習近平国家主席;五四運動100周年記念式典で当時の学生抗議運動を礼賛【米・中国メディア】(2019/05/01)
中国では100年前の5月4日、第一次大戦後の連合国側によるパリ講和会議に不満を抱いた北京の学生数千人が、大規模抗議デモを展開した。この運動を指揮した一部の学生が、後に中国共産党を設立している。そこで、習近平(シー・チンピン)国家主席は、現政府に弓を引いた天安門事件については闇に葬り去る一方、当該五四運動(注1後記)については、現在の中国の基を築いたとして、抗議運動を指揮した学生らを礼賛する演説をした。
4月30日付米
『CGTNアメリカ(注2後記)』:「五四運動:中国で100年前に発生した反帝国主義の大規模抗議運動」
習近平国家主席は4月30日、北京で開催された、100年前に発生した五四運動を記念する式典に出席した。
そこで同主席は、当該運動を指揮した学生によって中国共産党が組織されたこともあって、同運動に参加した学生らを礼賛する演説を行った。
更に同主席は、現在の学生にもこの精神を見習って行動して欲しいと訴えた。...
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4月30日付米
『CGTNアメリカ(注2後記)』:「五四運動:中国で100年前に発生した反帝国主義の大規模抗議運動」
習近平国家主席は4月30日、北京で開催された、100年前に発生した五四運動を記念する式典に出席した。
そこで同主席は、当該運動を指揮した学生によって中国共産党が組織されたこともあって、同運動に参加した学生らを礼賛する演説を行った。
更に同主席は、現在の学生にもこの精神を見習って行動して欲しいと訴えた。
五四運動は、1919年5月4日に発生した、反帝国主義を掲げた大規模抗議運動である。
当時の抗議運動発生の背景には、1919年1月に行われたパリ講和会議において、英・仏・米の連合国側に付いた中国にとって、敗戦国のドイツに奪われていた中国領土を日本に割譲することが承認されるという屈辱的な事態が起こっている。
すなわち、中国が望んだ“対華21ヵ条要求”事項の撤廃がされなかったばかりか、ドイツが支配していた山東省の権益について、日本の要求が認められてしまった訳である。
そこで、最終的に中国は、1919年6月に締結されたベルサイユ条約に唯一署名しなかった。
なお、この運動を契機に、中国国内の知識人の間では、マルクス主義が高く評価されることになる。
そして、当該運動を指揮した学生の一部が1921年、中国共産党を組織して、現在に至っている。
5月1日付中国『チャイナ・デイリィ』:「五四運動の精神は100年経った今も有益」
習国家主席は4月30日、五四運動100周年の記念式典で、愛国心が同運動の核心であり、国を反映させていく上で、今も重要な精神であると説いた。
そして同主席は、100年経って時代が変わろうとも、当時の運動参加者同様、現代の若者や学生についても、国の将来を真摯に考えて行動することが求められるとも言及した。
更に同主席は、国の将来を託す上で、思い悩んだり、壁にぶつかったりする若者に対して、政府としても、十分かつ時機を得た支援を行っていく必要があるとも付言した。
(注1)五四運動:1919年1月に開催されたパリ講和会議の結果に不満を抱き発生した、当時の中華民国の北京から全国に広がった抗日・反帝国主義を掲げる大衆運動。パリ講和会議において、日本側の「日本がドイツから奪った山東省の権益を容認」という主張が列強により国際的に承認されると、その少し前に朝鮮で起きた三・一独立運動の影響もあって、北京の学生数千人が1919年5月4日、天安門広場からベルサイユ条約反対や親日派要人の罷免などを要求してデモ行進し、後に全国に拡散。これを契機に中国共産党が設立され、後に中華民国に代わって中国を統一し、現在に至る。
(注2)CGTNアメリカ:CGTNは中国国営メディアの中央テレビによる、中国グローバルテレビジョンネットワークの英語による国際ニュース放送チャンネル。その米国在放送局で24時間放送を行なっている。
(注3)対華21ヵ条要求:第一次世界大戦中、日本が中華民国政府と行った外交交渉において提示した21ヵ条の要求。この交渉では、直接の懸案である山東ドイツ権益の善後処理だけでなく、従来からの懸案であった満蒙における日本の権益問題や在華日本人の条約上の法益保護問題についても取り扱われた。
