シリア政府高官、米国から出されたイラン軍のシリア撤退要求を拒絶【米・ロシアメディア】(2018/05/23)
シリアのアサド政権軍は5月21日、首都ダマスカス南郊で抵抗を続けていた過激派組織イスラミックステート(IS)の残存勢力を完全に掃討したと宣言した。同政権軍は、2011年の内戦勃発以来7年振りに首都全体を掌握したことになるが、これにはロシア・イラン・トルコの後ろ盾が大きく貢献したと言える。そこでこれを面白く思わない米国は、イラン核合意離脱発表を契機に益々敵対するイランを懲らしめようと、シリア政府に対して、イラン軍をシリア領内から撤退させるよう要求してきた。シリア政府は当然のことながら、政権軍と敵対する反体制派を支援する米国など歯牙にもかけず、同要求を一蹴している。
5月23日付米
『AP通信』:「シリア政府高官、米国から出されたイラン軍のシリア撤退要求を一蹴」
シリア政府高官は5月23日、米国が伝えてきた、シリア領内からイラン軍及びレバノンのヒズボラ(注後記)を撤退させるようにとの要求を拒絶した。
シリア外務省のファイサル・メクダド副大臣が、ロシアメディアの『スプートニク・ニュース』に語ったもので、同政府の最大の関心事はシリア主権の回復であって、米国の要求など一切話題にはならないと明言している。...
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5月23日付米
『AP通信』:「シリア政府高官、米国から出されたイラン軍のシリア撤退要求を一蹴」
シリア政府高官は5月23日、米国が伝えてきた、シリア領内からイラン軍及びレバノンのヒズボラ(注後記)を撤退させるようにとの要求を拒絶した。
シリア外務省のファイサル・メクダド副大臣が、ロシアメディアの『スプートニク・ニュース』に語ったもので、同政府の最大の関心事はシリア主権の回復であって、米国の要求など一切話題にはならないと明言している。
マイク・ポンペオ国務長官は今週、イラン核合意に復帰するための諸条件を提示しているが、その中でイラン軍のシリアからの撤退を求めていた。
しかし、メクダド副大臣は、ロシア軍の助けはもとより、イランやヒズボラからの支援も“大変感謝”しているとして、それらの人たちにシリアから出ていくよう話すことなど決してできる訳はないと強調した。
一方、ロシアのアレクサンドル・ラブレンチェフ特命全権公使は、ロシア軍のシリア派遣は同政府から要請があったためであるが、勝手にシリア入りしている米軍等は法に反していると非難している。
ただ、同公使は、ロシアとしてはイラン及びイスラエルそれぞれと良好な関係を維持したいと考えているが、イスラエルがイランのシリア駐留を激しく非難し、両国間でミサイル攻撃の応酬となっていることに憂慮していると述べている。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「シリアからのイラン軍及びヒズボラの撤退要求など全く問題外の話」
メクダド副大臣は5月23日の当ニュースのインタビューに答えて、シリアの支援国であるロシアと敵対している国の要求など、決して呑める話ではないし、第一に米国は、シリア内のテロ組織(反体制派)を支援して、シリアへの介入を企んでいると非難した。
更に同副大臣は、米国は、イラン軍を撤退させて代わりにアラブ軍を駐留させようとしており、正にシリアと他アラブ諸国との対立を煽っているとしか考えられないともコメントした。
なお、これに先立つ5月21日、ポンペオ米国務長官は、イラン核合意に米国が復帰するための条件として、イラン軍のシリアからの撤退を含めて12の要求を発表している。
これに対して、イランのハッサン・ロウハニ大統領は、かかる要求など国際社会が認めるはずがないと強調し、また、イラン革命防衛隊司令官もこれを一蹴している。
(注)ヒズボラ:1982年に結成されたレバノンのシーア派イスラム主義の政治組織、武装組織。アラビア語で「神の党」を意味する。イランとシリアの政治支援を受け、その軍事部門はアラブ・イスラム世界の大半で抵抗運動の組織と見なされている。日本、欧州連合、米国等は、ヒズボラの全体または一部をテロ組織に指定している。
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米・ロシア・英・中国メディア;東アジアにおける日米中軍事戦略(2016/03/24)
東アジアにおける軍事的緊張の高まりは、まず北朝鮮の暴走をどのように食い止めるかで、米中間で表面上の協力体制がみられるものの、胸中では、両国ともしたたかな策略を練っているとみられる。一方、南シナ海をめぐる問題では、米中とも直接的にお互いを非難し、中国はまた、米国に追随する日本も政府見解としての攻撃の手を緩めようとしていない。
各国メディアが伝える今週の動きは次のとおり。
3月23日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用)の報道記事「米国、韓国へのTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備につき中国と交渉希望」:
「・米国務省のローズ・ゴットメラー次官(軍備管理・国際安全保障担当)は3月22日、韓国側とTHAAD配備につき討議を始めたと発言。
・同次官は、何ら決定したことはなく、また、THAADは北朝鮮のミサイル攻撃を広範囲で防ぐためのシステムで、中国の脅威となることはないとし、中国側と協議することを希望すると表明。...
