中国と北朝鮮の国境を越えて両国の都市を結ぶ新しい橋が8日、正式に開通した。厳しい制裁に苦しむ北朝鮮にとって、橋は中国からの観光客を呼び込み、外貨獲得に資するものになりそうだ。
『AFP通信』や
『ブルームバーグ』、香港の
『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』などによると、新たな橋は、中国北東部の吉林省・集安市(Ji’an)と北朝鮮の慈江道・満浦市(Manpo)を結ぶ。2011年に北朝鮮の故金正日総書記が訪中した後に建設が進められ、2016年に完成したが、その後の両国関係の悪化により開通が見送られていた。
集安市は9日、「3年の絶え間ない努力の後、中国・北朝鮮間の集安・満浦高速橋が正式に開通した。」との声明をウェブサイト上に発表した。同市によれば、橋は北朝鮮と結ばれている既存の3つの港を補完するものになるという。工事費は2億8000万元(約46億円)で、毎年50万トンの貨物と20万人が橋を通過すると見積もっている。
2016~17年に国連・安全保障理事会が北朝鮮に科した制裁によって、中朝両国間の貿易は大きく制限されている。中国は北朝鮮の最大の貿易相手国であり、北朝鮮は経済統計を公表していないが、中国税関の数字によると、北朝鮮の対中輸出は2016年以降90%超も減少し、昨年は2億1300万ドル(約236億円)にまで落ち込んだ。先のベトナムでの2回目の米朝首脳会談では合意に至らず、その後も制裁は緩和されていない。
8日の開通式後、中国人観光客120人が早速橋を渡り、国境を通過して北朝鮮に入国した。近年両国間の関係改善に伴って、中国人の北朝鮮への観光需要は回復基調にある。観光事業は制裁の対象外であり、北朝鮮にとっては、限られた外貨獲得手段の1つであるため、新たな橋には期待がかかる。その後、北朝鮮側からもバスなどが中国に入国した。
集安市によると、新たな橋には放射線検出ゲートが備え付けられているという。中国は長い間北朝鮮の核活動による放射線物質の飛来を懸念しており、2017年9月の北朝鮮の大規模な核実験後には、吉林省を地震が襲っている。
北朝鮮の対中貿易の大動脈は、伝統的に中国国境の都市、遼寧州の丹東(Dangdong)を通じて南下するものだった。同市と対岸の北朝鮮の平安北道・新義州(Sinuiju)を結ぶ新たな橋を建設する大規模なプロジェクトも進められていたが、これも4車線の橋が完成した後、中朝関係の悪化により未だ開通していない。
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