ロシアがイランへミサイルを提供(2015/11/12)
アメリカとの核合意を結んだイラン。そのイランに対して今度はロシアがミサイルを
輸出することを明らかにした。各メディアは以下のように報じている。
11月9日付
『CBSニュース』によると、ロシアとイランはミサイル防衛システムの輸出
をすることにつき合意に達したということである。ロソボロネクスポート社を含むロ
シア国営企業の代表であるチェメゾフ氏は「S-300ミサイル(ロシア軍のミサイルシ
ステム)の輸出契約が発効段階に入った」とロシアの報道関係者に語ったという。
ロシアは、2010年に、核問題に関して国連がイランに対して制裁を科したことに歩調
を合わせて、改良型のS-300の対イラン輸出計画を凍結していた。...
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11月9日付
『CBSニュース』によると、ロシアとイランはミサイル防衛システムの輸出
をすることにつき合意に達したということである。ロソボロネクスポート社を含むロ
シア国営企業の代表であるチェメゾフ氏は「S-300ミサイル(ロシア軍のミサイルシ
ステム)の輸出契約が発効段階に入った」とロシアの報道関係者に語ったという。
ロシアは、2010年に、核問題に関して国連がイランに対して制裁を科したことに歩調
を合わせて、改良型のS-300の対イラン輸出計画を凍結していた。今年に入ってイラ
ンが世界主要6か国との間で核合意に入ったため、ミサイル輸出計画の凍結を解除し
たというものである。
イランはミサイル輸出計画が凍結されたことについてロシアに対し、ジェノバの国際
仲裁裁判所に訴訟を提起していたが、今回輸出計画の一部でも実行に移されれば訴え
は取り下げられるだろうとロシア側は見ているという。
チェメゾフ氏は輸出されるミサイルの型や、輸出の時期については明言を避けたもの
の、関係筋によれば前回の契約当時のS-300は現在製造されていないため、その改良
版を輸出することになるだろうと語ったという。
ロシアによるイランへのミサイル輸出は、地域の政情の不安定化を招くとしてこれま
で長い間アメリカやイスラエル、その他周辺国の懸念となってきたという。イスラエ
ルのミサイル防衛計画のトップであるヘルツォグ氏によると、今回の輸出が直ちに中
東地域での武器の装備合戦に結びつくとは考えていないが、目下の懸念は、イスラエ
ルのイランに対する空爆の潜在能力の低下だと語ったという。また同氏は、今回輸出
されたミサイルをイランの同盟国であるシリアが入手することになれば、イスラミッ
ク・ステイトの手に渡ってしまうかもしれないとの懸念を表したという。
ロシア側の言い分としては、今回輸出されるミサイルは純粋に防衛のためのものであ
り、周辺地域の平穏を乱すものではないという。
ただ、ロシアはイランに対してミサイルを輸出することにより利益を上げる一方で、
イランの最大の競争相手であるサウジアラビアにも商談を持ち掛けているという。前
出のチェメゾフ氏はロシアはサウジアラビアに対し、イランに輸出するミサイルより
も最新型のS-400ミサイルの輸出を交渉中であることを明かしたという。
11月9日付
『ダウ・ジョーンズ』は凍結されていたミサイルの輸出計画の時期や額に
ついても言及している。同期時によると、ミサイル輸出計画は2007年に締結され、お
よそ8億ドル(約984億円)だったが、2010年にはアメリカとイスラエルから批判を受
けたこともあり同計画は凍結されたとしている。
同記事によれば、イラン側は今年中のなるべく早い時期にミサイルを輸入したいと考
えているようだが、ロシア側は輸出の時期はもう少し遅くなると見ているという。ま
た、同記事はロシアとイランはシリアのアサド政権政権を支援すべく連携を強めてお
り、そのことがアメリカとの溝を深めているとも指摘している。
11月9日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は今回話題になっているS-300の性能にも触
れ、高い高度にある場合でも、同時に複数の対象物の迎撃が可能であり、200キロの
範囲までカバーすると伝えている。
イランの核合意締結から、周辺でさまざまな変化が起きつつある。今後も各国の動き
から目が離せないと言えよう。
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オーストラリアの難民収容施設で暴動、国連が非難(2015/11/11)
オーストラリアの難民収容施設で、収容者らによる暴動が勃発した。暴動は数名のけが人を出し収束したが、オーストラリア政府の難民対策については国際社会からの批判が集まっている。各メディアは以下のように報じている。
11月10日付
『ニューヨークタイムズ』はオーストラリア領クリスマス島で起きた難民の暴動について、暴動勃発後、応援の警官隊が到着し、催涙ガスを用いて鎮圧に成功したことを伝えている。オーストラリア移民局担当相であるダットン氏によれば、催涙ガスなどの武力行使は、収容所内でバリケードを張って、警官らを武器で威嚇したごく一部の収容者に対してのみ用いられたという。現時点で5人の負傷が報告されているが、負傷が暴動自体によるものか、警察の鎮圧活動によるものかは明らかになっていないという。...
