米
『ワシントンタイムズ』によると、マイク・ポンペオ前国務長官は16日土曜日の夜、サンフランシスコ近郊のカリフォルニア州リバモアで講演を行い、中国共産党の脅威がアメリカ国内に浸透していると語った。中国共産党は米国内で連邦政府、州政府、地方政府をターゲットにした積極的な影響力と諜報活動を行っていると述べた。
ポンペオ氏は、共和党と民主党の歴代政権は何十年にもわたって行ってきた中国に対する融和的な政策が行われてきたが、トランプ政権下で米国の対中政策が大きく転換したと述べた。トランプ前大統領の下で国務長官を務めた1000日の間に、中国に有利になるよう米国の政策に影響を与えるために、中国政府がどのように州知事を標的にしていたかを明らかにした報告書を機密解除したことも明らかにした。
「私は、中国共産党がアメリカ全土の知事に影響を与えようとしていることをまとめた報告書の機密解除に成功した。報告書には、知事ごとに、中国の味方なのか、中国の敵なのか、中国のために仕事をしているのかを区分けした表が記載され」、中国共産党が政府や社会のさまざまなレベルで、米国内で大規模な影響力行使を行っていることが強調されていたという。
ポンペオ氏は、「中国共産党は、我々が今夜座っている場所で活動している」と指摘した。「彼らがこのレストランのすぐ外に座っていても私は驚かないだろう。彼らがカリフォルニア州のすべての郡の郡政委員会に参加していても、私はまったく驚かない。彼らがアメリカ中のすべての州議会のホールを歩いていても、まったく不思議ではない」と語った。
ポンペオ氏はまた、中国当局の活動のもうひとつの例として、ヒューストンの中国領事館を拠点に活動していた中国のスパイ組織をあげた。この領事館は、医療やその他の貴重な知的財産を盗むことに主眼を置いたスパイ活動を行っていたとして、2020年7月に閉鎖された。ポンペオ氏は、「こうした活動は長い間知られていたが、どの政権も中国共産党が米国内で行っていたことを実際に阻止するために行動を起こす覚悟を持つことが出来なかった」と述べた。
さらに、中国がカリフォルニア州の年金基金に中国への投資を呼びかけ、通常兵器と核兵器の両方の大規模な軍備増強に資金を充てていると警告した。
ポンペオ氏は、「中国共産党と仲良くすればいいと言う人たちは、このような人たちと交渉することは不可能だということを理解していない」と述べた。民主主義者と共産主義者は、人生、あるいは、権力、に対する理解が根本的に異なっていると説明した。中国の最高指導者である習氏は、中国の「王国」と「中国の夢」を提唱しているという。その中国共産党のビジョンは、自由と民主主義というアメリカの夢とは全く逆のものだとポンペオ氏は語った。
1981年から2015年まで下院議員を務めたフランク・ウルフ氏も、米『ナショナルレビュー』への11日付けの寄稿で「中国では、カトリック、プロテスタント、仏教、イスラム教のウイグル人、法輪功など、あらゆる信仰団体が迫害されているという事実がある。しかし、ほとんどメディアで取り上げられていない問題として、中国が民主党、共和党を問わず、議会や政権に与えている影響力である。」と述べた。「元議員や政府と軍の元高官の中には、中国や中国政府が管理する企業のために働いている人がたくさんいる。」とも指摘している。そして、「今では中国を代表している人がワシントンではそこら中にいる」と警告している。
米国内では現在、26の組織が中国政府の外国代理人として登録されている。選挙資金やロビー活動に関するデータを追跡しているNPO法人OpenSecretsの報告によると、「中国の外国エージェントは、他の国のために働くどの外国エージェントやロビイストよりも多くロビー活動を行い、影響力を行使しており、2020年の総支出額は約6440万ドル(約73億円)、その80%は中国の国営テレビメディアの一部門であるCGTN Americaによるものだった。」とまとめている。
米テレビ局『WJHL』によると、米中央情報局(CIA)は今月7日、中国政府の影響力に対抗するための米国政府の取り組みの一環として、対中国に特化した部署を新設すると発表した。この部署は、CIAが運営する十数カ所のミッションセンターの1つとなり、週1回の部長クラスの会議で対中国戦略を推進することになる。また、CIAは、中国語に堪能なスタッフの採用活動を強化し、新興技術や気候変動、地球規模の健康危機などに焦点を当てた別のミッションセンターを設立することも発表した。CIAのウィリアム・バーンズ長官は声明で、中国政府を「21世紀に我々が直面する最も重大な地政学的脅威である 」と述べた。
