台湾政府は15日、2020年の防衛費を8.3%増の4113億台湾ドル(約1兆3900億円)とする予算案を行政院 院会(閣議)で承認した。今後、立法院(国会)で承認されれば、記録を取り始めた2001年以降で最高金額の予算となる。
『ロイター通信』『AP通信』や米政治紙
『ザ・ヒル』などが報じた。本予算案は、蔡英文総統が率いる与党・民主進歩党が多数派を占める立法院で承認される見通しだ。防衛費の増額は3年連続で、行政院(内閣および各省庁)で国家予算、財政・統計業務などを統括する主計総処は、8.3%の伸び率は2008年以降で最大であり、金額は2001年以降最高となると説明した。
増額の原因は、中国との軍事的な緊張が高まっていることだ。中国は7月、台湾の独立に向けた動きがあれば、戦争という手段に訴える用意もあると警告し、米国の台湾への武器売却を中国の主権と国家安全保障への脅威として非難した。米中両国は貿易戦争を始めとして多くの火種を抱えているが、台湾問題もその1つとなっている。
台湾国防部(国防省)は声明で、「敵の脅威に対応し、国家安全保障を確実にするため、防衛予算は安定的に増加し続けている。」と説明した。同省は、外国から高性能兵器を購入し、数十年間継続された徴兵制度から完全に志願制の軍隊に移行するために支出を増やしていく方針を示した。
蔡総統は、中国が香港と同様の「一国二制度」の仕組みにより、台湾を統一しようとしていることに断固として反対してきた。台湾は自国の領土の一部であるとして、力による統一も辞さないとする中国は、蔡総統が台湾の独立を推進しようとしていると考えており、台湾への軍事的圧力を強化している。中国は、台湾を包囲する軍事演習の実施や、台湾海峡の中間線を越えて戦闘機を飛ばすなど、台湾が「挑発的」とする動きを見せている。
米国は台湾の主要な武器供給国であり、米国務省は7月、台湾への22億ドル(約2335億円)相当の武器の売却を発表した。米国は台湾と正式な外交関係はないが、連邦法である台湾関係法により、武器売却など防衛手段を提供する義務を負う。
蔡総統は、来年1月の次期総統選挙で再選を目指しているが、中国政府が8月から台湾への個人旅行の許可を停止するなど、台湾への締め付けを強めるなか、その改革路線の政策が同地で強い反発を招いている。
閉じる