5月9日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュースの報道記事「フィリピンの変革は不要」:
「・フィリピンのトランプと言われるほど、数々の暴言や強硬な態度を見せてきたロドリゴ・ドゥテルテ候補(71歳)であるが、事前の世論調査の結果どおり、このまま大統領に選出される運び。
・ベニグノ・アキノ現大統領は就任6年で、かつて“アジアの病人”と揶揄された同国を見事に立ち直らせたが、依然同国民の4分の1は貧困、また、マニラ市内の交通渋滞は改善できぬまま、後任にバトンタッチ。
・フィリピンは今年、原油低価格や健常な消費に助けられて、同国が近隣諸国より更に発展すると期待されるが、後任がドゥテルテ候補となると、議会対策や米国、中国それぞれとの対応等、難しい局面。
・同候補は、数十年振りに米軍が駐留することになっても過激な発言を繰り返し、また、中国に対しても人工島にフィリピンの旗を立てると挑発したかと思えば、中国との協調の道を模索すると発言するなど矛盾した対応。」
5月10日付米
『CNBCニュース』(
『ロイター通信』記事引用)の報道「ロドリゴ・ドゥテルテ候補、犯罪撲滅宣言でフィリピン大統領選の勝利を確実に」:
「・過激な発言で物議を醸したドゥテルテ候補が、5月9日の投票の結果、当選が確実視。
・犯罪撲滅宣言が有権者受けした模様で、5月10日朝の開票率90%段階の得票率は39%(1,490万票)で、次点のマヌエル・ロハス候補(890万票)に500万票余りの差。
・著名なグレース・ポー上院議員は20%以上の得票率(830万票)だが、有権者がドゥテルテ候補を推した結果と敗北宣言。
・なお、アキノ大統領が中国の海洋活動を非難して国際仲裁裁判所に提訴しているが、ドゥテルテ候補は中国との二国間協議による解決を表明し、また、同国の安全保障について、日米豪等と見直し交渉するとコメント」
同日付英
『BBCニュース』の報道「強硬派のロドリゴ・ドゥテルテ候補が大統領選当選確実」:
「・ドゥテルテ候補は、フィリピン南部のダバオ市の市長を長く務める間、“懲罰人”とあだ名で呼ばれるほど、法律を無視した犯罪摘発を繰り返したが、この実績が有権者より支援された結果。
・同候補の今後の課題は、アキノ大統領時代に経済発展は遂げたものの、高い貧困率が示す経済格差をいかに是正するか、また、依然蔓延している汚職の撲滅。」
同日付フィリピン
『フィリピン・タイムズ』紙の報道記事「物議を醸す現職市長の大統領
選勝利が確実」:
「・フィリピン選管から集計委託を受けた、ローマ・キリスト教系選挙監視団体のパリッシュ・パストラル評議会(PPCRV、1991年設立のフィリピン国内非政府組織)の発表によると、ドゥテルテ候補が約600万票差と、次点の前内務相ロハス候補を大きく引き離している。
・同国選管の最終結果発表は5月10日夜の見込み。
・米国務省の報道官は5月9日、フィリピンの民主的大統領選を評価するとのみコメント。
・大統領選と同時に、約8千人の地方議員の他、副大統領も選出されるが、目下、フェルディナンド・マルコス元大統領の長男がリード。」
同日付中国
『人民日報』(
『新華社通信』記事引用)の報道記事「ドゥテルテ候補がフィリ
ピン大統領選で勝利との速報」:
「・5月10日午後2時現在の速報で、開票率87%段階で、ドゥテルテ候補が1,449万9,396票、ロハス候補が868万203票であるため、未開票のものが全てロハス候補だとしても逆転は困難。
・ドゥテルテ候補は、ダバオ市長時代、厳しい法律、容赦ない犯罪者対策で治安対策に大きな実績。
・遊説中も、大統領就任後3~6ヵ月以内に、汚職、薬物汚染、犯罪撲滅を公約。
・選管発表では、全有権者約5,500万人のうち、史上最高となる81.62%(4,489万人)が投票。」
中国との対話を打ち出しているドゥテルテ候補が大統領となる見込みとのことからか、中国国営メディアの事実関係のみを淡々と流す態度が小憎らしい。
