仏メディア:イスラミック・ステート(IS)ドローン製造と軍事化(2016/10/20)
過激派組織イスラミック・ステート(以下、通称IS)が支配下におくイラク北部のモスルの奪還計画をイラク軍が進めている。クルド自治政府の治安部隊ペシュメルガもIS掃討作戦に加わる一方で、ISがドローンの軍事開発を進めている事が、多国籍連合軍を懸念させる。イラク軍の本格突入による泥沼化が懸念される中、新たな懸念材料が加わる。フランスメディアは次の通り報じる。
『AFP通信』はモスル郊外のクルド自治区で、ISが爆弾を仕掛けた小型無人機ドローンが爆発し、クルドの戦闘員2名が死亡し、フランス特殊部隊員2名が負傷していた事を伝える。「AFP通信」によると、米国防総省は以前からISがドローンによる偵察を実施していると指摘していたが、死者が出たのは初めて。クルド戦闘員がドローン撮影中に爆発し、バッテリー内に隠された爆発物が時限装置によって爆発した。
ISのドローン軍事化を詳しく報じる
『フィガロ紙』は「ISはミサイルや爆破装置の研究開発だけでなく小型飛行機ドローンの軍事化を進めている」事を重くみる。...
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『AFP通信』はモスル郊外のクルド自治区で、ISが爆弾を仕掛けた小型無人機ドローンが爆発し、クルドの戦闘員2名が死亡し、フランス特殊部隊員2名が負傷していた事を伝える。「AFP通信」によると、米国防総省は以前からISがドローンによる偵察を実施していると指摘していたが、死者が出たのは初めて。クルド戦闘員がドローン撮影中に爆発し、バッテリー内に隠された爆発物が時限装置によって爆発した。
ISのドローン軍事化を詳しく報じる
『フィガロ紙』は「ISはミサイルや爆破装置の研究開発だけでなく小型飛行機ドローンの軍事化を進めている」事を重くみる。またブリュッセルに拠点を置くNGO紛争武装リサーチ(以下、通称CAR)所長べヴァン氏の取材から下記の通り指摘する。
・9月初めから攻撃目的のISによるドローン使用は3度目だが、死傷者が出たのは初めてだが、偵察や監視目的での使用は多数とみられる。
・ドローンを即席武器として利用する能力が高まれば、ISの軍備が拡大する
・今年2月にバグダッドから120kmの都市ラマディがISから解放されたが、この時CARの専門はISの非合法のドローン製造作業所を最初に発見した。この時製造見本としてドローンを何機か保有し、組立はまだだったが必要な部品は揃っていた。
「フィガロ紙」がもう一つ注目するのは、武器の材料の出どころと時期である。
ラマディがISから解放された2月にCARが発見した「イラクでは稀な武器ストレラ2Mタイプの可動式地対空ミサイルの断片」は「ロシア製」で、「ISのエンジニアが解体してドローン搭載用に爆薬を取り出した後の残骸」と見る。
また、6月末にISから解放された別の都市ファルージャで回収した大量の電子部品は、トルコ国内市場でISのために仲介業者が購入した。その中の、半導体と継電器(signal relay)は、2014年以来ISが即席で作った起爆装置の製造所にあった物と同じで、継電器は韓国と日本で製造された。
他に、機体の軸を定めるジャイロセンサー等の部品は米国のPolulu社が製造しトルコに輸出し、50以下をトルコ市場でのみ流通させたが、どの顧客がISの仲買人かは特定できない。しかし購入時期は2015年7月より前に遡る。「フィガロ紙」は「その時ISはまさにイラクで領土拡大期」と報じ、ISのドローン軍事化は1年以上前から進められたと指摘する。
「フィガロ紙」によると、今回の爆破に使用されたドローンは、アマゾンで誰でも入手可能な市販の簡易なモデルである。しかし対IS用の特殊ドローンを開発した米国防総省は、「単なる爆破装置開発でなく、ISがドローンを軍事化した」事を脅威と受け止める。「人類に多大なる損傷を引き起し得る軍事化」を前に、諸刃の刃となりうる発明品の規制は現在無いに等しい。今回使用されたドローンはアマゾンで誰でも入手可能である。
