従軍慰安婦問題、年内決着なるか(2015/11/04)
日韓二か国会談が韓国で開催された。会談の大部分は従軍慰安婦問題に割かれ、近々の問題の解決という点では両者は意見が一致しているという。この問題がこれほどまでにこじれたいきさつと今後の見通しについて各メディアは以下のように報じている。
11月4日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は日本の安倍首相と韓国の朴大統領が現職に就いて以来、初めての会談が実現したと報じている。
同記事は、両国間には様々な問題が山積しているが、中でも従軍慰安婦問題は両国の軍事的協力関係に大きな影を落としているものであると報じている。朴大統領は、日本の誠意ある謝罪と賠償の提示がない限り安倍首相には会わないと主張してきた。他方で安倍首相は1965年の二か国間の合意でこの問題は解決済みとの主張を固持してきた。...
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11月4日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は日本の安倍首相と韓国の朴大統領が現職に就いて以来、初めての会談が実現したと報じている。
同記事は、両国間には様々な問題が山積しているが、中でも従軍慰安婦問題は両国の軍事的協力関係に大きな影を落としているものであると報じている。朴大統領は、日本の誠意ある謝罪と賠償の提示がない限り安倍首相には会わないと主張してきた。他方で安倍首相は1965年の二か国間の合意でこの問題は解決済みとの主張を固持してきた。このような背景からすれば、今回の対談が実現したこと自体、両国間の関係が一歩前進したともいえる。
安倍首相は「今年は日韓国交正常化から50年の節目の年にあたる。それを踏まえて従軍慰安婦問題のできる限りの早期解決に努める」と語ったという。また、朴大統領は「現在従軍慰安婦だった女性達は80から90歳代で問題解決を待ち望んでいる。日本との安定した関係を築くことがこの問題を解決するうえで重要になる」と語ったという。
ただ、今回の会談後、両国共同の会見は開かれず、さらに両国とも歩み寄りについて前向きな発言はなされていないという。
韓国世宗大学の政治学教授である保坂氏は今回の会談で韓国は日本からの譲歩を勝ち取ったとみているという。「安倍首相は朴氏の今年中の問題の解決という要求を考慮しつつある」。
11月4日付
『ヤフーニュース』ではアメリカは数年にわたって日韓両国が外交上の問題を克服し、台頭する中国に立ち向かうべく関係を強化することを切望してきたが、従軍慰安婦問題の解決に向けて両国が動き出したと報じている。
同記事は韓国の前外務大臣である柳氏のコメントを掲載している。「この問題が即座に解決するとは考え難い。安倍首相は実利的な政治家であり、この問題を先延ばしにすると思われる」。
また、同記事は今回の会談で従軍慰安婦問題について話し合われた事実が、安倍首相が「国粋主義者」との悪評をを和らげ、日本が安保法案により国際問題についてより軍事的手法をとるのではないかという懸念を払拭するするのに一役買っているとしている。
11月3日付
『ザ・ディプロマット』は、今回の会談で韓国側が交渉の期限を定めようとしている点について触れている。同記事によれば朴大統領は「元慰安婦の年齢を考慮すれば、できれば今年中に解決するのが望ましい」と語ったという。
また、同記事はこの問題が幾度となく両国間の外交関係の火種となり、根本的解決がなかなか図られなかった点についても触れている。日本の主張は1965年に韓国政府がこの問題については日本政府との解決を試みることに合意したものであり、次いで1994年に日本政府の後押しにより「女性のためのアジア平和国民基金」が設立されたことをもって解決済みというものである。
これに対して韓国側は誠意ある謝罪がなされておらず、補償金も日本政府から直接拠出されるべきだと反発した。韓国内では当時世論の高まりにより、元慰安婦らは同基金から金銭を受け取らないか、受け取ったとしても、それを同基金に返還せざるをえなかったという。これに追い討ちをかけるように、2011年に韓国の憲法裁判所が、韓国政府が日本政府との間で問題を解決することができなかったのは違憲であるとの判決を下し、問題はこじれていったという。
