国連総会でシリア情勢動くか(2015/09/25)
今月28日からアメリカのニューヨークで国連総会が開催される。ローマ法王も訪米中
であり、総会の行方が気になるところである。様々な問題が話し合われるであろう
中、アメリカとロシアの意見が対立しているシリア問題の行方をメディアは以下のよう
に伝えている。
まず、国連総会の概要について。
9月23日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は世界のリーダー150人が国際連合発足70年
を記念する国連総会に集まることを伝えている。また、ローマ法王も訪米中であり、
国連事務総長のパン・ギムン氏との面会も予定している。パン氏が法王と会うのはこ
れで4度目だという。外交評論家のカルネ・ロス氏は「法王は難民問題や気候変動な
どの問題に対する道徳的な見解を実によく代弁している。...
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まず、国連総会の概要について。
9月23日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は世界のリーダー150人が国際連合発足70年
を記念する国連総会に集まることを伝えている。また、ローマ法王も訪米中であり、
国連事務総長のパン・ギムン氏との面会も予定している。パン氏が法王と会うのはこ
れで4度目だという。外交評論家のカルネ・ロス氏は「法王は難民問題や気候変動な
どの問題に対する道徳的な見解を実によく代弁している。法王が世界の現状につい
てどのような見解を述べるか皆注目している」と語ったという。
そんな中で主要な議題はヨーロッパの難民問題とイスラミック・ステイトだろうとコ
ロンビア大学のリチャード・ゴワン氏は予測している。「アメリカはイランとの核協
議での成果をアピールしたいところであろうが、ヨーロッパの難民問題やイスラミッ
ク・ステイトの脅威に影が薄くなってしまうだろう」とする。またシリアの問題につ
いても同氏は「シリアのアサド政権に対してはアメリカとヨーロッパ間でも根本的な
隔たりがあり、ロシアはアサド政権に未だに支援を続けている。今回の国連総会でも
飛躍的進歩というよりは話し合いが決裂すると予測するのが妥当だ」とする。
シリア問題等についてのロシア側の思惑
9月23日付
『ロシア・トゥデイ』はロシアの国連大使ウィタリー・チュルキン氏への
インタビューを行っている。同氏は国連総会での拒否権の行使について尋ねられ「ロ
シアが拒否権を行使しなければ、国連はアメリカや西欧諸国の決定にただ承認を与え
るだけの機関になってしまうだろう」と述べている。また同氏は「拒否権がないと安
全保障理事会の決定は妥当性を欠くことになる。これでは話し合いによる意見の一致
を見出すという安保理に求められる重要な機能を果たせなくなる」と述べたという。
同氏は国連総会での米ロ首脳会談については非常に重要であり、その展望は「まずま
ずの」ものになるだろうとしている。「シリア問題やイスラミック・ステイトに関し
て相互理解が深まるだろう。それができれば成功したと言っていいだろう。飛躍的な
進展までは期待していないがいくらかの進歩は望めるだろう」。またシリアへの武器
支援については「責められるべき点は何もない。ロシア軍はシリア軍に対して武器面
で援助を行っている。隠すことは何もない」。また、同氏はシリアとイラク国内のイ
スラミック・ステイトに対するアメリカ主導の多国籍軍による空爆は失敗だったと
し、新たな形態の国際的な協力関係が模索されるべきだと述べている。
アメリカ側の思惑
9月22日付
『ロイター通信』によると、先月からロシアが空軍機を配備していること
についてアメリカ軍は、これらは今のところロシア軍を守るための部隊であり、軍事
介入のものではないとみられるとの見解を発表したことを報じている。しかしなが
ら、これが長期におよぶとなると、ロシアの真意に疑問を投げかけざるをえないとす
る。ケリー国務長官はインタビューに対し「アメリカとロシアはシリアでのイスラ
ミック・ステイトの活動を封じたいという点については同じであるとしながらも、シ
リアのアサド政権を支持するロシアには共感できない」としている。また、同氏は
ロシアの真意が明らかでないと繰り返し、イランとロシアに外交的な解決の支援を呼
びかけてきたことについても言及した。そして「アメリカはいつでも内戦終了の交渉
を開始する準備ができている。アサド政権が、ロシアが味方についているために交渉
は不要と感じているならゆゆしき問題だ」と語ったという。シリアでのイスラミッ
ク・ステイトの増幅、ロシア軍の増強、シリア国からのヨーロッパへの難民流入は事
態の収拾を喫緊のものとしている。ケリー国務長官も国連総会でヨーロッパ、中東、
ロシアの要人と会談予定である。
国連総会後のシリア情勢の変化が期待されるところである。
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アメリカ合衆国人事管理局からの指紋情報の流出(2015/09/25)
今年に入ってからアメリカ合衆国人事管理局の情報がハッキングされ、政府は当初110万人分としていたが、この度さらに560万人分もの指紋情報が流出したことが明らかになった。アメリカの各メディアは以下のように報じている。
9月24日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』はアメリカ合衆国人事管理局がハッキングの被害に遭い政府関係者の個人情報が流出した事件について、当初考えられていた数字の5倍以上の560万人の指紋情報が盗まれたと政府が発表したことを伝えている。この情報流出事件は今年に入っから明らかになったもので、約220万人の政府関係者とその家族の情報が流出したものである。
政府の調査関係者はおそらくは中国政府がこの件に関わっているのではないかとみているものの、公に発表はされていない。...
