米・フランス・フィンランド・韓国・北朝鮮メディア;問われる”報道の自由”(2016/04/21)
「表現の自由」に関する国連特別報告者として来日したデービッド・ケイ氏(米カリフォルニア大教授)が4月19日、日本での調査を踏まえて、「日本の報道の独立性は重大な脅威に直面している」と表明した。そして、それを裏付けるかのように、この程国際NGO「国境なき記者団(RWB、注後記)」の発表した国別ランキングにおいて、日本は前年より11下がって72位(同組織定義では“問題な状態”と評価)まで下落した。なお、主要7ヵ国(G7)も、米国を除いて全て評価を下げている。
4月20日付米
『ロス・アンゼルス・タイムズ』紙の報道記事「日本、報道の自由度でタンザニアよりも下位に下落」:
「・国際NGOのRWBが4月20日に公表した、報道の自由の評価に関する国別ランキング(180ヵ国・地域対象)で、日本はタンザニア(中央アフリカ東部の共和国)よりも下位の72位まで11位下落。
・今年の結果では、欧州が最も評価が高く、アジア太平洋地域の落ち込みが深刻。
・特に日本の評価下落が著しく、2011年3月発生の福島原発事故に関わる報道の不透明さ、2013年に安倍政権が制定した特定秘密保護法によるメディアの自主規制の昂揚、また、安倍首相の友人で国営放送NHK会長に就任した籾井勝人氏の“政府見解からはずれた報道は慎むべし”との発言、更には今年2月、高市早苗総務相による“(不公正な放送を繰り返す放送局の)停波発言”等々、報道の自由を脅かす問題が続発。...
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4月20日付米
『ロス・アンゼルス・タイムズ』紙の報道記事「日本、報道の自由度でタンザニアよりも下位に下落」:
「・国際NGOのRWBが4月20日に公表した、報道の自由の評価に関する国別ランキング(180ヵ国・地域対象)で、日本はタンザニア(中央アフリカ東部の共和国)よりも下位の72位まで11位下落。
・今年の結果では、欧州が最も評価が高く、アジア太平洋地域の落ち込みが深刻。
・特に日本の評価下落が著しく、2011年3月発生の福島原発事故に関わる報道の不透明さ、2013年に安倍政権が制定した特定秘密保護法によるメディアの自主規制の昂揚、また、安倍首相の友人で国営放送NHK会長に就任した籾井勝人氏の“政府見解からはずれた報道は慎むべし”との発言、更には今年2月、高市早苗総務相による“(不公正な放送を繰り返す放送局の)停波発言”等々、報道の自由を脅かす問題が続発。」
同日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』の報道記事「報道の自由が世界的に悪化」:
「・RWBのクリストフ・デロワール専務理事は4月20日、多くの国家権力が報道管制を強化しようとしており、特に南米諸国で報道弾圧が激化と警告。
・最下位の180位はエリトリア(アフリカ北東部の一党独裁国家)で、179位北朝鮮、178位トルクメニスタン(中央アジア南西部の共和国)、177位シリア、176位中国は昨年と同じ。
・最上位はフィンランドで6年連続の首位。
・米国は41位(昨年49位)だが、依然国家による秘密情報収集(スパイ活動)が問題。
・評価大改善は30位のチュニジア(アフリカ北端の共和国、昨年96位)及び22位のウクライナ(東欧の共和国、昨年107位)。
・一方、大改悪はブルネイ(東南アジアのイスラム強国)及びタジキスタン(中央アジアの共和国)の34位下落。
・地域別には、欧州が最上位で次にアフリカが躍進、続いてアメリカ大陸、アジア、東欧、中央アジアの順。最悪な地域は北アフリカと中東。」
同日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『AFP通信』記事引用)の報道記事
「報道の自由を監視する国際組織が“政府宣伝の時代”に突入と警告」:
「・RWBのデロワール専務理事は、新技術のお蔭で、国家権力が低コストで容易に報道規制を求める措置が可能に。
・安倍政権下の日本では、メディアによる自主規制の昂揚が認められたため、報道の自由度の評価は72位まで下落。
・トップはフィンランドで、以下オランダ、ノルウェーと北欧諸国。」
4月21日付フィンランド
『フィンランド・タイムズ』紙の報道記事「フィンランド、報道
の自由度評価で6年連続首位」:
「・フィンランドはRWBの報道の自由度評価で6年連続の首位。
・以下、2位オランダ、3位ノルウェー、4位デンマークと北欧が続き、5位ニュージーランド、6位コスタリカ(中央アメリカ南部の共和国)、7位スイス、8位スウェーデン、9位アイルランド、10位ジャマイカ(カリブ海の立憲君主国で英連邦の一国)。
・また、16位ドイツ(昨年12位)、38位英国(同34位)、41位米国(同49位)、45位フランス(同38位)、72位日本(同61位)、148位ロシア(同152位)。」
4月20日付韓国
『KBSニュース』の報道「韓国、報道の自由度で70位に下落」:
「・韓国の報道の自由度評価は70位と、今世紀最悪の結果。
・しかも、2013年50位、2014年57位、2015年60位と悪化傾向。
・政府によるメディア報道への干渉度合いが強まり、メディアの独立性が脅かされていることが原因。」
同日付北朝鮮
『北朝鮮時報』の報道記事「北朝鮮、報道の自由度評価でまたも下から2番
目」:
「・北朝鮮の報道の自由度評価は179位で、またしても下から2番目。
・国際組織が同評価を始めて15年になるが、報道の独立性の欠如、海外ラジオ放送の受信妨害、インターネット通信の禁止措置の理由から、北朝鮮は常に下位に低迷。
・北朝鮮憲法第67条では報道の自由が認められているが、実際は新聞、ラジオ、テレビとも、金一族、朝鮮労働党及び朝鮮人民軍の宣伝の手段。