このような状況から、2012年に当時の野田首相と李大統領が従軍慰安婦問題を解決しようと試み、当時外務次官であった佐々江氏による「佐々江提案」と呼ばれる大枠が設けられた。同提案は野田首相の謝罪、韓国の日本大使が首相の代理として元慰安婦にその謝罪を伝える、日本政府拠出による人道支援のプログラムの設立という3つの柱から成り立っていた。
2012年3月には韓国側はこの提案を拒絶していたが、同年10月には二か国間での協議が始まったという。そんな中、「ねじれ国会」などの国内事情により野田内閣の支持が低迷し、衆議院が解散・総選挙となり、自民党が勝利し第二次安倍内閣が発足し、この計画が頓挫したのだという。当時内閣官房副長官を務めていた斎藤氏は当時を振り返り「あと少し時間があれば合意に達することができていただろう。李元大統領も当時あのまま話が進んでいれば、2012年に開催されたASEANで両国は従軍慰安婦問題について合意に達することができていたはずと振り返っているという。
現在の安倍政権になってからは、安倍首相は「強制連行の証拠はない」など、韓国政府の感情を逆撫でするような発言をし、現在まで両国間でこの問題が前向きに話し合われることはなかったという。
こじれにこじれた問題の解決がなされる日が来るのであろうか。問題を解決したいという意思と、双方の譲歩が不可欠だろう。
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北朝鮮、外貨獲得のため国民を海外で強制労働(2015/10/30)
国連の調査官による、北朝鮮の人権侵害が報告されている。これによると、北朝鮮は外貨獲得のために自国民を外国で、強制労働に近い形で働かせているという。外国での「強制労働」とはどのようなものか、北朝鮮の人権問題の実情はどうなっているのか、各メディアは以下のように伝えている。
10月28日付
『CBSニュース』は、国連の報告書によると、おびただしい数の北朝鮮の国民が、国外へほぼ強制労働に等しい条件で働きに出されているとみられることを伝えている。これは国連による制裁を受けずに外貨を獲得する目的であり、ある試算によれば、北朝鮮が獲得する外貨は年間12億ドルから23億ドル(約1453億円から2784億円)にものぼるという。
国連の北朝鮮人権問題特別報告者であるマルズキ・ダルスマン氏によれば、労働者らはひと月に平均して120ドルから150ドル(約1万5000円から1万8000円)ほどのの報酬で、十分な食事も与えられず、時には一日に20時間も働くことがあるという。...
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10月28日付
『CBSニュース』は、国連の報告書によると、おびただしい数の北朝鮮の国民が、国外へほぼ強制労働に等しい条件で働きに出されているとみられることを伝えている。これは国連による制裁を受けずに外貨を獲得する目的であり、ある試算によれば、北朝鮮が獲得する外貨は年間12億ドルから23億ドル(約1453億円から2784億円)にものぼるという。
国連の北朝鮮人権問題特別報告者であるマルズキ・ダルスマン氏によれば、労働者らはひと月に平均して120ドルから150ドル(約1万5000円から1万8000円)ほどのの報酬で、十分な食事も与えられず、時には一日に20時間も働くことがあるという。労働者の数は5万人以上にのぼり、大半は中国やロシアで、またそれ以外ではアジア、アフリカ、中東、ヨーロッパで働いているという。
10月28日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は北朝鮮は弾道ミサイルの発射や核実験の実施などの理由で2006年から国際的な経済制裁の対象となっており、「この実情は北朝鮮が経済的にひっ迫していることを示している」としている。
労働者らは国外で主に建設現場や炭鉱、製材業、繊維業で働かされており、常に本国の監視員の監督下に置かれている。もし規則を破ったり働きが悪ければ本国へ強制送還されるという。
ダルスマン氏は北朝鮮に対し、このような国民の扱いを止めるよう要求し、労働者を受け入れているとみられる企業には強制労働に加担することの無いよう注意を促したという。