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9月24日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』はアメリカ合衆国人事管理局がハッキングの被害に遭い政府関係者の個人情報が流出した事件について、当初考えられていた数字の5倍以上の560万人の指紋情報が盗まれたと政府が発表したことを伝えている。この情報流出事件は今年に入っから明らかになったもので、約220万人の政府関係者とその家族の情報が流出したものである。
政府の調査関係者はおそらくは中国政府がこの件に関わっているのではないかとみているものの、公に発表はされていない。オバマ大統領も中国の習近平国家主席が訪米の際にサイバー攻撃について強く言及するつもりであるという。サイバー攻撃は企業秘密の分野で両国間の懸案事項となっているのだ。
仮に中国政府が件の情報流出にかかわっていたとしても、政府関係者の個人情報の使い道が今一つ明らかでないという。政府関係者によれば、現時点で情報が悪用された事実は見つかっていないという。また、指紋情報は現時点では不正使用の可能性は低いものの、今後の技術進歩によっては状況は変わり得るという。もっとも、指紋情報の流出は海外での諜報活動に悪影響を及ぼす可能性は否定できないとする。
9月23日付
『フォックス・ニュース』(アメリカ)は個人情報流出の被害者総数は約220万人と、前回の発表以来変化はないものの、指紋情報の流出数が約5倍以上に増えたことを報じ、政府はローマ法王の訪米のタイミングに合わせてこのニュースを発表し、あまり騒がれないようにしたのではないかという共和党議員のザッセ氏のコメントを載せている。また同氏は「この事件は国家安全の危機というよりは政府の広報活動の危機と言っていいいだろう。アメリカ国民は事件の全容が明らかにされたなどとは考えていないし、政府がサイバー攻撃に振り回されていると思っている。」と述べたという。
9月23日付
『ksnt.com』(アメリカ)はこの事件は憶測の域内ではあるものの中国のスパイ活動が関わっているとしたうえで、情報流出が情報提供者を獲得したり、海外でのスパイの発見に利用されるだろうと報じている。また、この事件により人事管理局の局長は辞任したことを伝え、関係者はこの事による被害は長引くものの、その実態は公にはされないだろうと語ったという。
9月24日付
『ワールド・ネット・ダイアリー』(アメリカ)では指紋情報がどのように利用されうるのかについて述べている。インターネットでの人権保護活動団体「電子フロンティア財団」によるとまず、指紋情報はFBI(連邦捜査局)に送られ身元調査に使用されるという。その後そのデータは保管され、犯罪捜査目的にも利用されるという。そしてFBIが今年実施したプライバシー影響評価(情報提供者のプライバシーへの影響を事前に評価する仕組み)によると、指紋情報はFBIのデータベースに保管され、指紋情報を提出した時点で犯罪者情報と一致しなくても一日に数千回も行われる、法執行機関による照合に使用されるという。
アメリカ政府は指紋情報流出による実害は生じていないとするものの、個人がピンポイントで特定される情報なだけに苦しい言い訳にも聞こえる。
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