欧州委員会、ロシア産ガス脱却のための具体的戦略を発表(2022/05/18)
欧州委員会は18日、ロシアの化石燃料への依存度をできるだけ早く解消するための戦略、REPowerEUを発表する。この計画は、EUのエネルギー移行に新たな弾みをつけることも目的としており、3月のEU首脳会議で各国首脳からの要請を受けて策定されたものである。
仏紙
『ルフィガロ』によると、「REPowerEU(ヨーロッパに電力を取り戻す)」と名付けられたこの計画は、省エネの推進、供給源の多様化(液化天然ガス、LNG、水素)、再生可能エネルギーの増強によるグリーンシフトの加速を3つの柱としている。規制を緩和することで、ビルの屋上への風力発電機や太陽光発電パネルの設置を容易にする。欧州のある関係者によれば、REPowerEUには現在から2027年までに2100億ユーロ(約29兆円)の官民投資が必要とされる。...
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『ルフィガロ』によると、「REPowerEU(ヨーロッパに電力を取り戻す)」と名付けられたこの計画は、省エネの推進、供給源の多様化(液化天然ガス、LNG、水素)、再生可能エネルギーの増強によるグリーンシフトの加速を3つの柱としている。規制を緩和することで、ビルの屋上への風力発電機や太陽光発電パネルの設置を容易にする。欧州のある関係者によれば、REPowerEUには現在から2027年までに2100億ユーロ(約29兆円)の官民投資が必要とされる。ロシアからの化石燃料の昨年の輸入は990億ユーロ(約13兆円)にのぼった。
仏紙『レゼコー』によると、欧州委員会は、ロシアのガス(欧州の輸入量の45%)に頼らないためには、まずはガスの消費を減らすことだと主張している。2030年までにエネルギー消費量を9%ではなく、13%削減することを提唱する。省エネ計画は、車の速度を下げるなど、国家に提案されるものの、強制はしない対策が示される。EUは、このような小さな努力を積み重ねることで、「福祉や購買力に大きな影響を与えることなく、迅速にエネルギー消費を5%削減できる」と考えている。
自然エネルギーについては、エネルギーミックスに占める自然エネルギーの割合を、昨年設定した40%から、2030年までに45%に引き上げることを提案する予定である。しかしこれは、気候変動への取り組みの加速を求める欧州議会の支持を期待できる一方で、加盟国の納得を得なければならない。
REPowerEUはまた、ソーラーパネルやヒートポンプの普及を促進していく方針である。太陽光発電の発電量を2025年までに2倍、2030年までに4倍にすることが目標となる。このため欧州委員会は、2026年から250㎡以上のすべての新築の公共・商業施設にソーラーパネルを設置することを義務付け、2030年にはこの措置を新築の住宅にも拡大していくことを提案する。さらに欧州委員会は、欧州のバリューチェーンを構築し、材料の供給を容易にするために、新たな産業提携を推進していく。また、再生可能エネルギープロジェクトの認可手続きを簡素化し、迅速化することを考えている。これは産業界の支持がある一方で、環境保護主義者の懸念を招くことが推測される。
なお、欧州委員会は、新しいガスインフラに欧州の資金を提供する構えでもある。欧州委員会はこれまで、気候変動対策の名目でこれを拒否してきたが、中央及び東ヨーロッパと北ヨーロッパの将来の供給安定性を保証するために「避けられない」と考えている。
これらの対策により、ロシア産のガス消費量の3分の2の量を取り除くことが期待されている。欧州委員会は、ロシア産エネルギーからの完全な独立を達成する具体的な期限は設けないものの、「できるだけ早く」撤退することを目標とする。
仏紙『20ミニュッツ』によると、ジャックドロール研究所エネルギーセンターのトーマス・ペレラン=カルラン所長は、「紛争の最初の数週間は、EU首脳陣の戦略は主に新しい供給源を見つけることに集中していた。今は、エネルギー効率と再生可能エネルギーという2つの柱でバランスを取り直している」と述べている。それは、「ガス価格は長期的に高くなる」ことと「供給源を変えても、エネルギー主権にはつながらない」という現実がEU首脳陣の間で認識され始めているからだと説明している。EU首脳陣は、供給源を変えても、「いつか敵対しないという保証のない他国に依存すること」であり、「ある国がガスの供給を止めるのは簡単である反面、ヨーロッパの日射量や風力発電の埋蔵量をコントロールすることはできないだろう」と考え始めているという。
