米・英・フィリピン・中国メディア;中国の軍門に降るフィリピン大統領(2)(2016/10/19)
10月17日付
Globali「中国の軍門に降るフィリピン大統領」の中で、“ドゥテルテ大統領は、10月18~21日の初訪中に当り、南シナ海問題は棚に上げて、経済支援を獲得することを重視する意向を表明している。これを迎える中国側は、習主席他が同大統領を厚遇し、中国の主張が常設仲裁裁判所(PCA)で全面否定されて以降苦境に立たされた現状を打破すべく、勝訴したフィリピンを取り込むことによって、PCA裁定の無効化と中国の海洋活動の継続に弾みを付けようとしている“と報じた。そして、同大統領を迎えるに当り、国営メディアまでも”歴史的訪中“と持ち上げ、フィリピン懐柔策を徹底している。しかし、フィリピンの世論は、同大統領を挙って支持するものの、米同盟から中国へのシフト方針については多くが反対の声を上げている。
10月18日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、自国の主権内と主張するスカボロー礁周辺でフィリピン漁船操業を許容か」
「●フィリピン高官は10月18日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が10月20日に習近平(シー・チンピン)主席と会談した際、2012年から中国が実効支配しているスカボロー(中沙)礁周辺でのフィリピン漁船の操業について討議予定と発言。
●中国外交筋によると、中国側はフィリピンとの連携強化の一環で、同礁海域へのフィリピン漁船の立ち入りを認める方向で検討中。...
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10月18日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、自国の主権内と主張するスカボロー礁周辺でフィリピン漁船操業を許容か」
「●フィリピン高官は10月18日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が10月20日に習近平(シー・チンピン)主席と会談した際、2012年から中国が実効支配しているスカボロー(中沙)礁周辺でのフィリピン漁船の操業について討議予定と発言。
●中国外交筋によると、中国側はフィリピンとの連携強化の一環で、同礁海域へのフィリピン漁船の立ち入りを認める方向で検討中。
●中国外交部の王毅(ワン・イー)部長は、南シナ海領有権に関わる中国の主張・スタンスは一切変更ないとし、スカボロー礁海域でのフィリピン漁船操業についてコメントしなかったが、ドゥテルテ大統領の訪中を歴史的訪問と評価し、新たな二国間関係の構築に期待すると発言。」
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「中国国営メディア:ドゥテルテ氏の訪中で“長く頓挫した”二国間関係が改善と報道」
「●中国国営
『新華社通信』は10月18日の社説で、長らく頓挫していた二国間関係は、ドゥテルテ大統領訪中を契機に改善しよう、と報道。
●同大統領のこれまでの発言は、二国間の問題を対話で平和裏に解決するという中国政府の方針に適うものともコメント。
●中国商務部の沈丹陽(シェン・タンヤン)報道官は、中国政府はフィリピンとの交易を増加させ、また、二国間の協力体制を強化していくことになると表明。」
同日付中国
『新華社通信』:「フィリピン大統領が“歴史的”訪中」
「●中国・フィリピン両国関係は、ベニグノ・アキノ前大統領が、南シナ海領有権問題を一方的にPCAに提訴して以来、険悪な関係。
●しかし、ドゥテルテ新大統領は、東南アジア諸国連合(ASEAN)以外の訪問国として中国を選択し、かつ、両国関係改善の姿勢を示していることから、中国側は、習主席、李克強(リー・コーチアン)首相、張徳江(チャン・トーチアン)常務委員会委員長が会談に臨むことで歓迎の意。
●王外交部長は、同大統領の訪中は“歴史的”なもので、この結果二国間の関係が改善されれば、これ以上無関係の他国がとやかく口をはさむ余地はなくなるとコメント。」
一方、同日付米
『ザ・デイリィ・コーラー』オンラインニュース:「ドゥテルテ氏は中国指
向、しかしフィリピン国民は追随せず」
「●フィリピンの調査機関の意識調査の結果、55%もの人が中国に対して悪い印象(信頼度指数が最低のマイナス33)。
●直近の世論調査では、83%もの人がドゥテルテ大統領を支持しているが、中国指向方針については反対との意見。
●中国の王外交部長が、ドゥテルテ大統領の訪中及び対中関係強化について、フィリピン国民の意思の表れと評価するコメントを出しているが、肝心のフィリピン国民の感情は異なる模様。」
更に、10月19日付フィリピン
『ザ・マニラ・タイムズ』紙:「フィリピン国民は中国より
米国を信頼:意識調査結果」
「●フィリピンの調査機関が、9月24~27日の間に1,200人を対象に意識調査したところ、55%の人が中国を“全く信頼していない”とし、“信頼している”としたのは僅か22%。
●一方、76%もの人が米国を信頼しており、不信とした人は僅か11%。
●同調査の信頼度指数でみると、アキノ前大統領時代の対中国信頼度はマイナス24だったが、今回の調査ではマイナス33と更に悪化。」
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米・英・フィリピン・香港メディア;中国の軍門に降るフィリピン大統領(2016/10/17)
10月11日付
Globali「フィリピン、米同盟を解消?」の中で、“ドゥテルテ大統領は、世論の8割前後の強い支持を背景に、米国に対する直接的非難の言葉を連発したり、また長い歴史のある米比合同軍事演習の打ち切りを表明したりと、米国との同盟関係を解消しかねない勢いである”と報じた。そして、いよいよ10月18~21日の初訪中にあたり、南シナ海問題は棚に上げて、経済支援を獲得することを重視する意向を表明している。これを迎える中国側は、習主席他が同大統領を厚遇し、中国の主張が常設仲裁裁判所(PCA)で全面否定されて以降苦境に立たされた現状を打破すべく、勝訴したフィリピンを取り込むことによって、PCA裁定の無効化と中国の海洋活動の継続に弾みを付けようしている。
10月15日付フィリピン
『ザ・マニラ・タイムズ』紙:「ドゥテルテ氏、訪中時に領有権問題に触れない意向」
「●フィリピン大統領府のアーネスト・アベラ報道官は10月15日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が10月18~21日に訪中した際、中国トップとの会談に当って、南シナ海問題には触れない意向だと発表。
●ただ、同報道官は、これはフィリピンがスカボロー(中沙)礁の領有権交渉から後退するという意味ではなく、中国側との経済連携交渉の中で見極めていく意向だと付言。...