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先週報じたとおり、米海軍はついに10月27日朝、ミサイル駆逐艦“ラッセン”を南シナ海に派遣し、中国が一方的に埋め立てて築いた人工島の12海里(約22キロメーター)以内を監視航行させた。中国海軍はすぐさま米艦を監視、追尾し、警告する対抗措置を取っている。米政府は、今後も航行の自由を行動で示すとしていることから、挑発された中国軍との偶発的衝突のおそれもあり、緊張が高まっている。そうした中、中国と領有権で揉めている国のひとつであるフィリピンによって、2013年1月にハーグ(オランダ)の常設仲裁裁判所に提起されていた訴状に関し、この程、同仲裁が実質的な審理に入ると発表したことについて、各国メディアが一斉に報じている。
10月31日付
『NBCニュース』(米国、
『AP通信』記事引用)は、「領有権問題で中国への圧力増す」と題して、「南シナ海で中国が一方的に領有権を主張している問題で、中国への圧力が直近で増している。ひとつは、今週初めに米海軍が、中国が築いた人工島近海を監視航行したことであり、もうひとつは、国際仲裁裁判所が10月29日、中国側の反対にも拘らず、フィリピンから、国際海洋法条約(注後記)に基づいて提起されていた領有権問題について、審議に入ると決定したことである。しかし、南シナ海は、エネルギーや魚介類などの海洋資源が豊富であるばかりか、国際貿易の海上輸送上の要所であるため、中国としては、国際社会の評判を犠牲にしても、同海域の領有権問題で譲歩するつもりはないとみられる。」と報じた。
10月30日付
『ロイター通信』(カナダ)は、「欧州連合(EU)、南シナ海での米国の監視航行を支持」と題して、「EUはかねてより、中国が南シナ海のほとんどを自国の主権範囲内と主張し、一方的に人工島を建設していることを非難していた。そして、米国が航行の自由を示すための監視航行を実施したことについて、領有権で揉めているアジアの国々にとって歓迎されようと表明した。ただ、EUとしては、景気低迷の刺激剤として、中国からの投資を呼び込みたいと考えており、また、米国の意に反して、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加することを決定しており、複雑な立場にある。」と伝えた。
10月31日付
『フィリピン・タイムズ』紙(
『ボイス・オブ・アメリカ』記事引用)は、「フィリピン、国際仲裁裁判所の裁定に期待」と題して、「国際仲裁裁判所は、2013年1月にフィリピンが提起した15件の訴状のうち、7件について審議に入るとした。フィリピン外務省のチャールズ・ホセ報道官は、中国が一方的に岩礁や海域を違法占拠し、フィリピンの権利を侵害しているとの訴えが、同仲裁によって認められると期待していると述べた。」と報じた。
また、同日付
『アジア・ワン』オンラインニュース(シンガポール)は、「国際法専門家、仲裁裁判所はフィリピンの訴えを支持とみる」と題して、フィリピン大学国際海洋法学部のジェイ・バトンバカル准教授のコメントを引用して、「今回同仲裁が、フィリピン側提訴の訴状のうち7件を審議すると決定したのは、中国がこれまで、領有権の範囲内の問題について仲裁裁判所に審理、裁定する権限はないと言い張ったり、中国が仲裁手続きに参加しないと圧力を掛け過ぎたことが影響していると思われる。ただ、中国が独自に掲げる“9段線”(編注;中国が南シナ海で領有権を主張する根拠)の違法性などについては、同仲裁はかなり慎重に審理するものとみられる。」と伝えた。
一方、
『チャイナ・デイリィ』紙は、「中国外交部、国際仲裁裁判所の審理は無効と主張」と題して、「劉(リウ)外交部副部長(副大臣に相当)は10月30日、国際仲裁裁判所に中国の主権範囲内の問題について審理する権限はなく、今回の同仲裁の審理入り決定は無効である。南シナ海における中国の領有権(9段線)は歴史的に有効で、中国が批准している国際海洋法条約上も問題はない、と表明した。また、フィリピンの仲裁提起は、法の陰に隠れた政治的謀略であると非難した。」と報じた。
(注)国際海洋法条約:海洋法に関する包括的、一般的な秩序の確立を目指して、1994年11月に発効した条約。中国、フィリピンなどを含めた165ヵ国・地域が批准している。
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