米、大統領選討論会の司会者選びが難航(2016/08/26)
クリントン氏とトランプ氏の大統領選討論会まで1か月あまりとなった。この公開討論会の進行を務める司会者の選出が難航しているという。トランプ氏はこれまでに何度かマスコミと報道の仕方について揉めたこともあり、政治的に中立な司会者を選ぶのが難しいという。このような状況から、大統領討論委員会は司会者の決定を今月下旬から、9月5日以降に延期することを発表した。全米のみならず、世界が注目する討論の司会者選出について、各メディアは次のように報じている。
8月24日付
『CNNマネー』(米)は、今回大統領討論委員会が司会者の発表を遅らせたのは、政治的に中立である司会者の選出に手間取っているためと報じる。今回は特にトランプ氏が問題になっているとする。委員会としては、討論をうまくまとめることのできる人間を司会者にしたいところだが、これまでにもトランプ氏はメディアから不平等な扱いを受けていると主張したり、ときにメディアに対して攻撃的な態度をとったりしてきた。...
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8月24日付
『CNNマネー』(米)は、今回大統領討論委員会が司会者の発表を遅らせたのは、政治的に中立である司会者の選出に手間取っているためと報じる。今回は特にトランプ氏が問題になっているとする。委員会としては、討論をうまくまとめることのできる人間を司会者にしたいところだが、これまでにもトランプ氏はメディアから不平等な扱いを受けていると主張したり、ときにメディアに対して攻撃的な態度をとったりしてきた。今回の討論会でも司会者がクリントン氏寄りの発言や進行を行えば、それを瞬時に嗅ぎ付けて討論会の信頼性事態を根底から揺るがす言動を行う可能性があるとみられている。そのため委員会は司会の選出に今まで以上に慎重にならざるを得ないというのである。
同日付
『ザ・ブレイズ』(米)によると、司会者の条件としては先述の通り政治的に中立であるのはもちろんだが、司会者自身が目立ちすぎず背景に徹することができ、決して議論に巻き込まれない人間だという。ただ、同記事は、誰が司会者になろうとも、討論の進行に関してトランプ氏側から批判を浴びるのは必至だとする。さらに問題を複雑にしているのはクリントン氏の交友関係である。同氏はこれまで30年以上にわたるキャリアの中で、かなりの人数のマスコミ関係の司会者と交流がある。こういったことからもトランプ氏、クリントン氏両氏とも関係が深くない司会者を見つけるのは至難の業ともいえそうである。今回の司会者選出は、1988年から公開討論会の司会者選出を行ってきた委員会が初めて直面する苦難だという。
これまでにも、司会者と大統領候補との距離の取り方で批判を浴びた例はいくつかある。例えばABCニュースのキャスターであるラダッツ氏が2012年にオバマ大統領とロムニー氏の公開討論会の司会を務めたが、1991年にオバマ大統領がラダッツ氏の結婚式に出席したことが明らかになり、批判を浴びた。また、同年同じくオバマ大統領とロムニー氏の公開討論会内で、司会を務めたCNNのクローリー氏が両者の議論に割って入ってオバマ大統領を擁護したとして後に批判を浴びている。
様々な懸念が飛び交う中、2012年に司会を務め、その後引退したCNNのシーファー氏はこう語っている。「誰も審判を見るために野球の試合に来る人はいない。みな選手を見に来るのだ」。重要なのは討論を行う者と、その内容ということか。
同日付
『VOX』(米)は公開討論会は3000万人から7000万人が視聴する重要な番組であり、1回の討論会で司会を務めるのは、当たり前だが1名だけであり、質問内容や進行の決定権を有する重責を担っているとする。また、同記事は委員会が求める司会者の条件として、前述の他に候補者に精通していること、報道の現場での経験が豊富であることも必要だとしていると報じている。このような条件を充たす人物となるとかなり選出が難しいが、記事内ではCBSのディッカーソン氏、CNNのターパー氏、NBCのトッド氏およびホルト氏、PBSのイフィル氏を挙げている。
公開討論会は高視聴率で、生放送で、台本もない。劣勢の候補からすると形勢逆転を狙えるチャンスでもある。今後トランプ氏がクリントン氏より劣勢となれば、公開討論会に積極的に臨むことが予想される。
ただ、公開討論会が大統領選の最終結果に及ぼす影響は実はそれほど大きくないという主張もある。政治科学者のレジエン氏は討論会は短期的には支持率に影響するものの、長期的にその効果が続くことはなく、むしろ党大会での演説の方が選挙結果に影響を及ぼす効果は大きいと語る。例えば2012年には討論会直後はロムニー氏がオバマ大統領よりも優勢とみられていたが、最後はオバマ大統領が勝利した。2004年の大統領選では討論会直後の世論調査ではケリー氏が優勢だったが、結果はブッシュ元大統領の勝利に終わっている。