一方バイデン政権は、気候変動や北朝鮮などの問題では中国との共通認識を求めており、テロ対策に重点を置く一方で、中国との「大国間競争」に資源をシフトすることを繰り返し示唆している。
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6月20日は「父の日」である。世間では、「母の日」と比べて存在そのものが危ういとの風潮もあるが、中国国営メディアは、このときとばかり、習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)が如何に父から授かった3つの徳に従って治世に心血を注いでいることか、と改めて称賛している。
6月19日付
『CGTN(1979年設立の中国中央テレビ国際ニュースチャンネル)』:「習近平国家主席が父から授かった“3つの徳”」
世の父親たちは、子供たちに大きな影響力を与えている。
習近平国家主席も同様で、父親の習仲勲(シー・チョンシュン、1913~2002年)から少なくとも3つの大切な教え(徳)を授かっている。
習仲勲は八大元老(注後記)の一人で、党中央政治局委員等を歴任した人物であった。
その父親から習国家主席が引き継いだ3つの徳は以下であるが、同主席はしっかり体現してきている。
1. 民衆志向の哲学
中央幹部の多くは、民衆に根差した活動から学び、成長していく。これを通して、民衆の苦難や欲するものを理解することができ、将来の国家政策を営むために必要な民衆志向の基礎が固められるからである、とする。
父親はかつて子供時代の同主席に、“どんな肩書きを得ようとも、常に民衆に尽くすこと、民衆の利益は何かに思いを巡らすこと、民衆と密接な関係を継続させること、そして民衆の傍に寄り添うことが肝要”だと説いた。
この教えの下、同主席は、政府高官も民衆も平等であり、政治家は常に民衆と共に生きる必要があると表明し、それを実行してきている。
例えば、2012年11月に中国共産党中央委員会総書記に就任して以来、“民衆に尽くす”との心構えの下、国内の極貧地域14ヵ所を連続して訪問している。
そして、出会った民衆と親しく会話し、日常の問題等を聞き、彼らに対して“民衆のために働く公僕”だと語りかけ、その上で地方の役人に対しても、民衆に尽くす責任を自覚するよう説いている。
更に、同主席はしばしば、中国共産党が民衆からの支持を勝ち得ているのは、常に民衆のために誠心誠意尽くし、かつ多くの民族の福祉向上のために奮闘してきたからだ、と力説している。
2. 現実的対応
父親の現実的対応路線(現場主義)を継承し、習主席は1980年代に中国東部河北省(フーペイ)の正定県(ヂェンディン)地方官吏だったとき、同県内の全ての村々を訪問している。
1990年代に南東部福建省(フーチェン)寧徳市(ニンドー)の党委員会書記だったときには、就任後3ヵ月間で9つの行政区を訪問し、後にはその他の郡区も回っている。
そして、2002年に東部浙江省(チェーチャン)の党委員会書記に就任した際には、僅か1年で全90の行政区を訪れ、また、2007年に上海市党委員会書記となったときは、7ヵ月で全19の行政区を訪問している。
このような対応を経てきたことから、習主席が今年3月に採択した経済・社会発展のための第14次五カ年計画及び2035年までの長期目標綱要は、同主席の現場主義に立脚した究明並びに研究に因るところが大きく、かつ多くの人の意見や提案・助言を取り入れて策定していると言える。
3. 質素な生活
父親はまた、他の人に規律を尊ばせようとしたなら、まず自身や家族が率先する必要があると説いた。
この教えの下習主席は、自身の子供たちを厳しく躾け、かつ質素な生活を送ることを信条としている。
同主席も弟も、小さい頃から姉たちの古着を着たりお下がりの靴を履くのが当然のことのように育ってきた。
そして母親は同主席が地方官吏に就任した際には、家族全員に対して、同主席が関係するような仕事は一切しないよう釘を刺している。
そこで、同主席は、この教えを実践して、自らも家族に対して、自身に関係するような仕事はもとより、自身の名前を使っての商売等も一切許さないという“無慈悲な対応”を取ってきた。
更に、福建省、浙江省、上海市等の幹部を歴任した際も、部下たちに対して、自身の名前を使って私欲を満たすことがないようきつく申し渡し、かつ、かかる事態が発生しないようしっかり監督するようにも厳命してきている。
(注)八大元老:1980年代から1990年代にかけて強い権力をふるった中国共産党の長老集団。非公式集団でありながら、党の最高指導部である中央政治局常務委員会を凌ぐ権威を持っており、重要な決定は八大元老に委ねられることもあった。
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