米メディア;オバマ政権、シェルの北極海油田開発を承認(2015/08/20)
3月30日付「米石油業界は北極海油田開発を急げ!」の中で、“全米石油審議会は、原油価格の暴落、在庫過多等の逆風にも拘らず、将来に備えて北極海油田開発に至急取り掛かるべきである。さもなければ、米国は石油を海外からの輸入に頼るリスクを背負うことになると提言した”と報じた。それから4ヵ月余りが過ぎて、この程漸くオバマ政権が、英オランダ石油大手のロイヤル・ダッチ・シェル(シェル)に対し、アラスカ州沖の北極海での原油や天然ガスの採掘を承認したと米メディアが伝えた。
8月17日付
『ロス・アンゼルス・タイムズ』紙は、「シェル、漸く北極海油田開発の許可取得」との見出しで、「オバマ政権は8月17日、安全・環境執行局(内務省)が環境影響評価の結果問題がないことを確認したことから、シェルが申請していた、アラスカ沖の北極海での原油採掘を正式に承認した。シェルはこれまで、北極海油田開発に8年をかけ、70億ドル(約8,750億円)余りを費やしている。」とし、シェル広報担当のカーティス・スミス氏のコメントを引用して、「砕氷船の故障等から、環境評価に時間を要したこともあり、北極海の凍結が始まる9月末まで時間的猶予がないため、至急石油探査作業に取り掛かる。...
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8月17日付
『ロス・アンゼルス・タイムズ』紙は、「シェル、漸く北極海油田開発の許可取得」との見出しで、「オバマ政権は8月17日、安全・環境執行局(内務省)が環境影響評価の結果問題がないことを確認したことから、シェルが申請していた、アラスカ沖の北極海での原油採掘を正式に承認した。シェルはこれまで、北極海油田開発に8年をかけ、70億ドル(約8,750億円)余りを費やしている。」とし、シェル広報担当のカーティス・スミス氏のコメントを引用して、「砕氷船の故障等から、環境評価に時間を要したこともあり、北極海の凍結が始まる9月末まで時間的猶予がないため、至急石油探査作業に取り掛かる。ただ、今年中に原油層に到達できるか判らない。なお、実際の原油生産は、探査作業完了後少なくとも10年はかかるとみる。」と報じた。
8月18日付
『AP通信』は、「オバマ大統領のアラスカ州訪問直前に、北極海油田開発承認」との見出しで、「シェルの北極海油田開発の最終承認は、オバマ大統領の今月末のアラスカ州訪問直前になされた。環境保護団体の代表は、アラスカ州で気候変動の危険性等につき演説するのに、温暖化ガス発生の多い石油火力発電の燃料となる石油開発の許可を与えるなど、全く矛盾していて、米国の温暖化対策の信憑性につき世界に間違ったメッセージを送ることになる、と痛烈に批判した。」とし、ホワイトハウスのフランク・ベネナティ報道官(エネルギー・気候変動担当)のコメントを引用して、「政府はこれまで、化石燃料依存度を減じるため、再生エネルギー開発に重点的に取り組んできている。しかし、経済発展や世界のエネルギー安全保障の確保も考えながら、慎重かつ安全に取進める必要があり、一夜にして再生エネルギーに転換することは不可能である。」と報じた。
北極海には、世界全体の原油埋蔵量の約1割が賦存すると言われ、米国領内でも、約220億バレルの原油埋蔵量があるという。しかし、メキシコ湾でのBPの海底油田流出事故をみるまでもなく、自然条件がはるかに厳しい北極海の油田開発では、石油流出事故が更に頻発するおそれがあるとして、グリーンピース等環境保護団体は、シェルの油田開発作業に以前から抗議行動を展開している。
一方、2016年の大統領選の民主党候補に名乗りを挙げている、ヒラリー・クリントン前国務長官(67歳)が、オバマ大統領の原油採掘承認について、採掘のリスクに見合わないなどとして、反対する声明を出した。オバマ政権の重要閣僚だったクリントン氏が、政権の判断に真っ向から反対するのは異例であるが、大統領選を睨み、民主党の有力な支持基盤のひとつである、環境保護派の支持を取り付ける狙いがあるとみられる。
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米メディア;北朝鮮、日本からの解放70年を迎えての抵抗(2015/08/10)
岸田外相は8月6日、クアラルンプールで北朝鮮の李洙墉(イー・スヨン)外相と会談した際、拉致被害者らの再調査について、1年以上たっても、具体的な見通しが立っていないことを厳しく質したが、李外相はただ、調査は誠実に行っていると、当たり障りのない回答をした。李外相は、金正恩(キム・ジョンウン)第一書記と近い関係にあることから、事態の打開への期待感があったが、逆に近い関係にあるがために、日本との様々な交渉の駆け引きの材料、切り札となる拉致問題について、軽々にコメントすることは憚られたとも言える。それが裏付けられるように、北朝鮮はこの程、日本の植民地時代に設定された標準時間を、日本の占領下から解放された70年の節目の年に元に戻す、と公表したと米メディアが伝えた。
8月7日付
『ロス・アンゼルス・タイムズ』紙は、「北朝鮮、新たな標準時間設定で日本にしっぺ返し」との見出しで、「北朝鮮国営の朝鮮中央通信が8月7日に報じたところによると、北朝鮮の最高人民会議常任委員会は、日本の植民地支配からの解放70年に当る8月15日に、北朝鮮の標準時間を30分遅らせることを決定し、“平壌(ピョンヤン)時間”と命名したという。北朝鮮は、1910年に日本の支配下になって以降、日本と同じ標準時間、すなわちグリニッジ標準時より9時間進んだ時間となっていた。...