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10月15日付フィリピン
『ザ・マニラ・タイムズ』紙:「ドゥテルテ氏、訪中時に領有権問題に触れない意向」
「●フィリピン大統領府のアーネスト・アベラ報道官は10月15日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が10月18~21日に訪中した際、中国トップとの会談に当って、南シナ海問題には触れない意向だと発表。
●ただ、同報道官は、これはフィリピンがスカボロー(中沙)礁の領有権交渉から後退するという意味ではなく、中国側との経済連携交渉の中で見極めていく意向だと付言。
●なお、同大統領は、10月20日に習近平(シー・チンピン)主席と会談した後、全国人民代表大会常務委員会の張徳江(チャン・トーチアン)委員長及び李克強(リー・コーチアン)首相とも会談予定。」
10月14日付英
『メール・オンライン』:「中国大使、フィリピン・中国間のスカボロー礁問題は解決見通しと発言」
「●マニラ駐在の趙剣貨(チョウ・チアンホァ)中国大使は10月14日、ドゥテルテ大統領の訪中に先立ち、同大統領の中国トップとの会談で、南シナ海の領有権問題は解決の方向へ向かうだろうと発言。
●同大使はまた、中国はスカボロー礁周辺での漁業含めた共同事業に関心を持っているし、また、フィリピン国内のインフラ開発への資金提供も検討していることから、両国間の関係改善は大いに期待できるとも付言。
●なお、同大使は、(欧米が非難を強めている)同大統領の麻薬撲滅政策を支持し、また中国民間の支援団体による麻薬患者リハビリ施設の建設資金援助についても支援する意向とも発言。」
一方、10月14日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「フィリピン最高裁判事、ドゥテルテ氏がスカボロー礁のフィリピン主権について中国に譲歩すればフィリピン憲法違反と警告」
「●フィリピン最高裁のアントニオ・カルピオ上級判事は10月14日、アジア経営学大学院フォーラムで講演し、もしドゥテルテ大統領が中国との交渉で、スカボロー礁周辺のフィリピン主権を放棄するとなれば、それはフィリピン憲法に違反する行為となると警告。
●同判事によれば、フィリピン憲法でフィリピンの領有権を堅持する義務があるが、権力者がそれを一方的に放棄したりすることは認められておらず、更に、スカボロー礁の領有権について言えば、一度放棄してしまったら、永久に取り戻すことはできなくなってしまうと発言。」
また、同日付米
『シカゴ・トリビューン』紙:「ヤサイ外相、フィリピンは米同盟を最優先と発言」
「●フィリピンのペルフェクト・ヤサイ外相は10月13日、ドゥテルテ大統領が中国との関係を強化したいと発言しているものの、フィリピンは米同盟を最優先と考えており、中国を米国と同等には扱えないと表明。
●同外相は、同大統領と大学寮で同室だった間柄で、同大統領の強気な発言に理解を示しているものの、中国への傾斜が強まることで、米国との同盟関係弱体化を非常に懸念。
●同外相は大統領の訪中に、400人近い経営トップとともに随行するが、南シナ海領有権問題で中国に譲歩するための訪問ではなく、あくまで中国との共同事業、インフラ開発への支援要請や中国投資誘致が目的と発言。」
更に、10月16日付香港
『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』オンラインニュース:「ドゥテルテ氏は何故依然の対中国強硬発言を控えて訪中するのか」
「●ドゥテルテ大統領は、大統領選キャンペーン中、中国が実効支配しているスカボロー礁に水上オートバイで乗り付けて、フィリピンの領有権を主張するとアピール。
●しかし、大統領就任後、同氏の中国傾斜方針の発言が顕著。
●フィリピン・中国商工会議所のジェームス・ダイ会頭は、米国よりも中国はフィリピンに近い経済大国であり、しかも中国系フィリピン人が非常に多い(1億200万人のうち250万人)。更に、中国からの経済支援でインフラ開発などが期待でき、フィリピンにとって最も有益なことと発言。
●従って、ドゥテルテ氏には、中国と争うのではなく、友好関係構築に最善を尽くすよう要望。
●一方、フィリピン人権委員会のジャクリーン・アン・デ=グイア報道官は、ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅運動に関わる超法規的措置(麻薬容疑者殺害許可)を批判し、また、米国から中国寄りにシフトすることで、更に人権問題が悪化することを懸念。」
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