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習近平国家主席、半永久的権力掌握を笠に着てメディア・コントロールを更に強化【米・英・中国メディア】(2018/03/23)
既報どおり、習近平(シー・チンピン)氏は、昨年10月の共産党大会で総書記として2期目の指導体制が承認され、今年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で国家主席の任期が無期限とされた。そこで、半永久的に権力を掌握することになった習氏は、これまで以上にメディア・コントロールを強化し、反政府運動等に繋がりかねない一切の芽を摘む強権支配を仕掛けようとしている。更に、国営メディアを
『ボイス・オブ・チャイナ』に一本化して、中国国家理念を喧伝するプロパガンダ大媒体を組織する意向である。
3月21日付
『ロイター通信米国版』:「中国、新たな監視組織を設けて更にメディア・コントロールを強化」
『ロイター通信』は3月21日、習近平指導部の下、ニュース・インターネット・映画等のメディア管理を強化するための新たな監視体制が敷かれると報道したが、国営『新華社通信』もこれを追認した。
最高指導機関である党中央委員会の3月19日付資料によると、これまでメディアを監督してきた国家新聞出版広電総局が今月初めに解体され、代わって、プロパガンダ・政治的信念・文化的娯楽の観点から、より直接的に管理・監督する新組織を立ち上げるとする。...
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3月21日付
『ロイター通信米国版』:「中国、新たな監視組織を設けて更にメディア・コントロールを強化」
『ロイター通信』は3月21日、習近平指導部の下、ニュース・インターネット・映画等のメディア管理を強化するための新たな監視体制が敷かれると報道したが、国営『新華社通信』もこれを追認した。
最高指導機関である党中央委員会の3月19日付資料によると、これまでメディアを監督してきた国家新聞出版広電総局が今月初めに解体され、代わって、プロパガンダ・政治的信念・文化的娯楽の観点から、より直接的に管理・監督する新組織を立ち上げるとする。
この一環で、既存の『中国中央テレビ(CCTV)』、『中国環球テレビ・ネットワーク(CGTN)』、『国家ラジオ放送局』及び『国家国際ラジオ放送局』が統合され、新たに『ボイス・オブ・チャイナ』に一本化される。
なお、上記の他、金融から食料安全政策までのあらゆる分野で、それらを管理・監督してきた組織が、近年にないほど大規模に改編される。
同日付英『ザ・ガーディアン』紙:「中国国営メディアが統合されプロパガンダ(組織宣伝)大媒体が出現」
『新華社通信』の3月21日付の通告によると、従来の中国国営テレビ・ラジオ放送局が一本化され、世界最大規模のプロパガンダ媒体が新たに組織されるという。
同通信によると、新組織の下で、共産党の理念・ガイドライン・政策をより広く、速やかに大衆に直接届けることを目的とするとしている。
習国家主席はかつて、国営メディアは共産党の政策に忠実であらねばならないと発言していたが、それに沿って、正に厳しい管理・監督体制が敷かれることになるとみられる。
なお、習指導部は、メディア以外のあらゆる分野の省庁について、共産党の管理・監督が更に密にできるよう、大幅な改編を行う予定である。
一方、3月22日付中国『人民日報』:「国際社会が中国を更に理解するため、新組織の『ボイス・オブ・チャイナ』がその役目を担う」
党中央委員会はこの程、CCTV、CGTNや国営ラジオ放送局等を統合して、『ボイス・オブ・チャイナ』を立ち上げる計画を発表した。
習国家主席は2016年12月31日、新たにCGTNが組織された際、国際社会も中国も開かれた世界になってきている以上、国際社会が中国を、また、中国が国際社会を理解するための媒体として期待されると演説している。
今回の新組織『ボイス・オブ・チャイナ』の立ち上げは、正にその理念を更に強化する一環であり、国際社会と中国の相互理解が増々深く理解される媒体となろう。
特に、米国を筆頭とした西側諸国は、事ある毎に“中国の脅威”等と悪戯に中国の成長を曲解する発信を重ねており、これら誤解を解く意味でも、『ボイス・オブ・チャイナ』を通じての、中国現状の正確な情報が国際社会に伝えられる必要がある。
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