本邦では、新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大が続く中、本来率先して範を垂れるべき政治家や官僚トップが、自粛などどこ吹く風といった行動に出ておりながら、反省と口ではいうものの一切責任はとっていない。しかし、同じく防疫失敗で感染拡大が深刻なスウェーデンでは、防疫対策等非常事態に当たるべき役所の庁が、市民に自重を求めていたクリスマス期間中に旅行をしていたことが判明し、更迭されてしまっている。
1月7日付米
『AP通信』:「スウェーデンの高官、COVID-19感染流行の最中にスペインにクリスマス休暇旅行して更迭」
スウェーデンの高官トップが1月6日、クリスマス休暇を利用してカナリア諸島(アフリカ大陸北西岸沖のスペイン領)に旅行したことが発覚し、辞任に追い込まれた。
市民を緊急事態から擁護することを目的とした政府機関、スウェーデン非常事態対応庁(MSB)のトップであるダン・エリアセン長官(59歳)で、COVID-19感染拡大が続くスウェーデンで、クリスマス休暇での旅行を自重するように政府通達が出されていたにも拘らず、リゾートとされる同諸島に旅行していたことが現地メディアの報道で明らかになった。
同長官は、“COVID-19危機下にあって、社会がどう対応することが重要であるかについて、認識が甘かった”と反省の弁を述べている。
昨年末、COVID-19感染拡大に喘ぐスウェーデン政府の指示を受けて、MSBは大多数の同国市民宛のメッセージで、クリスマス休暇中の旅行の自重を訴えていた。
同長官は、スウェーデン夕刊紙『エクスプレッセン・デイリィ』(1944年創刊)のインタビューに答えて、“感染症流行の期間中、旅行含めて多くのことを諦めてきた”としながらも、息女が暮らす同諸島への旅行は止むを得ないことだったと弁解した。
その上で、同長官は、“重要なことは、MSBのトップである自分が範を垂れなかったことである”と反省するコメントを出している。
同長官は辞任発表直前の1月5日朝、任命責任者であるミカエル・ダンベルグ内務大臣(49歳)と面談したが、今回の行動に対して厳しい批判の声を受けて、これ以上長官に留まれないと判断したものとみられる。
ダンベルグ大臣は公共メディア『スウェーデン・テレビ(SVT)』(1956年設立)に、“MSBは、感染症防疫対策の重責がある部署だが、エリアセン長官は大きな判断ミスを犯してしまったと言わざるを得ない”とコメントしている。
スウェーデンは元々、他の欧州諸国と違って、市民の自主性に任せるとして、強制力の伴う都市封鎖措置等は講じてこなかった。
しかし、同国の感染者は46万9,748人、死者8,985人(致死率1.9%)と、スカンジナビア半島の他国に比し非常に多くなっている。
(編注;ノルウェー感染者5万2,967人・死者465人・致死率0.9%、フィンランド感染者3万7,549人・死者576人・致死率1.5%)
一方、1月6日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「スウェーデン高官、海外のゲイ・フェスティバル参加は“必要”だったと発言して四面楚歌」
エリアセン長官は、クリスマス休暇中の旅行自粛政策を発令する立場にありながら、カナリア諸島に旅行に出ていたことが発覚した際、“COVID-19対策期間中、多くのことを諦めてきたが、今回の旅行は必要なことだった”と釈明した。
息女がそこに暮らしていたことや、旅行中のソーシャルディスタンシングを常に保っていたことにも言及していたが、後日判明したインスタグラム投稿の写真から、ラス・パルマス(同諸島州都)でゲイ達と新年を祝うお祭りに参加していたことが分かった。
同長官は、SVTレポーター、ゲイ活動家のエリック・ギャリー(29歳)、ゲイのメディア番組司会者フレデリック・ソデルホルム(29歳)と酒を酌み交わしながら盛り上がっていた。
このスキャンダルが発覚した1月6日現在、スウェーデン日刊紙『アフトンブラデット』(1830年創刊)・世論調査会社デモスコップ共同調査の結果によると、同長官を支持する人は僅か6%であった。
偶然にも、同じタイミングでのステファン・ロベーン首相(63歳)の支持率も38%から31%まで下落している。
ただ、この背景には、同長官のスキャンダルとは別に、国を挙げての外出自粛キャンペーンの最中にも拘らず、モーガン・ヨハンセン法務大臣(50歳)が大掛かりの買い物に出ており、マグダレーナ・アンデルセン財務大臣(53歳)がスキーに出かけ、更に、ロベーン首相自身もショッピングモールに出掛けていたという事態が判明していることもある。
デモスコップのカリン・ネルソン代表(60歳)は『アフトンブラデット』紙のインタビューに答えて、“国民に旅行や親戚等に会いに行くことを自重するよう求め、また、多人数で集まることも止めるよう要求しているにも拘らず、我が国の閣僚らの行動をみると、正にダブルスタンダードに他ならない”と非難している。
なお、エリアセン長官が苦境に立たされたのは今回が初めてではなく、2011年にスウェーデン移民局長を退いた時には社会保険庁局長に横滑りし、2015年には社会保険庁から警察庁長官に異動し、そして2018年に警察庁長官を退任させられた際にはMSB長官に就任している。
スウェーデンの調査報道ウェブサイト『ストッパ・プレサルナ』は、“エリアセン氏は、いつも解任される度に平然と(何もなかったかのように)次の官職に在り付いていることで有名”だと報じている。
また、同長官が10代の頃、バッド・ブー・バンドというパンクロック・グループに加わっており、1979年には「バンコクでFxxxing」というヒット曲を出していた。
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11月3日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「中国、10月のロシア産天然ガス消費量が予想を17%上回る」
ロシアの天然ガス最大手のガスプロム(1989年設立の世界最大の天然ガス生産・供給企業)が11月2日、中国向けの天然ガス供給量が当初の予想を17%上回ったと発表した。
中ロ間を結ぶ“シベリアの力”パイプライン(注後記)で搬送されたもので、中国がCOVID-19に伴う景気後退から最速で立ち直りつつあることが証明された。
具体的には、中国の直近四半期(7~9月期)の経済成長率は+4.9%まで回復しており、主として巨大な製造部門の復興によるところが大きい。
ウラジーミル・プーチン大統領(68歳)は10月29日、中国含めた日本、インド等アジア向けの天然ガス供給は、同地域の発展とともに益々需要が高まると期待される、と発言している。
ロシアは、“シベリアの力”パイプラインを通じて2019年末より天然ガス供給を開始している。
ガスプロムによれば、同パイプラインを通じて、中国向けに最大年間380億立方メートル供給が可能としている。
ただ、同社によれば、最大の顧客は欧州諸国で、2019年実績で1,980立方メートル供給しているという。
(注)“シベリアの力”パイプライン:2007年、ロシアの産業エネルギー省が承認した「東方ガスプロジェクト」に基づき、ロシア最大手ガスプロムが手掛けたロシア国内全長2,864キロメートルに及ぶガス輸送パイプライン。ロシア側は2019年12月完工、総工費約680億ドル(約7兆1,400億円)。なお、中国側は中国石油天然気集団(CNPC、1988年設立の原油・天然ガス生産・供給最大手)が上海までの全長3,371キロメートルの敷設工事を行っており、吉林省までの1,064キロメートルは2019年10月に完工していて、全長完工は2024年予定。
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