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3月23日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用)の報道記事「米国、韓国へのTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備につき中国と交渉希望」:
「・米国務省のローズ・ゴットメラー次官(軍備管理・国際安全保障担当)は3月22日、韓国側とTHAAD配備につき討議を始めたと発言。
・同次官は、何ら決定したことはなく、また、THAADは北朝鮮のミサイル攻撃を広範囲で防ぐためのシステムで、中国の脅威となることはないとし、中国側と協議することを希望すると表明。
・一方、定例会見で本件につき問われた中国外交部(省に相当)の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は、関係国には注意深い行動を求めるし、ましてや中国の安全保障に関わる如何なる活動も認められないと返答。」
同日付ロシア
『スプートニク・ニュース』の報道記事「中国、南シナ海における米軍のフィリピン基地使用に懸念表明」:
「・中国外交部の華報道官は3月21日、米国とフィリピンが、フィリピンの5基地を米軍が使用すると合意したことに対して、第三国の国益と統治権に脅威となるものと非難。
・南シナ海における中国と台湾及び東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部の国との領有権問題は、2010年に米国のヒラリー・クリントン国務長官(当時)が公式に割って入って以来、米中間の深刻な問題に発展。
・爾来、両大国はお互いに“一方的な活動”と非難し合っている。」
同日付中国
『中央テレビ』(
『新華社通信』記事引用)の報道「南シナ海における米国とフ
ィリピンの軍事協定は同海域の平和と安定を脅かす」
「・中国外交部は、3月18日に米国・フィリピン間で合意の軍事協定は、第三国を対象とすべきではないと非難。
・特に、米軍の使用を容認した5基地のうち、パラワン島のアントニオ・ボーティスタ空軍基地は、中国が所有し、9千フィート(約2.7キロメーター)の滑走路を持つ民間飛行場が整備された南沙(スプラトリー)諸島から僅か160キロメーター圏内。
・中国の軍事評論家は、米軍は必ず同基地に爆撃機、対潜水艦哨戒機、その他戦闘機を配備し、同海域における軍事的脅威を誇示することになると分析。」
また、同日付中国
『シナ(新浪)英字ニュース』(
『新華社通信』記事引用)の報道記事「中
国、日本に対して地域の平和と安定を促進するよう警告」:
「・中国外交部の華報道官は3月23日、日本政府が昨年法制化した“安保関連法”について、今年3月29日に施行すると安倍内閣が3月22日の閣議で決定したことに対して、日本は地域の平和と安全のために平和的対応のみに関わるべきと警告。
・同法によって、戦後70年続いてきた自主防衛の立場を変更し、他国での紛争にも参加が可能となる集団的自衛権を確立。
・同報道官は、日本の歴史的背景から、日本のかかる動きに対して、アジア地域の隣国及び国際社会は深く憂慮しているとも発言。」
一方、同日付英
『メール・オンライン』ニュース(
『ロイター通信』記事引用の報道記事「中
国、ASEA諸国に115億ドルの融資を提案」:
「・中国の李克強(リー・コーチアン)首相は3月23日、中国南部の海南島で開催されたASEAN所属の5ヵ国との首脳会議において、今後115億ドル(約1兆2,900億円)の融資を提案。
・5ヵ国とはミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムで、メコン川流域の国々。
・同首相はまた、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクロード基金(一帯一路政策実現のため中国が設立)からの融資促進を働き掛けるとし、更に、5ヵ国との交易で中国人民元使用が可能とするよう約束。
・ベトナムとは南シナ海で領有権争い、また、ミャンマーでは、中国が支援していた軍事政権に代わって、アウンサン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)が台頭していることから、それぞれ懐柔策に打って出ているとみられる。」
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