討論会で優位に立つのはより準備万端で臨んだ候補者だという。トランプ氏がどのような手段に打って出るのか、予測が難しい。ひょっとしたら、しごくまっとうな人間に変わっている可能性もあると同記事は指摘する。同氏の場合「普通の人間」に変わっただけで世論を肯定的な方向に転じさせることが十分に可能だというのである。
公開討論会の内容、その結果、それがおよぼす最終結果への影響から目が離せない。
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米国首都ワシントンD.C.で最低賃金が15ドルに(2016/06/08)
ニューヨーク州やカリフォルニア州に続いて米国首都ワシントンD.C.でも小売業などの最低時給が15ドル(約1607円)に増額される法案が可決された。国が定める最低賃金は7.25ドル(約776円)であるのに比べると随分と高額だ。これは昨今の物価高を受けて、2012年にニューヨークで端を発した賃上げ運動の一環によるものである。アメリカの各州では最低時給の値上げが相次いでおり、社会経済への影響が懸念される。各メディアは以下のように報じている。
6月7日付
『ABCニュース』(米)はニュースを報じ、1年半近く最低時給の引き上げを求めてきたバウザー市長のコメントを掲載している。「これで貧困層の生活水準が多少改善されるとは思うが、15ドルでもワシントンD.C.での生活は厳しい」。
ワシントンD.C.では従前は10.5ドル(約1124円)を最低時給としてきたが、バウザー氏の前任者であるグレー氏の在任中に11.5ドル(約1231円)に引き上げる法案が可決され、来月から施行されることになっている。...
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6月7日付
『ABCニュース』(米)はニュースを報じ、1年半近く最低時給の引き上げを求めてきたバウザー市長のコメントを掲載している。「これで貧困層の生活水準が多少改善されるとは思うが、15ドルでもワシントンD.C.での生活は厳しい」。
ワシントンD.C.では従前は10.5ドル(約1124円)を最低時給としてきたが、バウザー氏の前任者であるグレー氏の在任中に11.5ドル(約1231円)に引き上げる法案が可決され、来月から施行されることになっている。今回可決された15ドルの最低時給へは今後2020年まで段階的に引き上げられ、その後は物価のインフレ率と連動させていくという。
今回の最低時給引き上げについて、コストカットのためにリストラが敢行され、かえって労働者を苦しめることになると主張する専門家もいる。米国下院議員のポール・ライアン氏も今回の法案可決については「最低時給の引き上げは多くの弊害を引き起こす」と、反対の意見を表明している。
三年前のグレー市長時代に、ワシントンD.C.ではウォルマートをはじめとする大手の小売業に従事する者の最低時給を12.5ドル(約1338円)に引き上げようとする動きがあった。しかしこれはウォルマートらが「現在計画中のワシントンD.C.内での新たな出店を行わない」と主張し、強固に反対したため頓挫している。実際、今年に入ってからウォルマートは大型店舗2つの出店計画の中止を発表し、賃上げの動きがかえって貧困層の経済状況を悪化させたとも言われている。
同記事は今回の法案では小売りサービス業の時給にスポットライトが当てられているが、収入をチップに頼っているウェイトレスやバーテンダーなどの時給の変化にも注目すべきとする。今回の法案内でバウザー氏はこれらの職種の時給を従来の2.77ドル(約296円)から7.5ドル(約804円)に引き上げることを提案していたが、これは雇用者側からの猛烈な反対に遭い5ドル(約535円)への引き上げにとどめられている。
同日付
『CBSニュース』(米)では、最低時給の引き上げに好意的な意見を掲載している。家電量販店やレストランでは、最低時給の引き上げにより住居費以外への支出が増えることを期待する声も上がっている。
同記事も今回の法案に反対するポール・ライアン氏のコメントが掲載されている。これに関してはライアン氏の主張によると貧困層救済のためには政府の援助が必要であるが、策が後手に回るため、貧困層をさらなる貧困へと追いやるものであると批判している。
同日付
『PBSニュースアワー』(米)は、「この法案の可決により12万7000人の労働者が直接的な恩恵を受けるだろう」とするバウザー氏のコメントを載せている。
冒頭でも記した通り、アメリカでは最低時給を15ドルに引き上げよういう「15ドルへの戦い」キャンペーンが盛んに行われている。2012年、ニューヨークのファーストフードの店員らが始めたこの運動は各地に飛び火し、カリフォルニアやニューヨークでは時給引き上げが行われ、ロサンゼルスやシアトルでも時給引き上げが決定している。この運動は今後全米に広がることが予測されるが、一方でヴァージニア州の最低時給は国が定める7.25ドル(約776円)の最低時給を採用しておりこういった州との格差や労働力の流出も懸念されている。今後この運動が米経済に与える影響を注視していく必要があるといえる。
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