米の報告書でタイの魚介業界に改善の兆し(2016/06/30)
水産物輸出世界3位のタイでは水産業などにおいて強制労働、人身売買を利用し、違法を行っている国として欧米国に改善を求められているが、アメリカの国務省による人身売買報告書(TIP)では、昨年の要注意レベルから改善が見られたとして、ランクがアップされる見通しとなっている。ようやく軍事政府が法改正に乗り出し信頼回復の兆しが見え始めた結果である。そのような報告書におけるランク改善の裏には中国との南シナ海問題にゆれる東南アジアでの前進をはかりたいオバマ大統領の思惑も見え隠れする。多くの問題を抱える軍政下のタイは、このランクアップで産業界における米からの保障を得て、国内で批判の多い経済を活性化したいとする。
6月29日付
『ロイター通信』は「米人身売買報告書でタイのランク上げ」との見出しで次のように報道している。
・タイは米国に対し米国国務省による人身売買報告書(TIP)(木曜公表)での最低ランク付けを返上するよう抗議してきた。
・米国高官によると、報告書にはタイ政府の人身売買問題特に漁業分野での対処と改善が盛り込まれる見込みで、タイの評価は「3:最低ランク」から「2:要注意リスト」に変更される。...
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6月29日付
『ロイター通信』は「米人身売買報告書でタイのランク上げ」との見出しで次のように報道している。
・タイは米国に対し米国国務省による人身売買報告書(TIP)(木曜公表)での最低ランク付けを返上するよう抗議してきた。
・米国高官によると、報告書にはタイ政府の人身売買問題特に漁業分野での対処と改善が盛り込まれる見込みで、タイの評価は「3:最低ランク」から「2:要注意リスト」に変更される。ジョン・カービー国務省報道官は公表前にはランクに関しノーコメントとする。
・ランク付けは1が最低、2が「注意」で要努力、要観察、3が努力必要なし。タイは2014年6月の軍掌握の数週間後には、最低ランクに下げられた。昨年マレーシアが3に変更された際タイは変更なし、今年の報告書でマレーシアは3で保留。
・タイ政府サンサーン報道官は、ランク変更はプラユット首相が人身売買への国際的批判の改善を誓った証拠、「国際社会に首相の有言実行を示した」と述べている。
・プラウィット防衛相は2へのランクアップは人身問題がなくなった事を意味しない、今後も問題解決を継続する必要があると述べている。
・タイ政府は繰り返し漁業等における人身売買取締を誓ってきた、タイは魚介類の輸出量世界3位、魚業従業者の多くは近隣国のカンボジア、ラオス、マレーシア出身。
・人身売買法規を改正し、漁船の登録制を導入し、サプライチェーンを明確にし違法な闇漁業を取り締まっていた。人権団体は数百万人の移民労働者が漁業界等での虐待の被害をうけているとする。
・虐待の実態がメディアで広く報道されるようになり、西欧諸国の消費者からは、タイ産魚介類への反発の声が拡大している。
・米高官は、タイ軍政と手を結ぼうとする中国にオバマ政権は苛立ちをみせており、近年冷えこんでいたタイとの関係解消で均衡を図ろうという狙いがあるとする。
6月29日付タイ
『バンコクポスト』は「米がタイをランク3から外す」との見出しで以下のように報道している。
・「ロイター」によると、米は人身売買に関するランクでタイを最低ランクから除外、これは軍政権との関係改善につながる見込みである。
・外務省は一年間のタイは状況改善のたゆまぬ努力をしたとし、ソンサック米南アジア太平洋担当長官は、ランクが上がるかに関わらず、人身売買撲滅への努力を続ける、とした。
・人権ウォッチアジア局長代理のフィル・ロバートソン氏は、「ロイター」に対し、(今回の措置は)やっとタイの高官らが長年放置されてきた法改正に着手した事が主な理由だが、取締は氷山の一角だという。
・昨年逮捕された5百あまりの容疑者のほとんどは政府や警察、軍部、地方公務員などとのつながりがあった。2015年タイ政府が国境付近の違法難民キャンプで、ロヒンギャ(ミャンマー西部ラカイン州のロヒンギャ語を話す人々)からの移民を襲撃した後、34人の高官が人身売買への加担で検挙。当時の取締は、移民を虐待する地方警察や公務員による組織的腐敗を一掃する効力なかった。
6月30日付タイ
『ザ・ネーション』は、次のように報じている。