・なお、韓国も10位評価を下げて70位。」
日本は、2010年(民主党鳩山政権)以前まで一桁台の指標(低いほど報道の自由度が高い)が続き、世界の中でもトップクラスの順位を誇っていた。しかし、近年ではLAタイムズ紙記事で述べられた種々の理由によって年々評価を下げ続けており、順位も2010年の11位から、2014年59位、2015年61位で今年の評価では72位まで落としている。先進国の中では特に悪い状態で、G7の中ではイタリア(77位)と同様に下位に低迷している。
(注)RWB(フランス語ではRSF):言論の自由(または報道の自由)の擁護を目的としたジャーナリストによる非政府組織。1985年、フランスの元ラジオ局記者ロベール・メナールによってパリで設立。
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米・フランスメディア;東京オリンピックを襲う憂鬱(2016/03/08)
2020年東京オリンピックについては、新国立競技場建設計画の白紙撤回、エンブレムの遣り直しのトラブルがあったかと思えば、開催地決定の際の不正問題まで持ち上がり、正に踏んだり蹴ったりである。そして今度は、新たに採用決定された新国立競技場に聖火台を設置する場所が設計されていなかったという、全く初歩的なミスが発覚している。日本人でなくとも、本当に東京オリンピックは大丈夫なのかと、他国メディアも本気で心配している。
3月4日付米
『ロス・アンゼルス・タイムズ』紙の報道記事「東京オリンピック用の新国立競技場に新たな問題発生」:
「・東京オリンピック組織委員会は昨夏、新国立競技場建設費用が20億ドル(約2,300億円)を遥かに超える見通しとなったことから、原計画を白紙撤回したが、今度は、新規採用の建設計画で、聖火台を設置する場所がないことが判明。
・新建設計画では木がふんだんに使われていることから、消防法の規則上、施設外に設置することが必要。...
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3月4日付米
『ロス・アンゼルス・タイムズ』紙の報道記事「東京オリンピック用の新国立競技場に新たな問題発生」:
「・東京オリンピック組織委員会は昨夏、新国立競技場建設費用が20億ドル(約2,300億円)を遥かに超える見通しとなったことから、原計画を白紙撤回したが、今度は、新規採用の建設計画で、聖火台を設置する場所がないことが判明。
・新建設計画では木がふんだんに使われていることから、消防法の規則上、施設外に設置することが必要。
・新たな場所等は決まっておらず、遅延気味の準備計画が益々後ろ倒しとなる恐れ。
・組織委と関係省庁間の連絡不行き届きが問題発生の原因。」
同日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『AFP通信』記事引用)の報道記事「(開催地決定の際の)不正疑惑の中、東京オリンピック組織委専務理事は印象悪化を否定」:
「・東京オリンピック組織委の武藤敏郎専務理事は3月4日、AFP通信のインタビューに答えて、フランス当局が調査している(開催地決定の際の)不正疑惑含めて、数々の問題が発生しているが、準備は着々と進んでおり、懸案の問題はひとつひとつ解決していくことが肝要とコメント。
・新国立競技場建設計画の白紙撤回、採用したエンブレム撤回・遣り直し等問題が続いているが、直近では、フランス検察当局が、今年のリオ・デジャネイロオリンピックと東京オリンピックの開催地決定の際、不正が行われたとの疑惑につき捜査を開始。
・更に、2013年に国際オリンピック委員会(IOC)が東京を開催地に選んだ際の原予算に比し、現在では6倍、リオ・オリンピックの3倍に匹敵する150億ドル(約1兆7,100億円)にも膨張。
・同専務理事は、予算をオーバーすることになったザハ氏設計の原案を取り止めたり、1964年オリンピック時の施設を最大限利用したりするなどして、15億ドル(約1,710億円)節減しているとコメント。
・なお、東京オリンピック開催に伴う経済波及効果は30兆円(2,630億ドル)と試算。」
一方、3月5日付米
『ニューズウィーク』誌の報道記事「日本は何故2020年東京オリンピ
ックに興奮しているのか」:
「・オリンピック開催都市は、2012年ロンドンの126億4千万ドル(約1兆4,400億円)、2014年ソチ冬季大会の510億ドル(約5兆8,100億円)等膨大な費用がかかることから、オリンピック後の投下資本回収問題が重く圧し掛かっている。
・東京オリンピックについても、開催決定時の予算30億ドルが、現在では6倍近くになっているとの報道。
・しかし、東京オリンピック組織委の武藤専務理事は、オリンピックはスポーツの祭典だけでなく、最先端技術を世界に発信するまたとない機会と発言。
・具体的には、安倍首相も導入に注力している、無人タクシー(ロボットタクシー)の普及であり、また、選手達を競技場まで輸送する水素電池車、更には、選手村や数々の競技施設への出入りに使用される顔認証システム等々であると強調。
・1964年東京オリンピック開催時は、戦後僅か20年での復活を世界に示すのに十分な様々な事態;新幹線、高速道路等の大規模インフラ設備、自動車社会の確立、カラーテレビの普及や衛星打上げ等々、世界を驚かせ、また、その後も目覚ましい経済発展。
・しかし、世界でも稀に見る高齢化社会を迎えている現在の日本は、前回オリンピック時のような経済復興は期待できないため、先端技術を世界に発信することで新たなステータスを築くとの決意。」
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