フィリピンは、南シナ海における中国との領有権問題について国際仲裁裁判所に提起しており、今年半ばに出るとされる同審理結果について期待を持って待っている。一方、その結果如何にもよるが、今後同盟国の米国と、経済連携の深い中国とそれぞれどう付き合っていくのか、その方向性を決定する同国大統領選がいよいよ2週間後に迫っている。
4月23日付米
『ユーラシア・レビュー通信』の報道記事「米国と中国の狭間で揺れる2016年のフィリピン」:
「・これまでのフィリピン大統領選では、経済・雇用・福祉が主な争点であったが、今年の大統領選の争点は、海外及び国内の安全保障であり、また貿易規模の大きい中国との関係をどうするかに係っている。
・大統領選をリードするロドリゴ・ドゥテルテ候補(71歳、同国南端のダバオ市長)は、南シナ海における領有権争いについて中国と協調を図り、中国と経済連携を更に強化すべきと発言。...
全部読む
4月23日付米
『ユーラシア・レビュー通信』の報道記事「米国と中国の狭間で揺れる2016年のフィリピン」:
「・これまでのフィリピン大統領選では、経済・雇用・福祉が主な争点であったが、今年の大統領選の争点は、海外及び国内の安全保障であり、また貿易規模の大きい中国との関係をどうするかに係っている。
・大統領選をリードするロドリゴ・ドゥテルテ候補(71歳、同国南端のダバオ市長)は、南シナ海における領有権争いについて中国と協調を図り、中国と経済連携を更に強化すべきと発言。
・更に、米国がどこまでフィリピン国防を支援するか疑問ともコメント。
・ドゥテルテ候補は長期にわたるダバオ市長任期中、多くの犯罪者を極刑にしたり、依然女性の保護や人権を無視する発言を繰り返すこともあって、米国は特に同候補を強硬に非難。
・ただ、ベニグノ・アキノ大統領とアルベルト・デル・ロザリオ外相が中国との領有権争いに傾注したことから、フィリピン・中国間関係がギクシャクしていることに憂慮。
・更に、米国のみに肩入れすることは、中国関係に影響を与えるだけでなく、フィリピン南部で暴れ回るイスラム過激派を勢い付かせるとの懸念。
・従って、中国関係の修復、例えば中国主導のアジア・インフラ投資銀行(AIIB)の融資を仰いで、国内インフラ開発を促進すべきとの声。」
4月25日付米
『タイム』誌の報道記事「フィリピン大統領選のトップ候補、麻薬に侵されたら自身の子供であろうと極刑にすると発言」:
「・フィリピン大統領選のトップ候補であるドゥテルテ氏は4月24日のテレビ討論会で、もし自分の子供であろうと違法な麻薬に手を出したら、極刑に処すると過激発言。
・彼は4月半ばにも、1989年に豪州の宣教師の女性が暴漢に強姦され、殺された事件に関し、自身もその場にいたら、その美しい宣教師を最初に強姦したかも知れないと暴言を吐いて、米国・豪州両大使から非難。
・しかし、5月9日に迫った大統領選に向けて、依然33%の支持率を誇り、2位のグレース・ポー上院議員(47歳)の24%を引き離している。」
同日付シンガポール
『アジア・ワン』オンラインニュース(
『AFP通信』記事引用)の報道記事「フィリピン大統領選候補、強姦発言にも拘らずリード広げる」:
「・ドゥテルテ候補の強姦発言後の4月18~20日に行われた世論調査の結果でも、同候補の支持率は33%と、3月時の27%から更に上昇。
・支持者は、同候補の強姦発言は冗談と捉えており、むしろ凶悪犯罪及び違法麻薬を許さないという厳しい態度を評価。
・政治評論家のフランシスコ・マグノ氏は、ドゥテルテ候補の支持率の高さは、国民が今、女性の保護や人権よりも、強いリーダーを求めていること、及び、他3候補が支持を取り合っていて、結果としてドゥテルテ候補を利してしまっていると分析。
・また別の評論家は、ドゥテルテ候補がトップの支持率を得ているのは、今のアキノ大統領の下、大層な経済発展を成し遂げたものの、依然フィリピン人の4人に1人が貧困に喘いでいることから、資産家や特権階級出身の大統領はいらないという気持ちの表れ。」
同日付フィリピン
『マニラ・ブルティン』紙(
『AP通信』記事引用)の報道記事「現職市長、5月9日投票の大統領選に向けてリード広げる」:
「・フィリピンのパルス・アジア世論調査会社が4月24日に発表した結果では、ダバオ市長のドゥテルテ候補が34%の支持率で、2位のポー上院議員の22%と大きな差。
・但し、評論家の多くは、ドゥテルテ候補が、経済連携の強い米国に痛烈な批判を繰り返し、また、国内のイスラム過激派一掃の支援を仰いでいる豪州に対して、かつての強姦事件に関し、冗談を言って結果として豪州人を傷つける等々、両国を敵に回すような発言をしていることから、両国から疎遠にされる恐れがあると批判。」
閉じる
自らの戦争体験を基に描いた戦争漫画で戦争の不条理を、また、創造した妖怪漫画を通じて異文化交流を掲げて平和を訴えた漫画家、水木しげる氏が亡くなった。朝日新聞は12月2日付社説で取り上げるほどであったが、各国メディアもその死を悼むニュースを流している。
11月30日付米
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、「漫画家水木しげる氏、93歳で逝く」との見出しで、「“ゲゲゲの鬼太郎”シリーズや、戦争体験を綴った漫画で著名な水木しげる氏が11月30日、93歳で亡くなった。水木氏の事務所スタッフによると、自宅で転んで頭を打ち、11月11日から入院していたという。彼は、第二次大戦中にパプア・ニューギニア(編注;当時はラバウル)に送られ、そこで多くの戦友と彼の左腕を失った。その体験を踏まえた戦争漫画や、彼が創作した妖怪シリーズで平和を訴えた。」とし、「水木氏は1991年に紫綬褒章を、2010年に文化功労章を受章した。また、水木氏はフランスのアングレーム国際漫画賞も受賞している。」と報じた。
12月1日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「周りに影響を与える漫画家、水木しげる氏逝去」との見出しで、「今や日本では、漫画やアニメが溢れているが、水木氏は、1989年に60歳で亡くなった手塚治虫氏(鉄腕アトムの生みの親)と並び称される程著名な漫画家であった。その水木氏は、2003年に手塚治虫文化賞を受賞した際、手塚氏は夜を徹して漫画を描いたので早逝してしまったが、自身はなまけ者(朝寝坊)だから長生きしていると述べていた。」とし、「水木氏の1971年の作品、“劇画ヒットラー”は今年英語版が出版され、世界で広く称賛された。また、1979年、福島原発事故が発生する30年以上も前に、“福島原発の闇”という題材の作品を発表していた。」と伝えた。
同日付英
『BBCニュース』は、「巨匠、水木しげる氏を悼む」との見出しで、「水木氏の訃報に接し、世界中の多くのファンが、ツイッターやフェイスブックで別れを惜しんでいる。あるファンは、あの世で彼が創った妖怪たちと楽しんで欲しいとつぶやいている。」と報じた。
また、同日付シンガポール
『アジア・ワン』オンラインニュース(
『ロイター通信』記事引用)は、「戦争の恐ろしさを綴った漫画家、93歳で死去」との見出しで、「1991年に刊行された教育漫画シリーズ(編注;コミック昭和史)で、戦時中の日本兵による虐待;例えば、ある将校が日本刀で5、6人の土着の人を試し切りしたシーン、などを克明に描いている。」と伝えた。
閉じる