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中国ドローン大手、ロシアとウクライナで事業一時停止。米ドローン企業が参入機会狙う(2022/04/27)
中国ドローン大手のDJIは、世界市場の半分以上のシェアを占めているドローンのトップメーカーである。今回、ロシアとウクライナの戦争でそのドローンが軍事利用されているとの批判を受けて、両国での商業活動を一時的に停止することを決定した。
仏
『ルフィガロ』は、中国政府はロシアのウクライナ侵攻に困惑しているものの、今のところこれを非難することを拒否しており、中国企業は微妙な立場に置かれている、と伝えている。ロシアは数々の経済制裁を受け、欧米の多国籍企業数社は同国から撤退している。
こうした中、ウクライナ副首相は先月、ロシア軍がDJIの「製品」を使って民間人を標的にしていると非難する手紙を同社に送り、その内容をツイッターで公開した上で、「ロシアがウクライナ人を殺すのを助ける製品を止めてください」とツイートした。...
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仏
『ルフィガロ』は、中国政府はロシアのウクライナ侵攻に困惑しているものの、今のところこれを非難することを拒否しており、中国企業は微妙な立場に置かれている、と伝えている。ロシアは数々の経済制裁を受け、欧米の多国籍企業数社は同国から撤退している。
こうした中、ウクライナ副首相は先月、ロシア軍がDJIの「製品」を使って民間人を標的にしていると非難する手紙を同社に送り、その内容をツイッターで公開した上で、「ロシアがウクライナ人を殺すのを助ける製品を止めてください」とツイートした。
これに対し、中国企業は26日、声明で返答した。「DJIは現在、様々な管轄区域におけるコンプライアンス要件を社内で再評価しています。この審査が終わるまでの期間、DJIはロシアとウクライナにおける全ての事業活動を一時的に停止します。」と述べた。また、「DJIはこれまで民間用の製品しか製造していない」と指摘し、「自社製品を軍事目的に使用させるようなカスタマイズや改造を許可することを拒否してきました」と説明している。
一方で米『ウォールストリート・ジャーナル』は、米国のドローン新興企業6社以上が、ウクライナに機器を寄贈・販売しており、この戦争を市場参入のチャンスとして捉えていると報じている。
ドローン業界の専門家たちによれば、米国の新興企業は、民間用ドローン市場でDJIの圧倒的な売上に押され、参入余地がほとんどなかったため、ウクライナで自社の技術を披露することを切望しているという。米国の新興企業6社以上が、ウクライナにドローンやドローン防衛システムを寄贈または販売し、偵察や情報収集、戦争犯罪の画像撮影などで同国の防衛に貢献しているという。
ウクライナ政府の報告書では、DJI製ドローンは完全に安全とはいえず、他国で購入し電源を入れたすべてのDJI製品の使用を中止するよう勧告しているという。一方で、顧客の大半が軍や公共安全機関である米国のドローン新興企業は、自社のドローンはセキュリティに優れていると主張している。ドローンの位置とそのデータは暗号化で保護されており、ロシアの対ドローンシステムが簡単に追跡することができない技術を使用していという。
『ウォールストリート・ジャーナル』によると、中国が、ウクライナ紛争におけるDJIドローンなど、軍事的用途として用いることの出来る商業技術を支配していることは、米国の国家安全保障上の懸念につながると一部関係者が主張しているという。ニューヨークのバード大学のデータ分析によると、中国企業は米国の公共安全機関が使用するドローンの9割を供給している。DJIは、その高い技術力、誰でも簡単に使える優れた操作性、安価な価格から、競合他社を含め業界全体から一目置かれている。一方、アメリカのドローンはよりも高価であるだけでなく、企業の製造能力が限られており、非効率的なサプライチェーンのために、手に入れるまで待たされることがあるという。
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