・(今回のランクアップでは)「移民労働者の権利ネットワーク(MWRN)」が米国の決定をサポートしていた。同ネットワークはタイ政府は改善を実行したが、更に問題は続き、「ランク2」となる今後一年は国際社会に真摯な貢献を見せなければならない」とする。
・タイ雇用省で、移民の下請けなどのアウトソーシングへの新たな規制が設けられた事は重要な改善。
・貿易交渉省の局長は、(ランプアップは)タイ国内に精神的に良い影響をもたらし、タイ製品、魚介類の米国輸入業、小売業、消費者へのイメージアップが図れるとする。また、同省幹部は、ランクアップすれば、タイは将来的に環太平洋パートナーシップ(TPP)への参加の必要がなくなるとする。
・国立荷主協議会のウィタナコーン副代表は、タイの製品、特に魚介類、サトウキビ、繊維製品での良いイメージにつながるとした。
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タイメディア; 不正漁業で水産業にメス(2016/01/14)
タイでは水産業において強制労働、人身売買を利用し、違法・無報告・無規制漁業(IUU)を行っている国として、昨年欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会から改善勧告(イエローカード)が出されていた。改善されない場合水産物の輸入を禁止する制裁措置(レッドカード)をとると警告を受けている。タイは世界のシーフードのかなりの部分を供給してきた水産物輸出国であり、アメリカで消費される貝類とエビの大半も、タイなどアジア諸国で捕られていたが、近年このような商品の不買活動の動きも活発化してきている。来週にも改善勧告期限を迎えEUによる査定が行われるとタイメディアが伝えている。
1月14日付タイ
『ザ・ネーション』は、「プラユット首相IUUの漁業不正取締に自信」との見出しで次のように報じた。
「・昨日、プラユット首相はタイ暫定政府は今月EUに提出予定のIUU漁業撲滅に関する報告書の作成が順調であると述べた。
・1月18~22日にEUの代表者が査定のため訪タイし、政府はIUU漁業の報告を提出する予定である。
・昨年施行された水産令2015(改訂版)をはじめとする法令の起草、制定を進めている。...
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1月14日付タイ
『ザ・ネーション』は、「プラユット首相IUUの漁業不正取締に自信」との見出しで次のように報じた。
「・昨日、プラユット首相はタイ暫定政府は今月EUに提出予定のIUU漁業撲滅に関する報告書の作成が順調であると述べた。
・1月18~22日にEUの代表者が査定のため訪タイし、政府はIUU漁業の報告を提出する予定である。
・昨年施行された水産令2015(改訂版)をはじめとする法令の起草、制定を進めている。
・大型船において、EUの調査要請基準220隻(全体の1割)を上回る317隻の大型船を検査、小型船は73艘以上が基準の所、43艘の検査を行った。水産加工工場についてはEU要請81か所のところ115か所検査済である。
・水産局は5か所の工場につき10日間の操業停止措置とし、工業省は1か所を閉鎖措置とした。
・司法長官の報告によると、昨年10月~12月、41件の強制労働と人身売買に対し法的措置が取られ、内8件はトロール漁船での強制労働であった。
・昨年EUはIUU漁業の停止を求めタイに注意勧告を行い、米内務省もタイを昨年人身売買報告書(TIP)においてタイを評価「3」としている。(注)
(注)TIPで評価が最低の「1」となると制裁措置となる。」
同日付タイ
『バンコクポスト』は、「タイの漁業をもっと”クリーン”なイメージに」との見出しで、以下のように伝えた。
「・EUはタイの漁業がIUUの漁業基準に満たず不正であるとし改善を求めており、昨年4月よりタイ政府は改善に努力している。
・世界的なマグロ輸出業者のタイ・ユニオン・グループの役員は国を上げて違法奴隷労働問題の改善を図っていると述べている。
・8か月前発足された違法漁業是正管理センター(CCCIF)は、関係当局や民間企業・団体と協力し調査を進めており、木曜IUU調査報告会議を開き国内外メディアに公表する予定である。
・サイアム・コマーシャル銀行経済情報センターによると、 タイの漁業は年間2億ドルの売り上げ高。」
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