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欧州火星探査ExoMars:19日に火星到達(2016/10/19)
欧州とロシアの共同事業で欧州宇宙機関(以下ESA)が主導する火星探査計画エクソマーズ(ExoMars)が、欧州にとって悲願の歴史的瞬間へと向かう。3月14日打ち上げから7か月。16日(日)に無人の微量ガス観測機,トレース・ガス・オービター衛星(TGO)から、着陸機スキャパレリが分離された。3日間かけて火星表面に降下し、予定通りいけば仏時間19日(水)中に着陸する。仏メディアは次の通り伝える。
「火星の生命体の存在」を裏付けるメタン検出レース
『フィガロ紙』が「ESAの火星探査計画が最初の局面を左右する重要な局面入る」と報じる通り、火星到着を前に欧州は歓喜と緊張に包まれる。今回の探査の目的は「火星の生命体の存在」を裏付けるメタン検出である。TGO衛星は火星の周回軌道に乗って、火星大気中に「痕跡」として存在するメタンなどあらゆるガスを検出するための検出器を搭載する。
火星探査では欧州のESAは米国の米国航空宇宙局(NASA)に遅れを取っている。...
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「火星の生命体の存在」を裏付けるメタン検出レース
『フィガロ紙』が「ESAの火星探査計画が最初の局面を左右する重要な局面入る」と報じる通り、火星到着を前に欧州は歓喜と緊張に包まれる。今回の探査の目的は「火星の生命体の存在」を裏付けるメタン検出である。TGO衛星は火星の周回軌道に乗って、火星大気中に「痕跡」として存在するメタンなどあらゆるガスを検出するための検出器を搭載する。
火星探査では欧州のESAは米国の米国航空宇宙局(NASA)に遅れを取っている。2004年に欧州の観測機が火星大気中にメタンの痕跡を観測するも裏付け検出までには至らなかった。一方NASAを擁する米国は火星探査機キュリオシティ号の火星着陸を成功させた唯一の国である。しかし「メタンの気配を示すもの」を2012年に「観測」したが、当時の検出機器の検出限界では、メタンと確定できないまま今日に至る。火星の極希薄な大気が検出を阻む。ESAは巻き返しを図るべく、微量ガス観測機TGOを開発して、「世界初のメタン検出」を狙う。「野心に満ちた欧州とロシアの共同科学ミッション」と形容するゆえんだが、失敗は許されない。
「極めて複雑でデリケートな火星着陸」
『ルモンド紙』によると、16日に母体TGOから分離し降下中の着陸機スキャパレリは、予定通り進めば仏時間の19日中に火星に着陸するが、「複雑でデリケート」な段階という。スキャパレリがTGOから分離する際、TGOからの情報送信に遅れが生じ、地上管制では緊
張が走った。20分後に回復し無事情報を受信できたが、管制センターの科学者達の緊張が
難しさと責任の重さを物語る。着陸機は一旦分離されると軌道修正できなるだけでなく、降下着陸しながら内臓カメラで火星表面の最初の情報を地球送る。また「強度はあるものの火星の砂嵐の季節中の着陸」でもある。今回の探査は2003年の欧州の火星探査失敗以降初めての探査で、今後2020年に予定される第2回ExoMarsの行方も占う。着陸の失敗と情報送信の不具合がこの段階で起これば、ExoMars計画存続そのものも危ぶまれる。
『レゼコー紙』は、TGOが搭載する4種の神器を詳しく説明する。二つの分光器はロシア製(ACS)とベルギー製(Nomad)で、今までの1000倍の精度で大気の化学組成を分析できる。またスイス製カメラ(CaSSIS)が地面の画像を供給する。この3つでメタンの由来が生物的起源によるものか、蛇紋岩のように地学的プロセスかを判別できる。これにロシアが提供した中性子検出器で、地下の水素のマッピングを行う。
今回使用される技術や機器は2020年の第2回火星着陸のために必要な技術を実証すると位置づけられる。ExoMars計画と火星レースの行方を占う火星着陸が待たれる。
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