富士通、不具合システム納入で英国郵便局大冤罪事件における膨大な損害賠償リスク【米・英国メディア】(2024/01/10)
富士通(1935年設立)は、英国ポスト・オフィス(PO、1986年設立の郵便・銀行業務部門)向けに勘定系システム「ホライゾン」を長い間提供してきた。しかし、同システムの不具合が原因とみられる英国郵便局大冤罪事件(注後記)が発覚し、現在進められている詳細調査の結果、同システムの不具合に責任があると判断されると、膨大な損害賠償リスクにさらされる可能性がある。
1月10日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース、英国
『BBCニュース』は、英国郵便局大冤罪事件の主たる原因が富士通提供のシステム不具合にあったと認定された場合、膨大な損害賠償リスクを負うことになると報じている。
英国政府閣僚らは、2020年から本格的に着手された英国郵便局大冤罪事件の原因特定に関わる公的調査の結果、富士通が長年POに提供してきた勘定系システム「ホライゾン」の不具合が原因だということになれば、同社は補償を行う必要があると主張している。...
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1月10日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース、英国
『BBCニュース』は、英国郵便局大冤罪事件の主たる原因が富士通提供のシステム不具合にあったと認定された場合、膨大な損害賠償リスクを負うことになると報じている。
英国政府閣僚らは、2020年から本格的に着手された英国郵便局大冤罪事件の原因特定に関わる公的調査の結果、富士通が長年POに提供してきた勘定系システム「ホライゾン」の不具合が原因だということになれば、同社は補償を行う必要があると主張している。
POを管轄する企業・市場・中小ビジネス省のケビン・ホリンレイク政務次官(60歳、2022年就任)は1月8日晩、“調査によって富士通に責任の一端があると判明すれば、英国政府は同社に対して賠償金の一部負担を求めることを検討する”と表明した。
また、メル・ストライド労働・年金相(62歳、2022年就任)は1月9日、『タイムズ・ラジオ』(2020年開局)のインタビューに答えて、“2020年に着手された公的調査は年内に結論が出る見込みだ”とした上で、“この問題のツケは納税者(公的資金)負担になることはないのは明らかだ”と強調した。
その上で同相は、“富士通が多くの意図的ミスを犯し、その結果様々な問題を誘発したと判断されれば、同社にとって非常に深刻な結果を招くことになろう”ともコメントした。
更に、首相府報道官も、“公的調査の結果、原因が特定された企業・関係者には、法的にも金銭的にもそれ相応の責任を課すことになる”との声明を発表している。
これに対して富士通広報担当は、“民間受諾郵便局長らが被った苦痛に関し、当社に一端の責任があることを謝罪する”とした上で、“英国政府の実態調査に真摯に協力していき、全容解明に資するように努めている”と表明している。
なお、同社のシステム「ホライゾン」は、元々英国インターナショナル・コンピューターズ社(ICL、1968年設立)が1990年代に開発したものであるが、1980年代に日本政府の後押しもあって富士通の傘下に入っている。
当時日本政府は、世界のIT業界を牽引する米IBM(1911年設立)に対抗するとの戦略を立て、富士通を含む3大IT企業に資金的援助を積極的に行うこととなり、その一環で同社がICLを買収したものである。
(注)英国郵便局大冤罪事件:2000年から2014年に、700人以上の民間受諾郵便局長が横領や不正経理の無実の罪を着せられた事件。実際には、富士通の会計システム「ホライゾン」の欠陥で、窓口の現金とシステム上の記録額に不整合が発生していたことが原因。この事件では、地域の郵便局の窓口業務を担っていた人々が、支店口座の不足額を埋めるために借金したり、横領罪で収監されたりしたが、これまでに72人の有罪判決が取り消し。また集団訴訟の結果、2019年12月に、郵政の窓口業務を担当するPOが555人に対し、計5,800万ポンド(約90億円)を支払うことで和解。
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米大富豪の政治活動家グループ、トランプ対抗馬としてヘイリィ元国連大使への資金的支援を公式表明【米・英国メディア】(2023/11/30)
2024年米大統領選での復活を目指す共和党では、依然ドナルド・トランプ前大統領(77歳、2017~2021年在任)の支持率が抜きん出ている。しかし、幾つもの訴訟案件を抱えるトランプでは、全米の無党派層の支持は得られないと懸念した米大富豪の政治活動家グループが、大統領選で勝てる候補としてニッキー・ヘイリィ元国連大使(51歳、2017~2018年在任)を資金的支援していくことを公表した。
11月29日付米
『ABCニュース』、
『NBCニュース』、英国
『ザ・ガーディアン』紙、
『BBCニュース』等は一斉に、米大富豪率いる共和党政治活動家グループが、2024年大統領選候補としてニッキー・ヘイリィ元国連大使を資金的に支援していくことを正式表明したと報じている。
2024年米大統領選に対する共和党予備選では、依然ドナルド・トランプ前大統領が60%近い支持を得て他候補を圧倒している。...