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8月7日付
『ロス・アンゼルス・タイムズ』紙は、「北朝鮮、新たな標準時間設定で日本にしっぺ返し」との見出しで、「北朝鮮国営の朝鮮中央通信が8月7日に報じたところによると、北朝鮮の最高人民会議常任委員会は、日本の植民地支配からの解放70年に当る8月15日に、北朝鮮の標準時間を30分遅らせることを決定し、“平壌(ピョンヤン)時間”と命名したという。北朝鮮は、1910年に日本の支配下になって以降、日本と同じ標準時間、すなわちグリニッジ標準時より9時間進んだ時間となっていた。」とし、韓国統一省当局者のコメントを引用して、「短期的には30分の時差が生じることで、北朝鮮の開城(ケソン)工業団地(注後記)に進出している韓国企業にとって少々不便になるし、長期的には、南北間の統一に向けて、基準や違いをなくそうとする努力に水を差すことになろう。」と報じた。
同日付
『CNBCニュース』(
『ロイター通信』記事引用)は、「北朝鮮、平壌時間設定で日本の鼻を明かす」との見出しで、「北朝鮮は経度127度30分にあるため、1908年に標準時間を設定した際は、グリニッジ標準時間より8時間30分進んでいた。しかし、1910年に日本の占領下になってからすぐの1912年に、経度135度にある日本の標準時間に設定変更されていた。朝鮮中央通信によると、日本帝国主義者は、標準時間まで奪う許しがたい犯罪行為をはたらいたが、今こそ民族の自主権を守るため、標準時間を元に戻すことにしたという。」と伝えた。
一方、同日付
『ロイター通信』は、「北朝鮮製の商品を扱うストアがソウルで盛況」との見出しで、「北朝鮮の開城工業団地には、2003年に造成工事が起工されて以降、韓国企業が進出し始め、現在は125社の韓国企業が現地生産・製造を行い、5万3千人の北朝鮮従業員が就業している。ところが、南北間の政治的軋轢から、現地生産事業及び生産品の韓国他向けの販売がしばしば阻害されてきた。そこで、現地進出の企業12社が立上り、民間ベースでの生産・商品販売ルート拡充を図ることとし、今年5月にソウルに2階建ての“開城製商品直売ストア”を開店させた。北朝鮮の若い従業員は呑み込みが早く、また、韓国製の素材を使用していることから、安くて品質の良い商品という評判が立ち、僅か3ヵ月で14万ドル(約1,750万円)も売上げている。」と報じた。
相変わらずギグシャクしている日韓関係と同様、民間主導のビジネスや文化の交流は、政治的問題を度外視したところで繁栄すると言えよう。
(注)開城工業団地:北朝鮮南端の開城市郊外にある経済特別区。北朝鮮が土地と労働力を、韓国が技術と資本を提供して、開城に一大工業団地を造るという計画で、2000年6月、韓国金大中(キム・デジュン)大統領と北朝鮮金正日(キム・ジョンイル)総書記との間で行われた首脳会議で合意され、開発・建設が開始された。2011年に第一期100万坪の造成が完工している。
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