既報どおり、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題に関わり、ドナルド・トランプ大統領を初めとする米政権から、中国当局の初期段階での隠蔽や対応の失敗等に対する非難の声が何度も上がっている。そこで中国側としては、米中貿易紛争問題においてと同様、米同盟国の日本を味方につけようとしてか、日中の対COVID-19協力体制を殊更宣伝している。一方で、日本における非常事態対応が遅れた原因のひとつに東京オリンピック・パラリンピック大会開催問題があるが、同組織委員会の職員がCOVID-19に感染したとのニュースについて、今のところ中国メディアのみが報じている。
4月23日付
『チャイナ・デイリィ』:「中国、日本と協力してCOVID-19根絶に一層尽力」
外交部の王毅(ワン・イー)部長(大臣に相当)は4月22日、“日中間友好関係の一環で、COVID-19根絶に向けて、一致協力して対応していく”と表明した。
同日、茂木敏充外相と電話会談した際、双方で確認したもので、同部長は、“中国でも感染抑制に向けて困難な状況が続いているが、日本における感染者急増を受けて、中国側からの支援を可能な限り継続する”と伝えたとも付言した。
4月22日、東京都だけで132人の新たな感染者が確認され、全国の感染者数が1万1,965人と、感染の勢いが止まらない。
西村康稔経済再生兼COVID-19対策担当相は、“地方で感染者増となっており、感染拡大抑制のための対応策が不十分と言わざるを得ない”と表明した。
更に同相は、“外出自粛要請にも拘らず、公園、観光地、スーパーマーケット、ショッピング街が混雑していることにつき、非常に懸念している”とも付言した。
この懸念表明に呼応するかのように、『NHK』の調査の結果、東京、大阪、京都市内の病院の80%以上が既に患者で埋まっているとの報道がなされている。
一方、4月22日付『新華社通信』:「東京2020大会組織委員会職員がCOVID-19感染」
2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会は4月22日、30代の男性職員がCOVID-19に感染したと発表した。
同声明文によれば、当該男性は軽症ながら、目下自宅隔離させ、また、濃厚接触者も自宅待機させた上で、同組織委事務所も閉鎖して消毒するとしている。
安倍晋三首相が4月7日に、東京都等7都府県に対して緊急事態宣言を発令したことから、同組織委でも職員に対してテレワーク導入を指示していたという。
ただ、感染経路や、同感染職員がどの位の頻度で事務所に出勤していたかは、まだ明らかにされていない。
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猛威を振るう新型コロナウィルス(COVID-19)については、米国を筆頭に、初期段階での中国政府及び世界保健機関(WHO)の対応のまずさが感染流行をもたらしたと責任追及している。これに対して中国側は、問題が深刻化している国々への医療品等の提供、また、医療従事者の派遣等で追及の矛先を逸らそうとしている。そしてこの程、最初にCOVID-19の危険性について警鐘を鳴らした武漢市の呼吸器専門医(後に省政府から勲功賞受賞)が、初期段階からの地元政府や中央政府保健局の対応について称賛していると中国メディアが報じた。ただ、最初に警鐘を鳴らして懲罰を受けた医師(後に死亡)や、担当病院の隠蔽を告発した医師が所在不明になっていること等から、当該呼吸器専門医の証言をどこまで信じてよいか疑問は残る。
4月20日付
『ニューズウィーク』誌:「COVID-19の危険性を最初に発信した武漢市専門医、初期段階での政府の対応は“大変迅速”だったと擁護」
COVID-19に関し、国際社会が中国当局の隠蔽等について非難の声を上げているが、最初に同ウィルスの危険性について警鐘を鳴らした地元医師が、初期段階からの政府関係者の対応に問題はなかったと擁護する発言をしている。
湖北省立中国・西洋医療統合病院の呼吸器専門の張集賢(チャン・シーチャン)医師が、中国国営メディア『CGTN(中央テレビ国際版)』の4月18日番組でコメントしたもので、12月26日の段階でCOVID-19の危険性を疑って関係当局にはたらきかけた同医師は、初期段階での地元政府関係者の対応は迅速だったと証言した。...
