新たな準備態勢を表明する大胆な発言をし、その後、彼自身のスタッフがそれを撤回する。また、「厄介なパターンにもなりつつある」という。米国民はバイデンの失言や失敗を笑い飛ばすことができるが、外国の権力者がそうした発言を善意的に受け止めてくれるという保証はないためだ。バイデンは自らの演説の信頼性を損ない、知らず知らずのうちに米国の敵対勢力に、米国は実際以上に戦争に傾いているとの結論に至らせる可能性がある。
1979年以来「一つの中国」政策の下、アメリカは台湾に対する中国の立場を公式に認めているが、台湾との重要な非公式外交関係も維持しており、武器も供給している。バイデン自身台湾を訪れ、米国と台湾の関係について数十年にわたる方針を打ち出す法案を可決した。ジョージ・W・ブッシュ元大統領が2001年に、台湾を中国から守るために「必要なら何でもする」と発言した後、当時のバイデン上院議員はワシントン・ポスト紙に「外交の問題として、武力を行使する権利を留保することと、先験的に台湾を防衛することを義務づけることとは、大きな違いがある」と述べ、「外交では、言葉が重要だ」と指摘していた。
しかし、大統領に就任後のバイデンは、台湾に関する同様の失言を過去に少なくとも2回行っており、ロシアに関しても失言を繰り返した。「プーチンは権力の座に留まることはできない」と発言したことで、ホワイトハウスは、米国はモスクワの政権交代を求めていないと釈明した。『MSNBC』は、「こうした非戦略的曖昧さとは、相手に推測させるための意図的な行動ではなく、無能さや分別力のなさから生まれる明確さの欠如である。」と指摘し、バイデン政権の不器用な外交政策を批判している。
米右派メディアの『フォックスニュース』も、つい数週間前にも、バイデンがポーランド訪問中に、プーチン打倒を呼びかけるような発言を行い、米兵が間もなくウクライナに入るかもしれないと示唆したことを述べ、「これは賢いことではない」と指摘している。特に今、習近平主席は経済と新型コロナウイルスの対応を誤ったという批判に直面しており、バイデンの不適切な約束を救命いかだのようにつかみ、暗黙の脅威を口実に軍事侵略を強め、あるいは台湾を侵略する可能性さえあると指摘している。秋の党大会で3期目続投を目指す習近平にとっては、強硬な締め付けや失業率の上昇から中国国民の目をそらすことは魅力的なことかもしれないという。中国外務省の報道官は大統領の発言に「強い不満がある」と述べ、政府は「主権と安全利益を守るために断固として行動する」と発言した。
なお、超党派の米シンクタンク『国際平和カーネギー基金』も、「バイデン大統領は、危険な発言をした可能性がある」と懸念を表明している。そして、「バイデンが、台湾有事に米国は武力を行使すると公言したのは、この1年足らずの間に3度目である。今回もホワイトハウスは、米国の立場は実際には変わっていないことを明らかにするために奔走した。度重なる失言は、政策の変更と解釈される危険性があり、世界の2大国間の平和と安定が損なわれる可能性が高くなる。」と指摘している。
多くのアナリストは、中国が本格的な侵略を行う可能性は、軍事力の増強や国際的な野心を考慮すると、決して否定できないものの、突然の侵攻という高価で危険な戦略よりも、「統一」に向けて徐々に圧力をかけることを望んでいると考えている。しかし、中国政府の計算が変わり得る理由の一つは、米政府にあると指摘している。米国が台湾を本土と一体化できない戦略的資産と見なした場合、中国は「今すぐ行動を起こすか、台湾が永遠に失われることを受け入れるか」という恐怖から侵略を開始するというプランBに切り替える可能性が考えられる。
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