BRICS新興5ヵ国(2011年発足)はこの程、南アフリカにおいて首脳会議(サミット)を開催し、新たに新興6ヵ国の追加メンバー国の受け入れで合意した。しかし、その他、西側支配への挑戦や国際通貨基金(IMF、1945年創設)・世界銀行(1945年創設)等の欧米主導の国際機関への対抗を謳っていたものの、共通通貨の採用はもとより、基軸通貨の脱米ドル政策でも合意に至らず、むしろ加盟国間の思惑の不一致を露呈してしまっている。
8月28日付
『ビジネス・インサイダー』オンラインニュース(2009年開設のビジネス・技術専門メディア)は、直近開催のBRICSサミットにおいて、新興6ヵ国の追加参加が決まって規模は大きくなるものの、本来の主眼である西側対抗軸構築の構想では全く纏まりを欠いたと報じている。
BRICSサミットが、8月24日までの3日間、南アフリカで開催され、新たに新興6ヵ国(イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア)の加盟が決定された。
しかし、当初から標榜していた、西側支配への挑戦や欧米主導の国際機関への対抗を推進するための構想では何ら結論を見出せなかった。
すなわち、昨年来、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)等が打ち出していた、BRICS共通通貨の創設や、国際基軸通貨での脱米ドル政策について、具体的進捗をみせることはできなかった。
まず、オンライン形式で参加したプーチン大統領が、“グループ内での金融・商取引をより強固なものにするため、決済通貨を脱米ドルとし、各々の通貨で決済することが重要だ”と訴えた。
西側諸国の対ロシア制裁で、米ドル決済を禁じられて以来、ロシアとしては脱米ドルに向かわざるを得ない状況になっている。
次に、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(77歳、2023年就任)が、“グループ国間の商取引決済上の脆弱性を克服するためには、新たな共通通貨の創設が必要だ”と訴えた。
英国『フィナンシャル・タイムズ』紙報道によれば、同大統領が4月に訪中した際、“金本位制でなくなった後、誰が米ドルを基軸通貨と決めたのか”とした上で、“今こそBRICS共通通貨の採用について真剣に討議すべきだ”と発言したという。
一方、インドのハーディープ・シン・プーリ石油・天然ガス担当大臣(71歳、2021年就任)は8月25日、インドで開催された主要20ヵ国経済相会議後に米『CNBCニュース』のインタビューに答えて、“脱米ドルを進める一環で、インド通貨のルピーを国際通貨に押し上げたいと考えているが、現実的には容易な話ではないと思っている”と表明している。
また、習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)は、“国際金融システムの見直しが必要だ”とし、BRICS共通通貨については何らコメントしなかったが、“人民元が国際基軸通貨になることを望んでいる”と言及した。
ただ、同国家主席は、人民元が米ドルに取って代わることまでは明言しなかった。
更に、今回のBRICSサミット議長国の南アフリカのエノック・ゴドンワナ財務大臣(66歳、2021年就任)は8月24日、米『ブルームバーグ』オンラインニュースのインタビューに答えて、“(BRICSサミットでは)どの国からもBRICS共通通貨の話は出なかった”とし、“何故なら、共通通貨採用を準備するということは、これまでの国際基軸通貨の使用を止めることを意味し、それは余りにもリスクが大きく、どの国もそのような態勢が取れる状況にないからだ”とコメントした。
なお、南アフリカのポール・マシャティル副大統領(61歳、2022年就任)が今年4月、BRICSは米ドル依存度を減少させようと試みていると語っていた。
一方、金融大手ゴールドマンサックス(1869年設立)の元エコノミストだったジム・オニール氏(66歳、2001年にBRICsと命名)は今年8月、『フィナンシャル・タイムズ』紙のインタビューに答えて、“BRICS共通通貨の構想があるそうだが、愚かな話だ”と一刀両断した。
更に同氏は、“中国とインドが何ら合意できないということは、西側諸国にとっては好ましい”とし、“何故なら、もし両国が国際通貨で何らかの合意をすれば、それは国際基軸通貨の米ドルにとって大きな障害となるからだ”と付言している。
なお、国際銀行間通信協会(SWIFT、注後記)の今年7月のデータによると、SWIFT利用の国際金融取引の約46%が米ドルで行われていて、これはこれまでの最高値となっている。
(注)SWIFT:銀行間の国際金融取引を仲介するベルギーの協同組合。1973年発足。約4千の国際金融機関で採用されていて、支払いの40%近くが30分以内に、90%余りが24時間以内に完了している。
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この経済学者は、52才で8月13日に開票された一次選挙で最も高い投票数(約30%)を獲得している。10月の大統領選挙では最も当選の可能性が高い候補とも言われている。ハビエル・ミレイ自身は、「羊たちを先導したいとは思わないが、ライオンたちを奮起させたい。」と自由主義的な主張を常々語っている。
一方、2003年、ネストル・キルチネルが大統領に選出された選挙からアルゼンチンの政界は2つの相反するブロックに2分されている。...
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この経済学者は、52才で8月13日に開票された一次選挙で最も高い投票数(約30%)を獲得している。10月の大統領選挙では最も当選の可能性が高い候補とも言われている。ハビエル・ミレイ自身は、「羊たちを先導したいとは思わないが、ライオンたちを奮起させたい。」と自由主義的な主張を常々語っている。
一方、2003年、ネストル・キルチネルが大統領に選出された選挙からアルゼンチンの政界は2つの相反するブロックに2分されている。1つ目はペロニズム(中道左派、国家主義)と2つ目はリベラルで保守的な右派である。
テレビ討論で、ハビエル・ミレイは既成政党を腐敗した寄生グループと評し、左派政権や右派が、数年来アルゼンチンを苦しめている経済危機の解決に手をこまねいている間に自らの政治的な立場を確立してきた。
ハビエル・ミレイの経歴は‘う余曲折’を経ているといえる。すなわち、これまで多くの大学で教鞭をとる傍ら、民間企業(英国のHSBC銀行)や公共機関でエコノミストとして頭角を表してきた。
2017年から彼の親しみのある話しぶり、戦闘的な髪型、罵言などがテレビやラジオ受けしてメディアに頻繁に登場するようになった。
2020年には‘お騒がせ’ハビエルは自ら党首となっている自由党から立候補して首都ブエノスアイレス市議会議員に選ばれた。
なお、ハビエル・ミレイ候補は国政が自由や庶民の金銭を奪うものとして捉えており、国政の関与を最小に抑え、インフレ対策としてメネム政権時代(1990年代)のドルーペソ等価政策を復帰したいと主張している。
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