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4月20日付
『ニューズウィーク』誌:「COVID-19の危険性を最初に発信した武漢市専門医、初期段階での政府の対応は“大変迅速”だったと擁護」
COVID-19に関し、国際社会が中国当局の隠蔽等について非難の声を上げているが、最初に同ウィルスの危険性について警鐘を鳴らした地元医師が、初期段階からの政府関係者の対応に問題はなかったと擁護する発言をしている。
湖北省立中国・西洋医療統合病院の呼吸器専門の張集賢(チャン・シーチャン)医師が、中国国営メディア『CGTN(中央テレビ国際版)』の4月18日番組でコメントしたもので、12月26日の段階でCOVID-19の危険性を疑って関係当局にはたらきかけた同医師は、初期段階での地元政府関係者の対応は迅速だったと証言した。
同医師は、診断した患者の病状から重い感染症を疑い、武漢疾病予防管理センターに事態報告したところ、即座に調査チームが12月27~29日に派遣され、集団感染の可能性等につき綿密な調査が始められたと言及した。
国際社会から、初期段階での中国当局の隠蔽等の嫌疑がかけられている件について、同医師は、患者の病状、ウィルスの特定、感染の度合等々、詳細な知見が得られる前に、悪戯に公表することは、必ずしも適当ではないとも付言している。
更に同医師は、2003年時に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の際も担当したが、“今回のCOVID-19について、初めはここまで感染力が強く、あっという間に感染流行となるウィルスだとは思いもしなかった”とも証言している。
なお、武漢市がCOVID-19による死者数を少なく報告していると国際社会から非難されていたためか、同市当局は先週、死者数を50%も上積みした数値を公表した。
また、ドナルド・トランプ大統領およびマイク・ポンペオ国務長官が、中国当局の透明性に欠ける対応を非難し、その結果世界流行をもたらしたと責任追及しているが、中国国営メディアも当局高官も、米国こそが自身の流行食い止めに失敗した責任逃れをしていると反論している。
一方、同日付中国『チャイナ・デイリィ』:「中国は根拠のない非難で国際社会に誤解されることを望まず」
中国はCOVID-19に関し、米国が目下悲惨な目に遭っていることを十分理解し、同情もしている。
従って、中国での感染再燃の恐れや医療用品の国内での必要性が高いにも拘らず、米国はもとより世界の国々へ、できる限り支援の手を差し伸べようと努めている。
かかる状況下、中国としては、根拠のない誹謗中傷によって、国際社会に誤解されることがないよう切望する。
今は、政治闘争とか誰かに責任転嫁をする場合ではなく、国際社会が一致してCOVID-19根絶に向けて協同すべきときである。
従って、COVID-19が中国で最初に見つかったからと言って、中国発症だと決めつけるべきではなく、あくまでも、科学的調査の結果に委ねるべきである。
今日現在、COVID-19がどこから来たのか、科学的研究による結論は出ていない。
にも拘らず、“中国ウィルス”と、全く不適切な呼称が用いられることは容認できない。
例えば、AIDS(後天性免疫不全症候群、1981年以降に流行)が初めて米国で報告された際、“米国エイズ”と呼んだ人はいるだろうか?
また、H1N1ウィルス(豚インフルエンザ)が2009年に北米で発症し、世界流行になった際、“米国ウィルス”と呼ばれただろうか?
今年になって、米国におけるインフルエンザの感染率及び死亡率は大変高かった。
従って、世界のメディアは、米国においてはインフルエンザとCOVID-19の違いをよく理解されていないのではとの疑問の声を上げていた。
また、『ニューヨーク・タイムズ』紙の4月8日報道によると、2月中旬頃にニューヨークで流行していたウィルスは、遺伝子分析の結果、欧州由来のものだとされている。
以上より、今は誰かをヒステリックに責めるのではなく、多くの人の命を救うために世界がひとつになって、COVID-19根絶に最善を尽くすべきときである。
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