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11月29日付米
『ABCニュース』、
『NBCニュース』、英国
『ザ・ガーディアン』紙、
『BBCニュース』等は一斉に、米大富豪率いる共和党政治活動家グループが、2024年大統領選候補としてニッキー・ヘイリィ元国連大使を資金的に支援していくことを正式表明したと報じている。
2024年米大統領選に対する共和党予備選では、依然ドナルド・トランプ前大統領が60%近い支持を得て他候補を圧倒している。
その中で2位候補は、今年10月のアイオワ州(全米で最初の予備選投票州)における世論調査によると、ニッキー・ヘイリィ元国連大使とロン・デサンティス現フロリダ州知事(45歳、2019年初当選)が16%台で並んでいた。
しかし、ニューハンプシャー州(同2番目の州)の直近2つの調査結果では、ヘイリィ氏が2位となってデサンティス氏に差をつけている。
ヘイリィ氏も11月27日、“全米20州以上で固い支持を取り付けられた”と表明していた。
かかる背景に加えて、トランプ候補は共和党内で支持率が高くても無党派層(約40%)から嫌気されていると懸念されていることから、共和党支持の大口献金グループのひとつが11月28日、ヘイリィ氏を同党予備選候補者とし資金的支援等を行う旨公式に表明した。
米実業家で政治活動家のチャールズ・コーク氏(88歳、2009年活動開始のティーパーティ運動を支援、『フォーブス』誌2023年世界富豪ランキング17位)率いる「アメリカンズ・フォー・プロスペリティ」(繁栄を求める米国人集団、AFP、2004年設立の非営利法人)で、2016年、2020年大統領選では支持候補者を選定していなかったが、2024年選挙でヘイリィ氏を選んだものである。
AFPのエミリー・シーデル代表幹事(2017年就任)は声明で、“ヘイリィ氏が現行の政治体制を変革してくれること”を期待したいと言及した。
更に同氏は、“ヘイリィ氏は、米国が抱える最大の課題に取り組み、良い成果をもたらしてくれると信じる”とした上で、“AFPの草の根運動とデータ収集・解析力を以て彼女を最大限に支援していく”とも強調した。
また、AFP上級顧問のマイケル・パーマー氏は、“ヘイリィ氏の政策はAFPの自由市場イデオロギーと概ね一致しており、同氏によって米国民の生活環境改善に寄与してくれる人物だと信じる”と付言している。
これに対してヘイリィ氏は声明で、“全米の何百万人もの草の根運動活動家を抱えるAFPからの支援を光栄に思う”とし、“AFPは今回の選挙における問題を良く理解して、一緒に戦ってくれようとしている”と表明した。
AFPの具体的支援金額についてはまだ明らかにされていないが、今年6月の財務報告では、コーク氏個人及び彼のNPO法人から供出された各2,500万ドル(約37億5千万円)を含めた計7千万ドル(約105億円)が選挙運動資金に充当されると報じられている。
AFPは今年2月、トランプではジョー・バイデン大統領(81歳、2021年)の再選を阻止できないとして反トランプを訴えていたが、共和党支持層ではトランプの支持率が依然高止まりとなっていることを大いに懸念し、今回の対抗馬支援表明に至ったものとみられる。
なお、シーデル代表幹事は、“我々の持つデータによると、有権者の70%が高齢のバイデン候補(81歳)もトランプ候補(77歳)も支持しておらず、若い世代の登場を望んでいる”とコメントしている。
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