同氏はまた、今回の報告書の中で北朝鮮にはびこる人権侵害についても触れているという。「北朝鮮国民は老若男女問わず、昔から、そして今も政府から日常的な人権侵害を受けており、恣意的勾留、裁判手続き無しの処刑、差別が行われている」。昨年公表された国連の調査委員会の報告によると、北朝鮮国内では国民に対する「虐待」が常態化しており、強姦、拷問、強制的な中絶、奴隷的拘束も行われており、その主な対象は宗教的少数派や、12万人にものぼるといわれているの収容中の政治犯だという。
ダルスマン氏と調査委員会は国連の安全保障理事会に、北朝鮮を国際刑事裁判所で説明責任を果たすよう訴えるべきだと促したという。しかしながら、安保理には北朝鮮の同盟国である中国が含まれているため実現は難しいだろうとしている。
10月29日付
『CNN』によれば、労働者から搾取した賃金は北朝鮮の軍事費、各開発費用、さらには高級官僚の報酬にあてられているとみられるという。また、北朝鮮の労働者を受け入れている国は事実を知りながらも見て見ぬふりをしているというダルスマン氏のコメントを載せている。「雇用する側の企業も人権侵害の疑いがあれば地域の当局に報告すべきであるし、当局側もそれに応えて調査を尽くす義務がある」。
今回の報告書によれば5万人とされている北朝鮮国外の労働者の数も、「CNN」が今年初めに独自に韓国政府に問い合わせたところ、実際は10万人ほどだとみられているという。
また、ダルスマン氏は北朝鮮側に何度も面会を申し入れているが、断られたり無視されたりしているのが現状であると伝えている。
10月29日付
『FOXニュース』によれば、ダルスマン氏は、北朝鮮が国連の定める「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(いわゆる自由規約、B規約とも呼ばれる)に違反しているとも主張しているという。もっとも北朝鮮はこの規約の締結国ではない。
同記事は国外で働く北朝鮮の国民の数は年々増えていると伝えている。また、その国についても詳しく伝えている。前出の中国、ロシア以外にはアルジェリア、アンゴラ、カンボジア、赤道ギニア、エチオピア、クウェート、リビア、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ナイジェリア、オマーン、ポーランド、カタール、アラブ首長国連邦が挙げられている。
そして市民団体の報告を引用し、労働者らは月に1日か2日しか休みが与えられず、雇い主側の企業は労働者に支払うよりも多額の金銭を北朝鮮政府に渡していると伝えている。
このような状況を改善するため、ダルスマン氏はジェノバとニューヨークで中国大使と接触し、北朝鮮がうまく国際社会と付き合っていくにはどうしたらいいか意見交換をしたという。このことにつき同氏は中国側から訪中を強く勧められたことに触れた上で、「中国も最近では北朝鮮とは緊張関係にあることがわかった」と述べたという。
今回出された報告書は北朝鮮国内の悪いニュースばかりが記されているわけではない。近年の国家の経済的困窮状態と天候不順により、北朝鮮国民は次第に政府に頼ることなく自活の道を模索し始めているという。「信頼できる情報筋によると、小規模の農業や不動産市場が国内で生まれつつあるという。携帯電話の所有率も次第に上がっているし、韓国から流行音楽や映像も流入している。それに伴い北朝鮮の中で大きな変化が起こっていると伝える国外の情報も流入している。国際社会は北朝鮮の暗い面だけを見るのではなく、国民自ら社会の流れを変えていこうとする潜在的な動きがあることにも目を向けてほしい」。
また、同氏は名前こそ挙げなかったものの、今年5月に労働法に繰り返し違反しているとして北朝鮮の労働者90人の解雇に踏み切ったカタールの建設会社を褒め称えている。そこでは北朝鮮の監視員が一日に12時間以上もの労働を強いていたという。この90人という数字はその会社の半数近い労働者であったという。
北朝鮮政府による自国民の人権侵害は著しい。国レベルでの対話が困難な現状では労働を受け入れる国、企業のコンプライアンスが求められている。
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