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11月10日付
『ニューヨークタイムズ』はオーストラリア領クリスマス島で起きた難民の暴動について、暴動勃発後、応援の警官隊が到着し、催涙ガスを用いて鎮圧に成功したことを伝えている。オーストラリア移民局担当相であるダットン氏によれば、催涙ガスなどの武力行使は、収容所内でバリケードを張って、警官らを武器で威嚇したごく一部の収容者に対してのみ用いられたという。現時点で5人の負傷が報告されているが、負傷が暴動自体によるものか、警察の鎮圧活動によるものかは明らかになっていないという。
今回の暴動は今週の月曜日に起きたという。オーストラリアの都市パースから約2500キロ離れたクリスマス島で起きたものである。30代前半の難民がクリスマス島内の難民収容施設から逃走し、オーストラリアの警察によって崖の下で死体となって発見された事件が発端となっているという。当該難民の死因などに関する調査は公開されることになっているが、人権擁護者によれば、同人物は監禁により深刻な身体的ダメージを被っていることが確認されたという。当該収容施設はオーストラリア本土よりもインドネシアの近くに位置し約200人の難民が収容されているという。運営にはオーストラリア政府の委託を受けたイギリスのサーコ・グループという民間企業があたっているという。
ダットン移民担当相によれば、今回の暴動による損害は100万オーストラリアドル(約8600万円)にのぼり、暴動の主犯格らは訴追を免れないだろうと語ったという。
今回の暴動ではオーストラリア政府の施設が破壊され、オーストラリアが損害を被っているが、同国の難民政策に関しては国連人権理事会の報告内で批判を受けていたという。この報告によれば、オーストラリア政府は難民らを乗せた船を海に引っ張って戻してオーストラリアへの漂着を妨害したり、政府が密輸業者らに金銭を支払って難民を乗せた船を方向転換させるよう仕向けたりしていることが伝えられているという。また、イギリス連邦加盟国のナウル島やパプアニューギニア領のマナス島内の収容施設内で拘束されている難民の扱いのひどさも報告されているという。
アメリカの人権保護団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の代表であるピアソン氏は「多くの国がオーストラリア政府に対して、難民の船を引っ張ったり、強制収容することを止めるよう要請している。オーストラリア政府のやり方は残忍で、中には数年にわたって難民を拘束し、その後本人がおよそ溶け込むことのできないような場所で開放するといったケースもある」と語ったという。
11月10日付
『ロイター通信』によれば、今回の暴動では施設を囲むフェンスは破壊され、施設内で放火もあり施設管理者らは応援の警官らが到着する前に施設から撤退することを余儀なくされたという。
同記事もやはりオーストラリアで難民問題は物議を醸している話題で、政府は一貫して難民がオーストラリア本土に上陸するのを阻止しているという。以前はクリスマス島に難民を拘束していたが、最近では前述のナウル島やマナス島の施設にも収容されていると伝えている。クリスマス島には政治上の理由から難民になった者や犯罪により移送中の者が収容されているという。
前出のダットン移民担当相によれば、今回負傷した5名はいずれも収容者で、同施設内は最近難民に対して犯罪者の割合が増えてきていると語ったという。また、最優先課題は施設の平穏の回復であるが、それも間もなく実現するであろうとしたという。
また、同記事はオーストラリアの難民政策は国連から非難されているとした上で、2014年にもマナス島の難民収容施設で暴動が起き、70人が負傷し、国内の上院の調査団が政府を批判したという事実があることを伝えている。
11月10日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』はオーストラリア政府が難民をほぼ機械的に処理していると批判している。これによると同国政府はヴィザ(査証)を持たずに入国しようとする者を拘束し、そのまま難民収容施設に送るのだという。
また、国連人権理事会のアメリカ代表であるコスラ氏のコメントを掲載している。「我々はオーストラリアに対して難民らへの人道的な扱い、および人権の尊重を要請している」。オーストラリア当局は同理事会からの事情聴取に対して、「我が国の取っている措置は難民を、生命の危険を冒してまで同国に上陸しようとするのを防ぐためのものであり、さらには人身売買組織へ圧力をかけるためのものである。このような政策は狡猾な組織の封じ込めと、海上で危険にさらされている多数の命を救うのに貢献している。そして我々のたゆまぬ努力の結果、我が国は難民に人道的な支援を提供することができている」と報告したという。今週月曜日に行われたこの聴取では、100か国以上がオーストラリアを非難したという。
難民問題は各国が頭を痛める問題であるのは事実である。しかしながら、国際社会の目もあり、収容施設で暴動まで起きている以上、オーストラリアも難民に対する方策を練り直さなければならないだろう。
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